旅人よ、混沌に抗え

★はじめに

 OCTOPATH TRAVELERは株式会社スクウェア・エニックスの著作物であり、OCTOPATH TRAVELER TRPGは久保田悠羅/F.E.A.R.の著作物です。

 当シナリオは同TRPGを盛り上げるのが目的であるため、これらの権利を侵害するような行為は固くお断りします。




★マスタリングに際して


・判定を行う際は【○○:△】と表記します。【感覚:10】なら『目標値が10の【感覚】判定』と読んでください。

・(P○)の表記があったらルールブック○ページを参照してください。

・原作ゲームの地名やキャラクターが登場しますが、各種関連書籍や個々人の信じる姿と強い齟齬を覚えた場合は、適宜「そんな感じの別のキャラクター」等と補完してください。特に今回はラストで既存キャラクターのイメージを損い得る表現も少々あるため、共に遊ぶメンバーの嗜好を鑑みて、適宜変更してください。

 また今回、原作ゲームの既存ダンジョンに設定を追加しています。各種設定資料や個々人の脳内と強い齟齬が生じましたら、同様に「そんな感じの別のダンジョン」としてください。

・当シナリオの展開や結末は適宜変更していただいて結構ですが、著しい変更はご容赦ください。




★シナリオスペック


・プレイヤー人数:2〜4人

・想定プレイ時間:4~5時間

・PCの消費経験点:300




★ストーリー概要


 サンシェイドはガルデラ教団から襲撃を受けており、その防衛に協力する。

 教団員は砂笛の洞窟を拠点とし、かつその地下に眠る古代遺跡の魔物を味方につけている。

 旅の剣士オルベリクと協力して砂笛の洞窟に潜り、最奥で封じられた魔物を撃破すればシナリオクリアとなる。




★トレーラー


 砂漠の町は戦火に包まれていた。

 邪教徒が放つ破壊の黒炎。

 地の底より放たれる混沌の獣。

 旅の剣士は奮戦するが、多勢に無勢。

 彼には、仲間が必要だ――。


 オクトパストラベラーTRPG「旅人よ、混沌に抗え」




★NPC情報


・オルベリク

 かつて王国で“剛剣の騎士”と謳われた剣士。35歳。

 戦で国を失い、その精算をすべく旅をしている。


・アーフェン

 PC一行が第1話で出会った旅の薬師。

・オフィーリア

 PC一行が第2話で出会った旅の神官。

・トレサ

 PC一行が第3話で出会った旅の商人。

→3人及びオルベリクは原作ゲームのキャラクターだが、本シナリオにおいては「肩を並べたこともあるが、その時々の事件や戦いが一段落してからは各々の目的地に向かうために別れた既知の相手」として扱う。


・レスター

 サンシェイド防衛戦において、前線に出るオルベリクに代わって情報の集約や指揮代行などを引き受ける補佐役の青年。25歳。


・ブリュンヒルデ

 かつてオルベリクの部隊にいた剣士。28歳。

 戦で国を失い、「力こそ全て」と道を踏み外した末、邪教団の支部を率いる席に堕ちた。

 オルベリクにとっては、彼女もまた守れず、導けなかった相手として心に残っている。



★オープニング


『既にガルデラの火の殆どはサンランドのガルデラ教団に売っ払った後だ』

 聖火騎士シャルルの報告を受け、PC達は燃え盛る陽光が降り注ぐ砂の大地――サンランドに来ていた。

 共に報告を受けた旅の商人トレサと聖火騎士ジネットは「私達も準備をして向かうから、貴方達は先に!」と別れた。遅れて助けに来てくれることだろう。

 出立の際、“ガルデラの火"の作者である錬金術師ヘルミナから「“ガルデラの火”は爆発する前に氷結してしまえば無力化できる」と氷の精霊石3個を受け取る。なお、彼女はこれから罪を償わなければならないため、サンランドでの戦いには参加しない。


 砂漠を歩いていると、覚えのある地響きが聞こえてくる。踊り子の町、サンシェイドの方角だ。


 サンランド地方の入り口でもあるサンシェイドの町は、見たこともないモンスターに襲われていた。

 町の入口ではただの町人か、それに毛が生えた程度の武装した人々が、その黒い泥が四足を生やしているようなモンスターに対抗している。

 町には外部からの襲撃を防ぐ外壁もあるようだが……“ガルデラの火”によるものだろう、所々破壊され、崩れ落ちている。


 様子を見て町に駆け寄るPC達にモンスターは気づき、その群れに囲まれる。……が、武器を構えようとするPC達とモンスターの間に1つの青い人影が躍り出て、凄まじい剣の横一文字でモンスターを薙ぎ払ってしまう。

