第10話 夏休みその一
夏休みが始まった。早速四人で宿題をやる予定だ。集合場所は俺の家が有る駅の改札を出た所。午前九時半を集合にしてある。
「おはよう明人」
「綾乃おはよ」
何故か今日は眼鏡だ。
「今日は眼鏡なのか?」
「うん、こちらのが何かと楽だし、コンタクトって結構目が疲れるんだ」
「そうか。眼鏡も良いよ」
俺もこっちのが安心だ。
「ふふっ、ありがと。ところで二人は?」
「まだ来ていない。十分前だからかな」
正則と今泉さんは待ち合わせ時間五分遅れでやって来た。
「悪い明人、遅れた」
「どうしたんだ?」
「ちょっと途中トラブってな」
「トラブって?」
「待合せ場所で薫がナンパされそうになって、そいつらを片付けてたら時間が過ぎちまった」
「今泉さん大丈夫?」
「私は全然、それより正則が」
「なに、顔に一発食らっただけだ。相手が二人だったんでな。明日から薫の所は直接迎えに行くから遅れない様にするよ」
「それならいいんだが」
俺は他人ごとではなく思えて来た。チラッと綾乃を見ると我関せずという顔をしている。もう少し自覚を持って欲しいのだけど。
「母さん、ただいま。皆着たよ」
母さんが玄関に出て来た。
「あらいらっしゃい。中島君久しぶりね」
「おばさん久しぶりです。今日はお邪魔します」
「良いのよ。さっ、みんな上がって。リビングは片付けてあるから勉強出来る様にしてあるは」
「「「済みません」」」
それから二時間、十二時半まで夏休みの宿題をやった。俺と綾乃はさらさらと出された宿題を片付けたが二人が引っ掛かっては、聞いて来たので思ったより時間が掛かっている。
「ふう、もう十二時半か。お昼母さんが用意するって言ってたけど、ちょっと見て来る」
「あっ、明人。私も」
「高橋さん、なんか水森君の家慣れている感じだね」
「そうだな、結構来ているんじゃないか」
「そうか、あの二人付き合い始めてまだ一年位だよね。その割には進んでいる感じ」
「まあ、その辺は人それぞれだからな。俺達はちょっとゆっくりだったけど」
「ふふっ、そうだね。」
「お待たせ」
俺と綾乃でトレイに四人分の昼食を持って来た。焼き豚チャーハンと酸辣湯スープそれにサラダだ。結構凝っている。
「明人悪いな。明日からコンビニで買って来るか」
「いいよ。母さん喜んでいるし」
「水森君ありがとう」
「さっ食べようか」
三十分位で食べ終わって、少し休憩した後また始めたが
スースース―。
正則が寝ている。腹が一杯になったせいだろうか。今泉さんがシャーペンで頭を小突き始めた。中々起きない。
「こら正則起きろ」
とうとう声を掛けた。
「ふふふっ、寝かせてあげれば」
「高橋さん、こいつ調子に乗ると夕方まで寝そうだし。せっかく昼食まで頂いて勉強させて貰っているんだから」
とうとう、拳で頭を殴った。
「痛い!あっ、寝てた」
「正則、駄目じゃない。一人遅れているよ」
「済みません」
「ふふふっ」
「あはは」
二人のやり取りが可笑しくて笑ってしまった。その後は
カリカリカリ、カリカリカリ。
カリカリカリ、カリカリカリ。
「あっ、三時半だ。三十分休憩しよ」
「そだね」
好きな事をしていると何時間でも出来るが、勉強はそうはいかない。
結局午後五時解散となった。正則は今泉さんを俺は綾乃を家まで送って行くことにした。
「明人、二人も良いけど四人でやるのも楽しいね。中学まで友達もいなかったからこんな経験初めて。これも明人と付き合えたからだね」
「そうだな。良かったな」
「うん」
手を握っている方の腕をブンブン回しながら嬉しそうに歩いている綾乃を見ると本当に俺も嬉しい。
やがて綾乃の家の前に着くと
「上がって欲しいけど、明日も会えるしね」
「うん」
「じゃあこれだけ」
綾乃は周りをちょっと見るといきなり唇を合わせて来た。ちょっとだけだけど。
「ふふっ、じゃあまた明日」
「うん、ここの改札で待っている」
「明人、家まで来て貰っちゃ駄目かな?」
「えっ、良いけど」
「少しでも明人と一緒に居たいから」
「分かった」
「じゃあ明日」
それだけ言うと綾乃は家の中に入って行った。
俺も嬉しいけど。綾乃って…………。
この後四日間俺の家でやり、残りの五日間を正則の家でやった。おかげで夏休みの宿題は自由研究を除いてほとんどが終わった。
「やったあ、これで遊べるぜ」
「正則、クラブは?」
「もちろん出るよ。薫も」
「そうか、プールはどうするんだ?」
「部活って言っても夏休み中やる訳じゃないから。全国選抜でも掛かっているならまだしも。俺達の高校は進学校だからな。その辺は緩いんだ」
「なるほど」
「明人、提案だがこの四人でグループチャット作らないか。何か遊ぶ時別々に連絡入れるの面倒だから」
「綾乃はいい?」
「私はそういうの嬉しい」
「じゃあ、決まりだな。プール行く日はまたみんなで決めようぜ」
「ああ良いよ」
「「私も」」
夏休みの宿題が終わった後、俺と綾乃は正則の家を出たが、今泉さんはそのまま残った。まあ色々あるんだろう。
駅まで歩きながら
「ねえ明人。明日ちょっと買い物一緒に行ってくれる?」
「良いけど」
「じゃあ、私の家に九時半で良いかな」
「いいけど」
「じゃあそう言う事で」
俺はそのまま綾乃を家まで送って行ったけど、何で最寄りの駅じゃないんだろう?と素朴な疑問が浮かんだが、なんとなくそうだろうと思って取敢えず家に帰る事にした。
―――――
綾乃、明人を押しまくりです。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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