それは、食べれるけど。食べちゃダメ!

八五三(はちごさん)

どの部位、が。お好きですか?

『わたしは、"内臓系の脂肪肝白レバー"、だ。まったりとした食感、それ、が。舌の上で長時間、まろやかな甘みを味あわせてくれる。あと、普通の肝臓レバーに、どうしてもある――特有の匂いや臭みが少ない。普通のレバーが苦手なモノは、一度、白レバーをしょくすべきだな――食の価値観が一変するだろう! それと、トリビアなのだが――――美味さは、フォアグラに匹敵すると云われる、ぞ』

『お師匠さま。らしい、チョイスですね』『おいしそうー』


『うむ。では、黒』

『はい。俺は、"肉系の腿の中心おび"、ですね。なんと云っても、一羽から左右の二箇所、しか、とれない――希少部位の一つですから』

『おび、』

『もも肉、です』

『もも肉。もも肉なのに、希少なのか? 黒、よ』

『もも肉だからこそ、希少――いえ、贅沢な部位です。お師匠さま!』

『ほぉー』

『いいですか、お師匠さま。もも肉はよく食されてる部位です。赤身肉と脂のバランスのちょうどいい、コクのある部位です。それに、良い歯ごたえもあり、人気ランキングでは、必ず上位に入っています』

『たしかに、もも肉は人気がある、が。もも肉はもも肉。どう? 贅沢なのだ』

ももの中心だけ、を、食すのです』

『な、なに! 中心だけをか!』

『はい。中心だけをです』

『かぁーあー。それは贅沢、な! 黒。一本取られたぞ、串だけに』『おいしそうー』

『は! ありがとう、ございます。お師匠さま』


『最後は、白』

『僕は、僕は、"皮・骨系のかわとなんこつ"、だよ』

『かわ。か』『なんこつ。いいですね』

『まず、かわ、ね。皮は脂がのっていて、脂肪分が多くカロリーも高いんだけど。それでもあえて素揚げにするの。そうすると、皮にある余分な脂が、抜け――カリ、カリ、サク、サク、パリ、パリ、に、なって美味しいの』

『カロリーイコール美味さ。か』『かわの闇を感じます。お師匠さま』

『で、ね。次は、なんこつ。これはシンプルに唐揚げにする、の。コリ、コリ、とした――あの独特の噛みごたえと味わい。何個でも食べれる、の、よ』

をてらうことなく、美味さだけを追求する。か、白よ。成長したな』『負けたよ、白』




 コン!

「くぅーん」

 ポカ!

「きゃん」

 ビシ!

「きゅ」




「あんたたちのご飯じゃ、ないの! ぴーちゃんは! 友だちから預かってる、大事な、大事な、家族なの!」

「「「ワン、ワン、ワン、ワン」」」

「ぁーあーん。喧嘩売ってん、の?」

「「「ぅ、ウ~グルルルル」」」

「へぇーえー。いい、度胸してるわね――あんたら。そんなに――――三味線しゃみせん犬皮けんぴに、なりたいん、だ」




『あの目は! 逃げるわ、よ。白、黒』

『は、はい。お師匠さま』『ぅ、うわぁーあーん。おじょうに、かわ、はがされちゃうよぉーおー』

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それは、食べれるけど。食べちゃダメ! 八五三(はちごさん) @futatsume358

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