第11話 夏休みその二
俺は夏休みの宿題が終わった翌日、約束通り午前九時半少し前に綾乃の家に着いた。
ピンポーン。
ガチャ。
「明人おはよ。入って」
「おはよ綾乃」
家の中に入るとシンとしている。
「あれ、ご両親は?」
「お父さんは会社、お母さんはパート。私の部屋に行こう」
二階にある綾乃の部屋に入る。いつもながらドアを開けたとたんに女の子の匂いがする。入っていいのかなと自制される感じだ。
「明人入って」
「うん」
ローテーブルでなく、綾乃はベッドに腰掛けた。隣をポンポンと叩く。
俺が座るとススッと寄って来て、
「明人、夏休みの勉強ずっとしていて……。ねっいいでしょう」
唇を塞いで来た。俺も高校生だよ。嫌いじゃないけど。良いのかな?綾乃とてもこういう事好きなんだよな。まあいいか。
……………。
ふふっ、嬉しい。
ゆっくりと目を開けると綾乃が目を閉じている。机の上の置時計が十二時を指していた。横に寝ている綾乃を見ると、いつ見ても本当に綺麗だ。透き通るような白い肌をしている。
「綾乃、起きて」
「うーん?」
「今日買い物に行くんじゃなかったっけ?」
「うん、行くよ。でも午後からにしている」
「じゃあ、朝から呼んだのは?」
「えへへ」
俺の首に腕を回して来た。
もう午後一時半だ。お腹が空いて来た。
「なあ綾乃、お腹空いていないか?」
「そうだね。なんか作ろうか?」
「でも買い物遅くなる。〇ックでもいいんじゃないか」
「うん、そうしようか」
俺達はショッピングセンター(SC)の有る駅に来ると近くの〇ックに入った。綾乃はブルージーンズに白いTシャツとスニーカ。眼鏡をかけて前髪を降ろしている。
俺にとっては安心する格好だ。でも俺もブルージーンズに白いTシャツとスニーカなのでお揃いになっている。
「ふふふっ、明人ペアルックだね。明人は黒のスニーカ。私は白のスニーカだからバッチリだよ」
「そうか」
俺はお肉が二重に挟んである大きなハンバーグとコーラ、綾乃は魚のフライを挟んだハンバーガーにオレンジジュースだ。
ハンバーガーを食べながら
「綾乃今日の買い物って何?」
「うん、行ってから。明人に決めて欲しいんだ」
「俺が?女の子の洋服なんて分からないけど」
「行けば大丈夫だよ」
何が大丈夫なんだろうか?
昼食を終えてやって来たのはSC内にある………。
「なあ、ここって」
「入ろ」
「い、いやここは俺が入っちゃいけないだろ」
「誰がそんな事決めたの。一緒に選んでよ」
俺が綾乃に連れて来られたのは、水着売り場。ほとんどが女性用だ。とてもじゃないが入る勇気が無い。
「さっ、明人」
腕を強引に引っ張られて中に入らされた。
「明人、これどう」
黒のビキニだ。試着が無理なので体に合わせている。彼女の体は知っているので遂想像してしまった。
「いや、それは流石に」
「じゃあこれは」
ピンクのセパレートだ。
「良いけど。色が」
「もう、じゃあこれ」
なんだかんだで十五分位迷って結局選んだのは水色の胸にフリルの付いたセパレートだ。綾乃の胸は可愛いので合っているかもしれない。
「良かった選べて。明人は買わなくていいの?」
「男はあまり変わらないから」
「そうなんだ」
綾乃は水着を選べて満足したのか、何に満足したのか
「明人、今日は帰ろうか」
「うんいいよ」
確かにもう午後四時半だ。送って行ったら午後五時を過ぎる。でも珍しいなと思いながら家まで送って行った。
その夜、正則から例のグループチャットに連絡が有った。
『プールに行く日だが、八月四日でどうだ』
特に予定も入っていない俺は直ぐに
『俺は良いけど』
と返信すると綾乃から
『私も良いです』
と返信が有った。
『じゃあ、決まり。学校のある駅で待ち合せて一緒に行くか。八時半でどうだ』
『今泉さんは?』
『もう了解取ってある』
どういう事?今度聞くか。
『私は良いですよ。明人迎えに来てね♡』
『正則了解』
『綾乃了解』
なんと、俺は七時半には家を出ないといけない。参ったな。
プール当日天気は快晴だ。綾乃の家まで行くと眼鏡をかけ前髪を降ろした俺の好きな綾乃が待っていた。淡いピンクのTシャツと黒のスカート、オレンジのかかと付サンダルだ。手には大きめのバッグを持っている。
「おはよ綾乃」
「おはよ明人。お母さん行って来ます」
「行ってらっしゃい綾乃。明人君綾乃を宜しく」
「はい任せて下さい」
