第3話 二学期です


 俺達は、お盆を挟んで、また会っていた。


「明人、もうすぐ学校だね」

「うん」

「ねえ、学校始まったらどうする?」

「どうするって?」

「だから私達の事。どうしても明人の側にいる様になる。自然とバレるし」

「うーん、まあ自然とゆっくりでいいんじゃないか」


「そうかあ、そうだよね。無理して言う事でもないし。でも変に我慢も嫌だよ。朝は駅から学校まで、帰りは学校から駅まで一緒に居たい」

「帰りは図書室にいて最後の方に帰るから良いけど。朝は思い切り目立つから」

「……。そうだね。いきなりは駄目だよね」

 本当は一緒に居たい。何か良い考え無いかな。



「ところで、自由研究終わった?」

「何をいきなり。明人終わってないの?」

「まだなんだ」

「えーっ、後三日だよ」

「綾乃、だから協力して」

「もう明人ったら」


それから俺は綾乃の自由研究を写して少し変えて出すことにした。綾乃は薔薇の蕾から開花までを観察したシンプルなものだけどとても丁寧に記録している。流石だ。


 観察日付や、薔薇の花の色や特徴をWEBでググりながら少しずつ変えて作った。

これならいいだろう。




そして二学期が始まった。

「明人おはよ。夏休み何してた?」

 俺の友人中島正則(なかじままさのり)だ。俺より背が高い。もう百八十センチ位ありそうだ。

「おはよ正則。まあ適当にな」

「お前の事だから何処にもいかないで家でゲームでもしてんじゃないか?」

「そんな事ない。それより正則は?」

「俺は当然薫と一緒だよ。プールも一緒に行ったんだぜ」

薫とは今泉薫(いまいずみかおる)正則の彼女だ。噂をすれば今泉がやって来た。


「こら正則、誤解を受ける事言わないの。あなたのお兄さんが一緒でしょ。保護観察付じゃない」

「薫か。罪人みたいに言うな。良いじゃないかおかげで兄貴に色々ご馳走して貰ったし」

「まあね。明人はどうしてたの?」


「俺の家は両親が地元だから。何も無かったよ」

「毎年同じだね。来年は高校だから彼女作れるといいね」

「そんな先の話分からねえよ」

チラッと綾乃を見ると本を読むふりしてこちらを見ているのが分かる。


担任の先生が入って来た。


恒例の席替えが終わると

「ふふふっ、隣になっちゃったね。宜しくね。あ・き・と」

「っ!」



前の席に座っている女の子がいきなり振向いて俺達の顔を交互に見た。

「今、高橋さん水森君の事名前呼びしなかった?」

「そうか。俺は聞こえなかったが」

「えーっ、でもそう聞こえたけどな。高橋さん水森君の事名前呼びしたよね?」

「えっ、私言っていないけど」

「そっ、そう。おかしいな」

 

前を向き直した。俺は横目で綾乃を見るとペロッと舌を出している。こいつめ。ワザとだな。帰りに言わないと。



 放課後、図書室も出た後で

「綾乃どういうつもり?」

「何の事?」


「朝の件」

「ああ、あれね。ちょっと休みの感覚がまだ有ったのかな。えへへっ」

絶対わざとだ。


「明人、でもいいでしょ。私みんなの前で明人と仲良くしたい」

「もう少し待とうよ」

「どの位?」

「どの位と言われても」



その後もバレそうになったが、何とか綾乃を止めた。こいつ見かけによらず積極的だよね。一学期の時は毎日机で本を読んでいたのに。



それから二学期の中間試験も一週間と迫った。また図書室で一緒に勉強だけのつもりだったのだけど


「ねえ明人、明日の土曜日私の家で勉強しない。学校からそのまま来ればいいよ」

「でも悪いよ」

「ううん、私が来て欲しいの」

「……それなら行くよ」




彼女の家には玄関まで何度か彼女を送って行っている。その時、お母さんらしき人とも会ったからあまり違和感はない。


「上がって、今日は誰もいないから」

「えっ!」

「さっ、早く」



 二階に連れて行かれた。


「ここが私の部屋。少し狭いけど」

 俺の部屋より全然広い。

「そこに座って」

 目の前に小さなローテーブルが有る。仕方なくベッドを背にして座ると

「ちょっと待っててね」



少し待つと

「はい、炭酸オレンジで良いかな」

「全然いいよ。じゃあ勉強始めようか」

「うん」


そう言うと俺の横に座った。じっと俺の顔を見ている。

「ねえ、明人良く考えて。女の子が家に家族がいない時に男の子を呼んだんだよ。だから」


 いきなりキスをして来た。ちょっとこんな事。えっ、右手を胸に持って行かれた。柔らかい。唇を離すと

「しよ」

「でも始めてだし」

「私も、だからね」


 残念ですが俺も男の子です。



……………………。


「痛っ」

「ごめん」

「いい続けて」


 初めてって結構痛いんだ。あっ、でも…………。




「しちゃったね」

「うん」

「ねえ、付けなかったけど」

「ふふっ、今日は大丈夫な日だから誘ったの」

「そうか」


眼鏡を掛けないで前髪が後ろに行っている。めちゃくちゃ可愛い。胸は比較した事ないけど手の中にすっぽりと入る位。でもとても綺麗な体。


「ねえ、もう学校で明人って呼ばせて」

「いいけど」


 もう一度してしまった。


……………………。


 さっきより違う。なにこれ…………。



明人が横で寝ている。特徴ないけど綺麗な顔。結構好みかも。ちらりと時計を見ると午後四時近い。


「明人起きて」

「うん?」

「着替えて出かけよ。もうすぐお母さんが帰って来る」

「えっ!」


 俺達はサッと着替え…られなかった。俺は彼女のベッドの中でタオルケットに包まれて目を閉じている。

「もう良いよ」


俺も急いで着替えた。綾乃は部屋の中だ。良く分からん。

「ちょっと待って」


体に抱き着いてキスをして来た。

「明日はきちんと勉強しよう」

「うん」


 俺達は急いで綾乃の家を出たが、彼女はちょっと歩きずらそうだ。

「大丈夫か」

「うん、ゆっくり歩けば」

「分かった」


 結局近くの公園で三十分位休んだ。だいぶ暗くなって来たので

「帰ろうか。送って行くよ」

「近いし今日はいい。明人帰れる」

「大丈夫だよ。駅まで大体分かる。明日どうしようか?」

「そうだね。会いたいけど」

「じゃあ、明日は俺の家に来る?きちんと勉強しよ」

「良いの?」

「ああ、でも日曜で家族いるけど良いかな?」

「いいの?」

「うん、紹介するよ」


 俺達はまた簡単にキスをすると公園の出口で別れた。



―――――


 へーっ。仲が良い事。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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