第12話 二学期になりました


 今日から二学期だ。学校の有る駅の改札で綾乃と待合せ。昨日まで毎日一緒だったので気分的に夏休みが抜けていない感じがする。


「明人おはよ」

「おはよ綾乃」


 休みの日、綾乃はほとんどコンタクトを付けて前髪をアップして顔の輪郭を綺麗に出していた。俺もその顔になれてしまい、何も意識しないままに歩いていると


「あれだろ、噂の子」

「滅茶可愛いじゃん。誰あの子」


「あの子よ、一学期の時、図書室で公開告白された子。確か高橋って名前の子だよ」

「へーっ、確かにね」

「分かるわー」


 これは不味いと思いながらも綾乃は素知らぬ顔でフンフンと鼻歌を歌っている。学校が見えて来た。注目度が上がる。男子からの視線が痛い。


「綾乃手離そうか?」

「何で?教室まで一緒」


 参った、綾乃の頭の中は夏休みのままだ。


下駄箱で履き替える以外手を繋いで教室まで行くと

「「「……………」」」


 凄い注目度だ。


綾乃が俺から手を離して自分の席に行くと

「おはよう高橋さん。決まっているね」

「おはようございます。何が決まっているのですか?」

「いやあ、その一学期より可愛さに拍車が掛かったというか」

「ふふっ、ありがとうございます」


これを機に他の女の子も綾乃の周りに集まりだした。



「おはよう明人。凄いな高橋さん」

「ああ、おはよ正則。心配だよ」


 授業の間の中休みも女の子達に囲まれている。大丈夫かな。でも笑顔もあるみたいだし。


 体育館での校長先生の有難いお話も終わると直ぐに授業が始まった。



昼休み綾乃は女の子が来る前に

「明人ご飯食べよ。今日は持ってこなかったから購買に行こうよ」

「そうだな」


「高橋さん、学食行かないの」

女子が聞いて来た。


「うん、昼休みは明人と二人で」


「まあ、ご馳走様。じゃあまた後でね」




 俺達は急ぎ購買に行きながら

「ごめんね明人」

「俺は良いけど。綾乃大丈夫か。あんなに人に囲まれて話すなんて無かったから」

「うん、明人や中島さん達と一緒に居るうちに少し慣れた。まだきついけど」

「そうか、あまり無理するなよ。駄目そうだったら直ぐに俺の方見ろよ。声掛けるから」

「うん明人ありがとう」



 昼食は教室で二人で食べた。中島達も同じ事をしている。



五限目はLHRだ。担任の赤城先生が入って来た。

「はい皆、朝は時間無かったから。今から席替え行うね。この箱の中に席位置が書いてあるカードが入っている。廊下側の一番前の人から引いて行って」


 綾乃は三番目だ。引いた後俺を見ている。順番が進み、今泉さんも正則も引いた様だ。俺は最後から三番目。ほとんど決まってしまっている。


俺の番になり引くと窓側前から三番目だ。



「はい、引き終わったね。直ぐに移動して」


 がたがたと移動する。綾乃はなんと俺の右斜め前だ。前後か隣が良かったけど、一学期から比べれば全然いい。

 正則は俺の右後ろ、今泉さんは中島の右隣りだ。


「ふふっ、良かった。明人近くになったね」

「うん、良かった」


「明人近くになったな」

「正則も右後ろだから。今泉さんは隣だな。良かったな」

「ああ」


 今泉さんも嬉しそうな顔をしている。


前に座っている女子が綾乃に声を掛けている。俺は無視の様だ。まあ俺も後ろの人に声掛けないけど。



「みんな動いたわね。では今日はこれで終わり。気を付けて帰ってね」



「明人図書室。鍵貰いに行こう」

「うん」


 俺達は図書室管理の担当先生から鍵を受け取ると図書室に向かった。


「今日は初日だから誰も来ないんじゃない」

「分からないけど。俺は学期の始めから来ていたよ。綾乃もそうだろ」

「そっか」

 可愛い笑顔で笑い返して来た。



 図書室にはいつもの五人位の常連さんがやって来た。俺達を入れると七人だ。夏休み中に貸出していた本が何冊か帰って来たので戻し処理と書棚への返却を行う。


 二人で行うので同時に出来る。男子が何人か来たが、本を読む振りをして綾乃を見ているのが分かる。可笑しな光景だ。でも一学期の様な事をする奴はいない様だ。


 予鈴が鳴ると徐々に人が帰り始めた。俺達も図書室管理PCのシャットダウンをする準備をしていると今になって

「済みません。これ借りたいのでお願いします」


ふと見ると結構なイケメンの男子が立っていた。綾乃がぽかんとしている。

「綾乃、PCまだ生きている」

「あっ、うん大丈夫」


 貸出手続きをして本を渡すとそいつは綾乃に向って

「ありがとうございます。高橋さん」

 そう言うと図書室を出て行った。


「綾乃知っている人?」

「知らない」

「そうか」


 もう図書室には誰も居なくなったのでPCのシャットダウンをして鍵を閉めた。



帰り道

「綾乃どうしたの。最後に来た人見た時知った様な雰囲気だったけど」

「ううん、本当に知らない人」

俺の顔を見て言ったので本当なんだろう。でもなんか胸騒ぎがする。気の所為かな。


―――――


おや、どうしたのかな綾乃ちゃん。


次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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