お母さんが柔らかな顔で俺達を送り出してくれた。綾乃のご両親は何処まで俺達の事知っているんだろう。ちょっと心配だ。
綾乃と一緒に学校のある駅まで行くともう正則と今泉さんは来ていた。
「正則おはよ。待ったか?」
「いや俺達も今来たばかりだ。行くか」
「そうだな」
プールのある遊園地は前に綾乃と来たことのある場所だ。一時間位で着いた。早速チケットを買うと
「じゃあ、後でね」
綾乃と今泉さんが更衣室に消えると
「正則俺達も行くか」
「ああ」
男の着替えは直ぐに終わる。更衣室のプール側の出口で待つこと二十分。女の子の支度は長い。
「明人」
「正則」
二人が出て来た。綾乃はこの前購入した水着、今泉さんは赤色の水着だ胸にフリルが付いている。彼女もあまり胸が大きくないのでなんか似た水着だ。但し今泉さんの方がお尻が少し大きい。
綾乃は前髪をアップにして眼鏡を掛けている。とても可愛い。今泉さんはショートなのでそのままだ。二人共ラッシュガードは手に持っている。
「明人どうかな」
「とっても似合っているよ」
「えへへ、良かった。二人で買いに行った甲斐が有ったね」
「えっ、明人。高橋さんの水着一緒に買いに行ったの?」
「ま、まあな」
「そうか。俺もだ」
嬉しそうな顔をしている。
「あそこが空いている」
プールの端の方に四人掛けテーブルが有った。売店から少し遠いがプールからは近い。
「そう言えば、綾乃泳げるんだっけ?」
首を横に振るだけだ。
「じゃあ、ちょっと待ってろ。浮輪借りて来るから」
「あっ、水森君私も」
「了解」
正則が一緒に居るからナンパは大丈夫と思って早速借りて来た。ここは波のあるプールや流れるプール、それにウォータースライダーが有る。早速
「綾乃、あれ行く」
俺はウォータースライダーを指さすとまた首を横に振った。そっか遊園地の富士山ジェットも駄目だったからな。でも大きさ違うけど。
取敢えず俺達は流れるプールで
プカプカ。
プカプカ。
「なあ明人。ここプールだよな。なんで俺達水に浸かっているだけなんだ」
「さあ?」
そう、女の子二人は浮輪にお尻を入れてプカプカと浮いたり手足をばちゃばちゃしているが、俺と正則はその横で腰まで水に浸かっているだけだ。
その内、プカプカが飽きたのか
「明人やっぱりあれやろう」
指差したのはウォータースライダー。
「良いけど?」
「ちょっと待って」
綾乃が眼鏡をテーブルの所に置いた。
「…………」
前髪をアップにして横の髪を耳の後ろにして眼鏡を掛けないでいる。不味い。
チラリと周りを見ると男達の視線を浴びている。
「明人、良く見えないから手を引いて」
そこまで見えなくないだろう。
「良いよ」
でもこちらの方が安全だ。
結局四人でチャレンジ。俺達の順番だ。係員の人が
「彼氏さんが前で彼女さんが後ろから手を彼氏さんのお腹に持って行ってしっかりと掴んで下さい」
「えっ!」
「ふふっ、明人行くわよ」
「うぉ!」
綾乃に押される様に滑り出した。綾乃の可愛い胸が思い切り俺の背中にくっ付いている。左に右にグルグル回る度に擦られる様だ。
ザブーン。
「ぷあー。楽しかった。もう一度やろ」
続いて正則達が滑って来た。
「ああ良いけど」
なんか気に入ってしまったようだ。結局俺達は三度程ウォータースライダーをやってテーブルに戻った。
綾乃は眼鏡を掛けてない上に髪の毛を思い切り後ろにしているので顔の綺麗なラインや大きな目がはっきりと見えている。
「少し腹が減ったな。明人何買って来るか?」
「いや俺も行くよ」
「明人お前と高橋さんはここで留守番。俺と薫が行って来る。意味分かるだろう」
確かに男達が、思い切り綾乃と今泉さんを見ている。
「分かった。頼む」
正則と今泉さんに買って来て貰った昼食を取って午後三時位まで思い切り遊んだ後、電車に乗って帰った。
綾乃は俺に、今泉さんは正則に寄りかかって気持ちよく寝ている。
「正則、この後夏休みはどうするんだ?」
「俺か?俺はお盆に親の実家に行ってその後は薫と一緒かな。明人は?」
「俺は、親が地元だから何もしない。綾乃とは会うだろうけど」
「そうか。じゃあ今度会うのは二学期だな」
「そうだな」
その後、夏休みは綾乃とほぼ毎日会っていた。あれも三日に一回位と体力使ったけど
―――――
明人ご苦労様でした。
次回から二学期です。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます