第2話 初めてのデート


 俺は、図書館での夏休みの宿題が終わった日の夜、スマホで高橋さんに連絡した。


「水森です」

「高橋です」

「今日の喫茶店の時の話なんですけど、二日に映画とかどうですか?」

「映画ですか。いいですよ」

「じゃあ、図書館のある駅の改札に十時でいいですか?」

「はい」




 俺は、待合せ場所に行くと高橋さんはもう来ていた。まだ十五分前だ。

彼女は、ブルーのカラーデニムのスカートにオレンジの文字の入った白のTシャツ、少しヒールの有るオレンジのサンダルで手に白いバッグを持っている。

 俺は、紺のコットンパンツと薄水色のTシャツそれと黒のスニーカーだ。


「おはよ、高橋さん。早いね」

「うん、近いし。でも今来た所」

「そうか、じゃあ行こうか」


 図書館のある改札と反対側に出て五分程歩くと映画館が有る。


「何見ようか?」

「あれなんかどう?」

彼女が指差したのは、若手俳優と女優の今流行りの恋愛映画だ。


「いいよ。チケット買おう」

 席はまあまあ埋まっていた。


「何か飲む?」

「ううん、いいよ」


 映画は予想通りの内容だった。彼女もあまり満足して無さそう。

「水森君、どうだった?」

「うーん、面白かったけど。ちょっとね」

「そっかあ、私も同じ感想」


「ねえ、昼食食べた後、公園でも散歩しない?」

「う、うん。いいよ」

「あまり気が進まないの?」

「いや、高橋さんが、そう言ってくれるのが嬉しくて」

「そっ、そうかな。せっかく会えたんだしと思って」

「そっ、そうだね」


 俺達は〇ックに入ったと近くの公園に来ていた。結構広い公園だ。

「天気いいね」

「ふふっ、おじさんみたい」

「そ、そうか」


その時、夏風がサラッと吹いた。彼女の前髪がサッと上に上がって

「…………」

注目してしまった。


「あっ、ごめん」

「ううん、いいよ。いきなりじっと見られたから」

「…高橋さん、とっても可愛い」

「えっ!」

彼女が顔を赤くして下を向いてしまった。


「初めてです。そんな事言われるの」

「本当?とっても可愛いです。今日高橋さんと一緒にこうして居られるのが嬉しいです」

「うん、ありがとう」

彼女が下を向いたままだ。


「あの高橋さん、もし出来ればだけど…………。前髪あげて眼鏡外してくれる」

「良いけど」

彼女は顔を上げて左手で前髪を上げると眼鏡を外した。


「うっ!…………滅茶無茶可愛いです」

 思い切り胸がドキドキしている。


「そんなに見つめないで!」

また下を向いてしまった。


「あの、また会いたい」


彼女が顔を上げると笑顔になって少し赤い顔して

「うん、いいよ」



 次の日も会った。その次の日も会った。その時、

「水森君。明日、遊園地に行かない?」

「良いけど」

「じゃあ、明日、私の家のある駅に七時でどうかな?」

「いいよ」


 まさか、こんなに高橋さんと毎日会えるとは思っていなかった。会う度に彼女の事が好きになって行く。どうしよう。


変な素振りで嫌われたくないし。とにかく普通でいよう。彼女が俺を好きになる事なんて一ミリもないから。



 次の朝、言われた駅の改札の中で約束の時間の十五分前に来るともう彼女は来ていた。

えっ、髪の毛を上げている。眼鏡は掛けているけどめちゃ可愛い。


 今日はグレイのデニムスカートに黒のノースリーブシャツとスニーカ。白のバッグを持っている。

 俺は、紺のコットンパンツと白のTシャツ。それに黒のスニーカだ。


「おはよう水森君」

「おはよう高橋さん。今日も早いね」

「うん、近いし。それより洋服が似ているね。ペアルックとまではいかないけど」

「そ、そだね」

 まさか、シャツとスニーカが一緒でペアなんて。でもそうかな?


「行こうか」

俺達は彼女の家の駅から一時間近く掛けて有名なジェットコースターのある遊園地についた。

「どれから乗ろうか?」

「いきなりだけどあれ行く?」

「えっ!いいの。俺は良いけど」


彼女が指差したのは有名な富士山ジェットというコースターだ。結構恐そう。

乗る時彼女が眼鏡をバッグに入れた。

「見えるの?」

「大丈夫。それより眼鏡が落ちたら困るから」

 ジェットコースターよりこっちの方が心臓に悪い。可愛い過ぎる。



ガタン、ガタン、ガタン。

段々上がって行く。


「み、水森君。大丈夫?」

「あ、俺は別に」

 ちょっと怖い。


頂点を過ぎると

「きゃーーーーーーっ」


また頂点を過ぎると

「きゃーーーーーーっ」


 長かった。流石に俺は声を出さなかったが。


「み、水森君。ちょっ、ちょっと休もう」

「そうしようか」


 二人で花壇の側に有るベンチに座った。

「ちょっときつかったね」

「そうね。思ったよりきつかった。いきなりあれは無しだったね」

「まあ、でも乗れたんだし」


その後は、テラーオブ武家屋敷やメリーゴーランドにも乗った。


 もう午後四時を過ぎていた。

「最後はあれ乗ろうか」

「うん」

定番の観覧車だ。


「綺麗。とても」

お互いが向い合せで座っている。段々頂点に近付くと


「ねえ、水森君」

「なに?」

「私の事どう思っている。ここの所毎日会ってくれているし」

 真剣に俺の顔を見ている。


「う、うん。とても仲のいい友達と思っている」

「友達?これだけ毎日会っているんだよ」

「…………」



俺は彼女の椅子の方へ行くと

「友達よりもう少し上」

「上って?」


嫌われたら、でもこの雰囲気高橋さんだって。

「す、好きかな」

「ふふっ、私も」


思い切り彼女が抱き着いて来た。

「もっかい言って」

「えっ、なんだっけ?」

「言ってくれたら」

 彼女が目を瞑った。どうしよう。絶対間違い無いよな。


「好き」

彼女が一度目を開けると俺の唇を塞いで来た。こんなに積極的なのこの子?


「高橋さん、もうすぐ着く」

「あっ」


係員がドアを開けると二人して顔を下に向けて降りた。



彼女を家まで送って行った。ちょっと普通より大きな家だ。別れ際に

「水森君、今日から明人って呼んでいい?私の事は綾乃って呼んで。練習」

「明人」

「あ、綾乃さん」

「もう一回。さん無し」

「綾乃」

「ふふっ、じゃあまたね。あっ、家に着いたら連絡して」

いきなり頬にキスされた。


―――――


夏休みはやはり進みが早いです。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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