第39話 ラムル村用の屋敷です。
「ケイン様、指示された通り、取り壊し前の屋敷を見つけました!
内部の家具、食器など全て付いています。
そして馬車付きです」
馬車で屋敷に来たルンデルがケインに報告する。。
「そうなんですか?」
「ええ、ケイン様もご存じなリンメル公爵邸です。
その、別邸なのですが、贅を尽くされた内容になっています。
馬車も使われておりませんので、一緒に購入しておきました」
(ここでもリンメル侯爵か……。
馬車があるのは助かる。
紋章の変更を頼まないといけないな。)
そんなことをケインは考える。
そして、
「馬車込みなのは助かりますね。
それで、お金のほうは……」
「それは問題ありません。
リンメル公爵の別邸は厳が悪いと取り壊し予定でしたから格安です。
馬車はまあ結構しましたが、ケイン様の取り分で十分賄えました。
知らないでしょうが、あなたが溜めている金額は相当な物ですよ?
ほとんど使っていないですから」
(知らない間に大金持ちだったのか)
ケインは苦笑い。
「早速、確認に行きましょう」
ハイハイとケインを馬車に乗せるとルンデルは、
「馬車を出せ」
と、指示を出した。
ルンデルの馬車でリンメル公爵の別邸に向かうケイン。
(んー、デカいね)
壁が見え始めてから入り口の門までが五分。
その後、中に入って別邸までが三分、
どんだけ広いんだ!)
そこにあるのは、王国から貰った邸宅よりもデカい別邸。
(何に使うんだ?
見栄?)
「それで、指示を受けた通りに屋敷を探しましたが、この別邸をどうなさるのですか?」
ルンデルがケインに聞いた。
「ああ、こうしようかと……」
収納魔法を使い別邸を包むと、その場にあったはずの別邸が消えた。
「えっ?」
消えた屋敷を見て唖然とするルンデル。
「これをラムル村に移します」
当然のようにケインが言うと、
「あの、別邸は?」
理解できていないルンデル。
「さっきの屋敷は収納魔法で、別空間です」
ケインの説明にルンデルは
「マジ?」
と唖然としていた。
(まあ「マジ」と言うしかないんだけど……)
「ちなみに敷石や東屋とかは?」
「回収しても構わなかったはずです」
「じゃあ、貰っちゃおうか」
ケインはついでに回収する。
そのままルンデルの馬車でラムル村に向かう。
二時間ほど後、様々な魔物が闊歩するラムル村に到着した。
周りに森が広がる。
「えーっと、カルオミガの巣があるのがあの辺だから、こっちに屋敷を置きますか」
そんなふうに独り言を言いながら、地の魔法で木を抜き、念動力でその木を運んだ、
そのあと土地をならし屋敷用の土地を作る。
そしてその上に別次元からリンメル公爵の別邸を置いたあと、玄関の階段が丁度いい所まで別邸を地面に埋めて水平を取って、土を固め、その上に敷石を張り終わりである。
入り口までの道が出来た。
東屋は、庭を想定して、適当に置く。
こうして囲う壁はないが、ハイデマン男爵の屋敷ができるのだった。
何事かと領民が屋敷を囲んでいた。
「ケイン様、凄いですね」
とルンデルが唖然。
「ルンデル様、何事ですか?」
と村長が現れる。
「あっ、ケイン様。
お陰様でわが村に仕事ができて潤っています。
余った乳を子供に飲ませても良いと聞いておりますので、ほれ見てください、子供たちの元気なこと。
お陰様で栄養不足による餓死などはなくなりました」
感謝の言葉を聞き、
「そうですか、それは良かった」
ケインもニコリと笑って頷く。
「通知が来ていると思うが、ケイン・ハイデマン男爵がこの地を治めることになった」
ルンデルがタカシを紹介した。
「はい、存じております。
今後ともによろしくお願いします」
手もみでホクホクの村長である。
「それで、先ほどから起こったことは?」
本題を聞く村長。
「ケイン様がここを治めるための屋敷を持ってきたわけだ。
それも、先ほど王都内で屋敷を回収し、ここに移築した」
ルンデルの説明を聞き、
「我が領主様は規格外ですな」
村長が頷く。
「森だらけのこの土地、今後ここを治めるという事は前回のようなことがある訳ですな」
「そうだ村長。
ケイン様が村が潤うようなことを考えるかもしれない」
「それは楽しみにしておきましょう」
ルンデルと村長はニコニコと話をするのだった。
「ルンデルさん、あとの体裁はお願いします。
芝生と壁ぐらいだとは思いますが……」
「畏まりました。
職人に指示を出し、早速取り掛かりましょう」
「お願いします。
後、馬車の移動と馬の手配もよろしくお願いしますね。
「畏まりました。
早急に行いましょう」
「こちらの屋敷にもメイドと馬丁などの手配が要るのでしょうね」
「はい、その点でもこちらで何とかしておきます」
ルンデルが頷く。
「ケイン様はこちらで生活を?」
「卒業するまでは無理でしょう。
ですから、ここには父さんと母さんが住むことになります。
母さんは妊娠していますから、子育てをするなら騒がしい王都よりもこちらの方がいいかと。
できれば、育児ができるメイドが居るといいですね」
「はい、手配します。
レオナにも子供ができることもあるでしょう」
(そりゃ、婚約……その後の結婚を目指してはいるが少し気が早い。
まあ、母さんのためになるということで言わないでおこう)
「後、相談なのですが……アベイユの蜜、ホルスの乳やコッコーの卵、今後得られるかもしれないカルオミガの砂糖を集める拠点が必要になります。
ケイン様が許されるのであれば、ここに支店を作りたいのですが?」
揉み手でルンデルさんが俺に言った。
「こちらとしては助かりますね。
小麦など物納された農産物の取引き業務、村人からの農産物の買取の業務、などの委託、雑貨などの販売、やってもらいたいことはたくさんありますから喜んでお願いします。
出店してください」
ケインがルンデルに頼んだ。
「それでは、早速……。
ケイン様、支店のほうを探しておくので、今回のように移設してもらってもよろしいですか?」
「ええ、丁度良い物件があれば教えてください、今回のように移設しましょう」
こうして、村にルンデル商会の支店兼雑貨屋ができることになった。
次の学校が休みの日、
(何も無い村に店ができる。
んー、ある意味発展だね)
出来上がったルンデル商会ラムル村支店を見ながらケインは頷いていた。
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