トンネルを抜けると、転生していました。

第8話 ギルドで依頼を受けました。

　二人は早速ギルドの掲示板を見る。

「主（ぬし）よ、やはり日帰りにしないといかんだろうな」

　カミラが聞いてきた。

「俺としては長くて二泊三日まで」

「二泊も、大丈夫なのか？」

「母さんはだめかもしれないが、父さんなら何とかなりそうだ。

　ずるいが、仕事を受けてしまったといえば何とかなるような気もする。

　野外訓練って理由もあるしね」

「そうか？

　不安だな」

　実際カミラは不安そうだった。

「オーク討伐。

　これなんてどうだ？」

　カミラが依頼を指差して言った。

　内容は……。

　王都に向ホルス街道沿いでオークの出現が続発しているらしい。

　数を減らすためにオークを狩って欲しいという物だ。

　オーク一匹に付き小金貨二枚。ハイオークが出た場合中金貨一枚。

「オークはどの程度の強さ？」

「そうだな、私よりも格段に弱い」

「カミラ基準ね。だったら勝てるか。

　わかった、やろう」

　ケインが言うと、カミラは依頼証をちぎり受付に持って行く。

　カミラは受付け嬢と話しをしながら受付を進め、手続きが終わるとニコニコしながら戻ってきた。

「主（ぬし）と一緒の依頼だ。長い間待った甲斐があった」

「そうだよな、家で戦闘訓練しかしてなかったからな」

　ちょっとした皮肉。

「主（ぬし）だって似たような物だろう？」

「俺は魔法の練習もしていた」

「うー、ずるい。

　五歳のころの主（ぬし）を連れて冒険などできないだろう？」

「そりゃそうか。

　まあ、それにリンメル公爵の目もあるだろうから、あの頃から活動するのも問題があったしな」

「五年間の居候、私もあの家に居づらかったんだぞ」

「はいはい、よく頑張りました。

　ケインはカミラの頭を撫でた。

「俺はまあ、カミラの抱き枕を堪能できたから、居てくれてよかったぞ？」

「抱き枕だけ？」

「あとは自由に考えて良し」

「うー、ずるい」

　カミラはケインの方を向いてプウと頬を膨らませる。

　その夜、ケインは食事が終わりベルトとミランダが居る時に、

「父さん、母さんちょっといい？」

　と声をかけた。

「どうした？」

「なあに？」

　と二人が聞いてくる。

「今日、オークの討伐の依頼をギルドで受けた。

　だから、明日からオーク狩りに出かけたいんだ」

「そうか、頑張れよ」

「カミラさんも一緒なのでしょ。

　だったら気をつけて」

　二人は、止めはしなかった。

「えっ、意外とすんなり……」

　驚くケインに、

「私を倒すのだぞ？

　オークなど相手になるはずがない。

『俺を倒したら冒険者登録させて魔物と戦わせる』とミランダとも話はしていたんだ」

「話が通っていたんだ。

　にしても、なぜ父さんと戦わずに魔物と戦うの？」

「ケインには話していなかったが、魔物を倒すということは魔物の魔力を一部得るということ。

　つまり、ケインの能力上昇にはうってつけと言うわけだ」

　続けてミランダが言う。

「でもね、さすがに小さなケインを外で戦わせるわけにはいかないでしょう？

　でもカミラさんがケインの護衛に付いてくれた。

　だったら最低ラインとしてベルトに勝てるのならば王都周辺の魔物に負けることは無いだろうということになったの」

（結構な安全マージンだな）

　ケインは思う。

「学校に入れば野営の訓練もある。練習ついでに行ってくればいい。

　テントと毛布などの野営道具なら倉庫に入っているものを持って行っていい」

「わかった」

　ケインはミランダに「明日から二泊三日の予定で明日の朝から出る」と伝え、食堂を出た。

　風呂を出てカミラの髪を乾かす。

「食料とかはどうするんだ？」

　俺はカミラに聞いてみた。

「私は主（ぬし）が居るから……」

　カミラはケインたちと一緒に食事もとるが、週一程度でケインから血も吸っている。

「俺の食事かあ……朝は食べるとして、昼夜だよな」

「パンと水を確保しておけば何とかなるだろう。

　主（ぬし）よ明日はオーク狩りだ。

　そして、オークの肉は美味い。

　それを食べればいいんじゃないか？」

（準備しておいたほうがいいような気もするんだが。

　まあ歩いても一日……何とかなるか……）

　ケインは納得する。

「今日は私が主を抱いていいかの？」

「ん？ああ、どうぞ」

