第23話 (閑話)わが村2
え~と再び私、村人です
前回はコッコーとホルスの件でしたが、今回はアベイユです。
コッコーとホルスを飼い始めて数カ月したころ、皆が集められ会頭が現れました。
「アベイユを飼います。
これはルンデル商会の商品になります。
こちらから攻撃しない限り、アベイユは我々を襲ってきません。
ケイン様がアベイユを連れてきますので、それを見ていればわかると思います。
くれぐれも、アベイユには手を出さないように!
言いましたよ!」
会頭が念を押して言っています。
(「ケイン様」とは会頭が懇意にしている少年。
一時、この森の周辺にも現れていたオークの集団をケイン様とあの女性……カミラ様で殲滅したそうな。
あの若さで凄いです)
しばらくすると、木箱が作られ始めました。
そこにアベイユが入るということ……。
ケイン様がアベイユの群れに包まれ村に現れました。
なぜか話をしています。
(えっ、アベイユって話しできるの?)
他の村人はそれを遠目に見るが、アベイユは襲ってはきませんでした。
そして、木箱の前に行くと、群れはその木箱に入っていきます。
計十二個の箱にアベイユの群れが入って行くのでした。
村長から、
「あのアベイユの巣に、このコップを入れて欲しいと会頭から依頼があった。
ケイン様が依頼してある。
アベイユたちは襲ってこないそうだ。
やりたい者は居るか?」
との言葉が……。
しかし、誰も手を上げない。
(話ができるのなら……)
私が手を上げると、
「おぉ」
と周囲から声が上がりました。
何か勇者の気分。
私は村長からコップを受け取ると、アベイユの巣に向かいます。
すると、
「蜜回収の方ですか?
ご苦労様です」
とアベイユが敬礼をしてきました。
(へ?
本当に意思疎通できるの?)
言われた通りコップの交換用の扉を開け、そこにコップを入れます。
それで終わり。
「しっ、失礼します」
と私が言うと、
「お疲れ様でしたー!」
と再び敬礼で見送られました。
それを十二回繰り返すだけ。
心配そうに見ていた村長と村人。
「おお、やりおった!」
心配していたのか、村長は喜びました。
村人たちも私を称えます。
こうして私の仕事は蜜回収になるのです。
数日に一度、コップを交換するだけ。
しかし危険手当がつき、結構なお給金を貰える美味しい仕事。
勇気を出して手を挙げて良かったと思います。
ラムル村の周りには私たちの手で花の種が植えられ、花が咲きました。
アベイユたちはその花畑に向かい蜜を集めます。
「おはようございます」
と言って敬礼をすると花畑に飛んでいきます。
ラムル村を飛び回るアベイユ。
その後、ラムル村ではアベイユの挨拶が当たり前になりました。
たまに痺れさせた魔物の事を教えてくれるので、それが臨時収入になったりします。
村人もアベイユとの共生を喜び、村人もアベイユに挨拶を返すのです。
アベイユも村人も芯は一緒なのかもしれないですね。
ある日、皮鎧を着た見知らぬ男が数人、痺れて倒れていました。
アベイユの代表が、
「蜜を盗ろうとした者です。
この村での処分を。
確かケイン殿の言葉では『犯罪奴隷』として売ればお金になると言っていました。
あとはお任せします!」
というと、ビシッと敬礼して、アベイユは去っていきました。
(すごっ)
その後、悪い冒険者たちは縛られ、王都に行く便で王都騎士団へ連れて行き、犯罪奴隷として売られたそうです。
そのお金で村に柵ができました。
それ以来王都へ荷物を納めに行く馬車にも、アベイユが数匹付いてくるようになりました。
実際にアベイユの蜜が高額で取引されていると有名になり、王都に運ぶ馬車が盗賊に襲われましたが、盗られそうになった時、アベイユによる猛攻で盗賊たちは取り押さえられたそうです。
それも数度……。
盗賊たちは犯罪奴隷として売るので、お陰でラムル村は潤っています。
暫くして、カルオミガも住みつきましたが、あまり変わりませんでした。
「こちらから手を出すな!」
と言う掟は継続です。
しかし、村人と一緒。
村の中を当たり前のように闊歩するカルオミガ。
「おはよーっス」
と手を上げ軽い挨拶をするカルオミガ達。
我々も
「おはようございます」
と返します。
「今日はいい天気ですねぇ」
なんて返すと、
「そうっスねぇ。
この感じだと、昼過ぎには雨が降るかも。
洗濯物とかに注意したほうがいいっス。
それじゃ、蜜集めに行ってきますねぇ!」
そう言って、去っていきます。
ちなみにカルオミガの天気予報はよく当たります。
たまに勘違いした冒険者たちがカルオミガを倒そうとしたようですが、返り討ちにあって屍を晒していました。
私たちは見て見ぬふりをして、装備を回収し死体を埋めます。
わが村から討伐依頼も出ていないのに駆除しようとした罰なのでしょう。
そのうちカルオミガの砂糖も手に入れることになるのでしょうね。
わが村は発展途中です。
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