第5話 あっという間に三学期


 秋の進路決めで俺と綾乃は、姉ちゃんと同じ県下有数の進学校長尾高校に行く事に決めた。先生も今の学力を維持すれば問題ないと言ってくれている。


 二学期末試験でも綾乃二位、俺が八位になった。


「明人伸びたね。もうすぐ抜かれそう」

「おいおい、綾乃抜いたら一位しかないじゃないか。それは無い」

「明人は地頭いいからもっと伸びるよ」


俺達は今日も放課後図書室にいる。その日の復習をここで終わらせる事にしている。綾乃と合わなかったら、とてもしていなかっただろう。おかげで俺の成績も随分伸びた、


下校の予鈴が鳴った。図書室の常連達も帰り始めている。

「俺達も帰るか」

「うん」


 校門を出ると手を繋ぐ。いつの間にかこうなっている。


「明人、冬休みどうしようか」

「初詣かな。綾乃と一緒。お前のお陰で塾も行かなくて済むし」

「ふふっ、良かったね。ねえ、最近してないね」

「そうだな」


 綾乃とは初めての後、一ヶ月位間が有ったが、その後は二週間に一度くらいしている。

 最近は学期末試験とか有って三週間していない。俺も嫌いじゃないけど綾乃はあれには積極的だ。でもまだ中学生なんだけど。


「じゃあ、今度会ったらいいかな」

下を向いて顔を少し赤くして言っている。


「うんいいよ」



 初詣は二人で行った。俺の家の近くの神社だ。地元の神社だけど元旦は境内まで何十人も並んでいる。

 綾乃は着物ではなく洋服だ。しっかりと着込んでコートと手袋をしている。俺も似たようなものだ。


 参拝が終わると

「明人何お願いしたの?」

「うーん。こういうのは人に言うと成就しないというから言わない」

「そっか。私は言ってもいいよ」

「何てお祈りしたの」

「ふふっ、明人とずっと一緒にいれます様にって」

「そ、そっか。俺もそうだよ」

「言ったじゃない」

「あっ」

「でも嬉しい。ねえおみくじしよ」

「うん」


二人共小吉だった。

「これからまだ伸びしろが有るという事で」

「そうだね」


本当は大吉が良かったんだけど。


 その後、俺の家に寄って二人で温まった後、綾乃を家まで送って行った。もう俺の家族は綾乃が家にいる事が当たり前の様になっている。

 綾乃の家ではそこまでではないけど、一応綾乃の彼だという事は認識して貰っている様だ。




 そんな事している内に三学期が来て高校受験も終わってしまった。

結果は、俺、綾乃、中島、今泉の四人は無事に長尾高校に合格した。


姉ちゃんが

「明人、四月から高校ね。私は三年生だけど、何かあったら相談しなさい。一応生徒会副会長だから」

「えっ、姉ちゃん、生徒会の副会長なの?」

「そうよ」

 俺には縁の無い世界だ。まさか自分の姉がそんな世界にいるとは。


「間違っても姉ちゃんの世話にはならないよ」

「そうだと良いんだけどね。そう言えば綾乃ちゃんや中島君達も一緒なんだって?」

「うん、おかげで入った後も楽だよ。知っている人がいるといないじゃ随分違うからね」

「そうね」




そんな話をしている内にバレンタインデーも過ぎ、卒業式になった。

いつもの様に学校のある駅の改札で待っていると

「えっ!」

 綾乃が前髪を上げて来た。


「おはよ明人」

「おはよ綾乃。今日は前髪あげているんだ」

「うん、みんなに会うの今日が最後だし、だからちょっとアピール」

「えっアピールって?」

「明人の彼女ですって」


「いやもうみんな十分分かっていると思うけど」

「いいの」

 何がいいんだろうか。人には綾乃のこの顔は見せたくない。


 登校の途中から目立ち始めた。

「あれ、あんな子うちの学校にいたっけ?」

「あれ三年生だよね」


教室に入ると


「おはよ中島」

「…………」

 なんか他の人も固まっている。


「高橋さんだよね?」

「はい、明人の彼女の高橋綾乃です」


「「「えーっ」」」

「なあ、高橋さんって!」

「俺も初めて」

「まさか、あんなに可愛いなんて」

「水森に騙された」


 いや俺は騙していない。


 他の女子が寄って来た。

「ねえ、高橋さん。どうしたの?」

「前髪アップしただけです」

「えっ、それだけ」

「はい」


「あの、眼鏡取って貰っても良いかな」

「いいですよ」

 綾乃が眼鏡を外した。


「「「……………」」」


「俺死んだ」

「俺も」

「何故気が付かなかったんだ」

「うーっ、ショック」


「綾乃その辺にしとけ」

「分かったわ明人」


「はあ、なるほどね。水森君は知っていたの?」

「まあな」


「中島どした?」

「いや俺もちょっと驚いた。全く別人に見えたから」

「こら正則、浮気するなよ」

「薫、する訳ないだろ」


「でも高橋さんがこんなに変わるとは私も驚いたわ。なんで隠していたの?」

「別に隠していた訳ではないです」

「そっか、高橋さんは水森君オンリーか。まあいいわ」


 教室の喧騒が収まらない内に体育館で卒業式が始まった。今日は俺の母さんや綾乃のお母さんも来ている。


 綾乃が最優秀成績賞を貰っている。流石だ。


一通り終わり教室に戻ると

「明人、今日は?」

「うん、図書室無いから真直ぐ帰る」


「おい、水森帰るの?」

「ああそうするよ」


「高橋さんも一緒?」

「うん、明人と一緒」

「はあ、ご馳走様」


こうして中学三年間が過ぎた。


―――――


次回からいよいよ高校編です。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る