　俺はカミラの布団に入り横になった。

　すると、カミラはケインの体に擦りつき、俺を抱き枕にして眠るのだった。

　次の日の朝、

「忘れ物は無い？」

　とミランダはケインに聞く。

　大丈夫だとわかっていても心配なのだろう。

「忘れ物といっても、手に持っているのは父さんがくれた剣ぐらいだしなぁ。

　朝飯も食べたし、昼飯と野営道具も収納魔法で別空間だし。カミラも忘れてないし大丈夫でしょう」

　とケイン言うと、

「カミラさん、ケインをよろしくね」

　とミランダはカミラに頼んでいた。

「お任せください、奥様」

　そして、ミランダに見送られ、ケインとカミラはオーク討伐に向かうのだった。

　二人は王都の道を歩き、門を目指す。

　冒険者ギルドのカードを見せれば、何事もなく外に出られる。

「おぉ、これが王都の外か」

「私は何度か来たことがあるが、主（ぬし）は初めてなのだな」

「まあね、今までは王都の中で事足りたからね」

「この道をまっすぐ行けば森の傍を通ることになる。

　その辺にオークが出てきているらしい」

　カミラは情報を仕入れてくれていたようだ。

「さて、主（ぬし）よ、乗合馬車に乗るか現場まで走るか……。

　しかし、我々はお金が欲しい。

　つまり……？」

「足を使えってことだな」

　カミラが頷いた。

　結局、駆け足でオークが出るという森の傍まで行くことにする。

　森の傍に来ると、昼を過ぎ。

　既に何人かの冒険者が居る。

　オーク狙いのパーティーなのだろう。

　荷車を準備している者も居る。

「どうすればいい？」

　カミラにケインが聞くと、

「そうだな、とりあえずは食事にしよう」

　とカミラが言った。

　ケインはミランダが作ったサンドイッチを頬張る。

（ここに水しかないのが少し寂しい。

　やっぱり牛乳が欲しい）

　ケインは食事を終え気配感知を広げ周囲を探ってみた。

「カミラ、あっちに十の魔力の塊がある。人ではないと思う」

「主（ぬし）よ、オークかもしれんな。

　それでは行ってみるか」

　ケインとカミラは魔力が集まる場所へ向かう。

　すると、カミラの思惑通り、十頭のオークが居た。

　オークは頭が豚で体は人。

　身長は二メートル五十センチぐらい。

　手にはこん棒のような物を持つ。

　体はメタボな人間って感じだろうか。

　ただ、繁殖力が高く、すぐに増えるという。

　厄介なのは人の女性でも亜人でも繁殖ができるという事。

　亜人と言うのはエルフやドワーフ、獣人のことだ。

　そんな女性が拉致され繁殖に使われたという話も出ていた。

　討伐部位は鼻

　肉質が良く、豚肉代わりに食われるとも聞いた。

　冒険者ギルドでは肉の買取りも行うという。

「カミラ、荷車があるのは王都に持って帰って冒険者ギルドに買い取ってもらうため？」

　とケインが聞くと、

「そういうことだな」

　と答える。

　そして、

「ケインの初陣だ。

　どうする、一人でやるか？」

「んー、二人かな？」

　ケインとカミラは見つけたオークに静かに近づくと攻撃を始めた。

　カミラは上から、俺は下から攻撃する。

　ケインは素早く走り回り、オークのアキレス腱を切る。

　踏ん張りが利かなくなり動けなくなるオークたち。

　ケインは暴れるオークたちを避け、頸動脈を切り飛ばすのだった。

　カミラはと言うとオークの肩に乗り、爪を伸ばして耳の穴に差し込む。

　オークは一瞬でこと切れた。

「カミラさん黒天使ですか？」

　ケインはカミラに聞こえないような声で呟く。

　数分もかからずオークたちは動かなくなった。

　二人はオークの鼻を削ぐ。

「これ、一回り大きいよな」

「ハイオークだろう」

　その鼻も削ぐ。

　そして、オークたちを収納魔法でオークの死体を別空間に納めた。

　最初の十頭のあとは、三頭、や四頭のものが散発で居た。当然それも根こそぎ討伐する。

「獲物の取り合いで揉めることもあるので注意」

「今のところはそういうのがなくて良かった。揉めたら面倒だ」

　ケインとカミラがそんな話をしていると、気配感知に五十頭ほどもあるオークの集団が感知できた。

　さっきの集団よりもひときわ大きい魔力を持つ者も居る。

　カミラも察知したのか、

「主（ぬし）よ、でかい集団だ」

「そうだな、でも道に沿って何かを追いかけている」

　様子を見るために、二人は街道が望める丘に上った。