第13話 互いの気持ち

 朝から清々しい気持ちだった。

 そのまま、剛太を迎えに行くと、剛太が寝ていない顔で目を少し腫らせて現れた。

 どうしたの? って聞いたら何でもないって返事が返ってきたけど、何でもないって顔じゃないから。


「剛太、ごめんなさい」


 私は原因が私だと分かっていたから、素直に謝った。そしたら剛太は


「いや、薫は何も悪くないぞ。俺が勝手に悩んでるだけだから、気にするな」


 以前と同じ雰囲気で答えてくれる剛太。うん、やっぱり今日の放課後に剛太に告白しよう。そして、フラれてもこれまで通り、心友でいさせてくれるように頼もう。


 私はそう決意して、将暉くんと衣里ちゃんを待った。そして、朝みんなと一緒に登校する。

 クラス前で剛太と別れて二組に入ると、一人の男子が私に声をかけてきた。


「やあ、神補薫ちゃんだよね? 僕は中山泰司って言うんだ。薫ちゃんは彼氏いる? 居なかったら良かったら僕と付き合わない?」


 随分と軽く、しかし自分に自信がある様子でそう言ってきた中山くん。だけど、私には心に決めた人がいる。


「ごめんなさい、貴方とは付き合えません」


 キッパリはっきりと断ると、傷ついた顔をした中山くん。教室の奥にいる男子、女子が驚きの顔をしている。何で? 私も将暉くんも衣里ちゃんも逆にビックリした。


「クッ、まさか僕をフる子がいるなんて…… これでも告白してフラれた事は無かったんだけどな」


 って中山くんはブツブツ目の前で言ってるけど、はっきりと断ったんだから、早くどこかに行ってくれないかな。私がそう思っていたら、女子が五人ぐらいやって来て、


「ちょっとあんた、泰司くんをフるなんて何様なのよ!」

「そうよ、泰司くんはお情けであんたも誘ったのに」

「せっかく、泰司くん親衛隊に入れるところを断るなんて!」


 えーと…… 私が返事に困っていたら、衣里ちゃんが反論した。


「ナニ? あんたらバカ? 告白されても気に入らなきゃ断るに決まってるじゃない。高校生にもなって、そんな当たり前の事も分からないの?」


 衣里ちゃんの言葉にキーッとか叫び声が聞こえたけど、中山くんはその子達にまあまあとか言ってる。そして、


「僕の彼女達がすまないね。薫ちゃんにも加わって欲しいけど、今日のところは諦めるよ。でも断言するよ。この高校を卒業するまでに、君を僕の虜にしてみせるよ!」


 そう言って中山くんは女子を連れて自分の席に戻っていった。

 自意識過剰男子、中山くんは不純異性交友がバレて、卒業までこの高校に通えなかった事だけはココに伝えておきます。


 私は昼休みに将暉くんと衣里ちゃんに、今日は二人で先に、貴広オジサンのところに行っててくれると頼んだ。将暉くんも衣里ちゃんも応援してるからと言って、了承してくれた。

 そして放課後、誰も居ない教室に剛太と二人切りになった。


「あのね、剛太。言いたい事があるの、聞いてくれる?」


 私がそう言うと剛太が


「おう、俺も薫に言いたい事があるんだ。先に聞いてくれるか? その後に薫の話をちゃんと聞くから」


 そう言ってきたので了承した。剛太は緊張した顔で私の目の前までやって来て、右手を出して


「薫さん! 貴女のその女神のごとき肢体に惚れてます。幼い頃から一緒にいながら、貴女という女神に気がついてなかった俺はバカですが、そんな俺でも良かったら結婚を前提に付き合って下さい! よろしくお願いしますっ!!」


 まさかの剛太からの告白だった。私は嬉しくて震えながら、目からは涙が溢れる。

 そんな私の様子を見て剛太が早とちりする。


「そ、そうか、やっぱり俺みたいな助平すけべえは薫もイヤだよな…… ゴメンな、でもコレからも心友では居て欲しいな」


 そう言って右手を引っ込めようとしたので、慌てて両手でその手を包んだ。


「違うの、剛太。嬉しいの。嬉しくて涙が止まらないの。ごめんね、小さな頃から騙してしまって。でも、私はずっと剛太が好きだったから、本当に嬉しいの。だから、こんな私で良かったら、結婚を前提に付き合って下さい、お願いします」


 私も今の気持ちを剛太にぶつけた。剛太は驚きで固まっていたけど、急に私を抱きしめて


「ああ、薫、もう一生離さないからな!!」


 


 そうして、私達は付き合う事になった。

 




【完結】









※作者より


 第6話の分岐の話を鋭意執筆しております。そちらは助平すけべえを遺憾なく発揮させる予定ですので、苦手な方はご遠慮下さい。

 また、投稿を始めた際にはよろしくお願い致します。m(_ _)m 

 



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助平な剛太は今日もフラレる しょうわな人 @Chou03

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