帝国の勇者

紫風

帝国の勇者

 ここは、ロバタヤキ帝国。

 多くの勇者がその身を磨き、晴れの舞台を待っている。


 ロバタヤキ帝国の主力は、ヤキトリ公爵。公爵の誇る騎士団の勇者たちは、国民からの人気も絶大。今日もあちこちで引っ張りだこである。

「ツクネ部隊、前へ!」

「いや、ネギマ部隊が先だ!」

 両者にあちこちから、熱い声援が送られる。

 ツクネ部隊にはタマゴが寄り添い、熟練の男性たちからの支持が厚い。

 一方、ネギマ部隊には、男性女性両方からの支持が集まり、特に女性の声援が大きい。

「くそう、ネギマはイケメン枠かっ!」

「まだまだ、これで終わりではないぞ!」

「あっ、あなたは、ハツ伯爵に、スナギモ伯爵!」

 続々と登場する人気者に、国民のボルテージもヒートアップ。

 帝国の戦力を幅広く支える、オノミモノ公爵の騎士団たちが、支援のために走り回っている。主力はビール伯爵の一族である。


「私を忘れてはいないかね?」

「テバサキ伯爵!」

「待ってました!」

 ヤキトリ領では珍しい、串のない格好の伯爵は、山盛りになって登場することがある。その迫力に、国民も盛り上がったり、独特の形状ゆえに敬遠する者もいる。伊達者とはそういうものである。


 ファンファーレが鳴り、ヤキトリ公爵の嫡男・モモ公子が、麗しい令嬢をエスコートして登場する。

「ほほほ、皆様、お待ちになりました?」

 豪華な縦ロールも美しい令嬢の名は、トリカワ侯爵令嬢。ヤキトリ公爵領きっての人気者である。

 国民のボルテージは、最高潮に達する。

「皆様、ご報告がありますの。今日はお客様をお迎えしておりますのよ」

 促されて登場したのは……ブタバラ侯爵!

「ブタバラ侯爵……? 名前は知っているが」

「知らないのかお前、ブタバラ侯爵の実力をっ!」

 オノミモノ公爵の部隊は大忙しである。

 ヤサイヤキ伯爵の令嬢たちも、ダンスの相手をしようとズラリと待機中だ。



 ヤキトリ公爵領に足を踏み入れ、串を付けて成形されたところから、勇者の皆はこの日を待っていた。

 塩、またはタレ、どちらを纏うかはその日その時次第。

「どちらであろうと、国民を最高に楽しませられるのは自分」

 勇者たちは、その時を、今か今かと待っている。


□▲〇


「あそこを通るのは、皇帝の一族・トリノマルヤキ様! 双璧のステーキ様!」

 どどん。


「ローストチキン様が来たぞー!」

 どーん。


「ホタテカイバシラ一族もお目見えだ!」


□▲〇


 今日も、炉端焼き・焼き鳥の店『帝国』は大繁盛である。

 皿の上に続々と乗っていく焼き鳥たち。

「鶏皮10本、豚バラ10本、もも5本に…………」



END.

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帝国の勇者 紫風 @sifu_m

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