コケコッコ★ハンター!!

山岡咲美

コケコッコ★ハンター!!

 朝空がしらみ始めた頃、奴は動き出す。



「夜のうちにダンジョンの中でしとめるんだな」

 全身ヨロイの片手剣+大盾使いの男、ダグ・ソードシールドが初めての獲物を前に緊張している。


「ああそうだ、朝、外に出られると飛んで逃げられる可能性がある」

 この種の狩りの専門家である槍使いの男、マトバ・チキンランサーが新造パーティーにそいつの習性を説明する。


「飛ぶの?」

 弓使いの女、ユミナ・アーチャーが驚く。


「当たり前でしょなのよ」

 回復役僧侶の女、イズミ・セントワンドはユミナ・アーチャーの無知っぷりに呆れる。


「まっそう成ったらアタイらの出番って訳さユミナ」

 魔法使いの女、ホムラ・ダークワンドがそう言い、ユミナ・アーチャーにウインクした。



 パーティーは深い洞窟ダンジョンを進んでいた、前衛に剣士と槍使い、中衛に弓使い、後衛に回復魔法の僧侶と攻撃魔法の魔法使い、このフルサイズのパーティーがニワトリを狩る為の必要最低限なパーティーだった。



***



「いたぞマトバ」

 ダグ・ソードシールドが洞窟ダンジョンの奥でニワトリを見つけ指をさす。


「ああ、良い獲物だ」

 マトバ・チキンランサーがもう狩ったあとの事を考える。


「大きくない?」

 ユミナ・アーチャーが洞窟の半分ほどを埋めるその不気味な白い巨体に逃げ腰になる。


「あんなものよユミナ、わたくし見習いの頃教会に運ばれて来たニワトリを見たけど、まるで山かと思ったわ」

 イズミ・セントワンドは見習い僧侶の頃村で暴れまわっていたニワトリが倒され運ばれた記憶を思い出す。


「まあ獲物はでかいほど良いわ、トサカと羽はマジックアイテムになるし骨は固く武器には欠かせない素材よ、それに」

 そう言うとホムラ・ダークワンドは昔師匠と食べたニワトリの肉の味を思い出す。


「ああ、肉は串にさして焼き鳥が旨い」

 マトバ・チキンランサーは笑みをこぼす。



***



「さあ火の精霊プラズマよ我の呼び掛けにこたえつどえ、今この場で舞踊り力を高めよ、我が望むは炎の網……」



「フレイムネット!!」



 魔法使い、ホムラ・ダークワンドの炎の魔法がニワトリをつつむ。


「やっぱり魔法効きにくい?!」

 イズミ・セントワンドは炎の網をその白い羽で中和していくニワトリにやっぱりニワトリは化け物だと少し引いた。



「ヒット!!」



 ユミナ・アーチャーの矢がニワトリを射貫く!



「ヒット!!」


「ヒット!!」


「ヒット!!」


「ヒット!!」


「ヒット!!」


「ヒット!!」


 ニワトリは今、ホムラ・ダークワンドの炎の魔法に対抗する為、その白い羽毛を広げ魔法が耐性モードに成っていた、しかしそれでは物理攻撃を防げない、そう、そのための魔法、その為の魔法使いなのだ。


「行くぞダク! 魔法が切れる瞬間を狙うんだ!!」

 マトバ・チキンランサーはダグ・ソードシールドに指示を出す。


「解ってる!!」

 ダグ・ソードシールドは迷うことなくマトバ・チキンランサーの前に大盾を構え出てそのままニワトリに突っ込んで行く。



「待ってブレスが来る!!」



 イズミ・セントワンドが叫んだ。



「丸まれダク!!」

 マトバ・チキンランサーはダグ・ソードシールドにしがみつき膝を折らせ全身をその大盾の影に隠した。



コッケコッコーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!



 ニワトリのファイヤーブレスがダグ・ソードシールドとマトバ・チキンランサーを飲み込む。


「親愛なる癒しの神ソクラテスよ、祈り欠かさぬ神の子らに、努力欠かさぬ神の子らにその情をもって癒しの光を与えたまえ」



「ヒーリングライト!」



 ニワトリの炎の息に焼かれつつあったダグ・ソードシールドとマトバ・チキンランサーの体がイズミ・セントワンドよ回復魔法で回復していく。


「恐れるなダク! 炎の痛みは過去のものだ、僕達には仲間がいる、前に進め!!」



「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」


 炎に焼かれた痛みがまだ脳に鮮明に残るなか、魂が彼、ダグ・ソードシールドの足を前に進ませた!


「喰らえニワトリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


 大盾の影からダグ・ソードシールドの剣がニワトリの胸をつらぬく、それはホムラ・ダークワンドの炎の魔法が切れニワトリが対物理攻撃を防ぐ為その羽毛を締める一瞬をついたものだった。





コケ! コケ!! コケ!!!!





「逃がさないよ焼き鳥くん!!」


 パニックに成ったニワトリが魔法と物理どちらに対応するかその白い羽の有り様を交互に変える中、その変わり目を見逃さずマトバ・チキンランサーはニワトリのクビに「スウィッ」とその槍を滑らせた。



 ニワトリの首が落ちる。



***



 冒険街の焼き鳥屋



「やっぱ焼き鳥にはビールだなマトバ」

 ダグ・ソードシールドがビール片手に分厚いももタレの焼き鳥を頬張りその焼き鳥から溢れる肉汁と甘辛醤油ダレを口唇たらす。


「ひんが無いですよダク」

 イズミ・セントワンドがもも塩を串から外し皿にのせてからお箸でいただく。


「食べ方なんてどうだっていいよ」

 ユミナ・アーチャーは甘いネギと一緒に食べるネギマ派だ。


「ニワトリはやっぱり高く売れましたね、マトバ」

 ホムラ・ダークワンドはレバーを食べながらお腹も懐も「ホクホク」だ。


「ああ、このパーティーも焼き鳥パーティーも最高だ」

 マトバ・チキンランサーはトリ皮に食らい付きビールを飲み干した。





 人は彼をコケコッコハンターと呼ぶ。

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