「旅の人か? ここは危険だ。すぐ引き返す……のは厳しいか。早く町の中へ。案内しよう。

 俺はオルベリク。旅の剣士だ」

 と、PC達を保護してくれようとする男。

 [感覚or幸運:12]に成功すると、男の後方からこちらへ飛来する黒い石――“ガルデラの火”に気づく。オルベリクに退避を促し、安全な場所まで離れる時間はない。PCの誰かが<氷>の属性攻撃(薬師や学者のアビリティ、または精霊石など)で迎撃を試みる場合、そのコスト(MPや精霊石)を消費することで、着弾前に“ガルデラの火”を氷結、無効化できる。“ガルデラの火”を無効化できなかった場合、ギリギリで気づいたオルベリクがPC達を庇い、大怪我を負って倒れる。

 オルベリクが大怪我を負った場合、他の町人が駆けつけてオルベリクを搬送、PC達を町へ案内してくれる。PC達の手でオルベリクを手当する場合、HP50点の回復を行うと、オルベリクは自立可能となり、PCにお礼を告げた後、町へ案内してくれる。

 “ガルデラの火”を無力化できた場合、オルベリクは「そんな方法で無力化出来たのか」と感嘆した後、改めて町へ案内してくれる。




★ミドルフェイズ


 サンシェイドの町は、その奥に構える大きな酒場で毎夜開かれる踊り子のショーが人気の歓楽街だ。

 だが今の町中は恐怖に怯える女子供や老人、怪我をした男衆……といった状態。酒場に勤める踊り子の宿舎が臨時で怪我人の救護所に充てられ、見目麗しい踊り子や他の若い女性たちが、血のついた包帯や水を汲み上げた桶などを持ち、せっせと歩き回っている。


※この後のシーンはオープニングにおける“ガルデラの火”への対応で分かれます。

 また、NPCのセリフが多く入っていますが、PCも発言できるよう適宜“間”をとり、PCの発言に合わせてNPCのセリフは調整してください。


〜オルベリクが無傷の場合〜

 オルベリクに案内された先は奥の大酒場。中は襲撃に対抗すべく、居合わせた旅の戦士や町の男手をオルベリクがまとめて指揮する、簡易な作戦本部となっていた。

「おかえりなさい、オルベリクさん。襲撃は一旦収まったみたいです。被害は……」

 駆け寄ってきた若い男性がオルベリクに報告する。眼鏡をかけた細身の男性で、頭脳労働派ゆえこの配置に……といったところだろう。

「ありがとう。彼らは旅の人だ。保護を……と言いたいところだが、あの爆発する石について情報を持っているらしい」

 オルベリクがPCを紹介する。

「それは助かります。僕はレスター。お話だけでもお聞かせ願えませんか?」

  ↓

 オルベリクとレスターにPCが持つ情報を共有。

 レスターからは「二日前の夜、町の東にある砂笛の洞窟で地響きがした後、少ししてあの黒い泥の魔物が現れた」「魔物の中には何人か黒衣の人間が混じっていて、ガルデラ教の印を携えているらしい」「襲撃は散発的だが、良くて五分。“ガルデラの火”を投げられた分はそのまま町の被害となり、こちらの負傷者は増える一方」という話が聞ける。

  ↓

「なるほど。それは有用ですね。

 ……ですが、今は<氷>の属性を扱える者がほとんど居ません。薬師の中に多少いるかもしれませんが、救護に手一杯で……」

 どうしたものか……と黙り込んでしまうレスター。

「怪我人の救護は私に協力させてください」

「ってことは……俺はその“ガルデラの火”の迎撃だな」

 振り向くと、そこには以前出会った薬師アーフェンと、神官オフィーリアの姿。


〜オルベリク負傷時〜

 オルベリクを臨時の救護所に預けた後、案内された先は奥の大酒場。中は襲撃に対抗すべく、居合わせた旅の戦士や町の男手をオルベリクがまとめて指揮する、簡易な作戦本部となっていた。

「オルベリクさんは“ガルデラの火”で負傷。こちらはオルベリクさんが守った旅の方だ」

「なるほど。報告ありがとうございます。下がってください」

 一行を案内してくれた町人は一通り報告すると、酒場をあとにする。酒場の中心にいるのは眼鏡をかけた細身の男性で、頭脳労働派ゆえこの配置に……といったところだろう。

「はじめまして。僕はレスター。戦場に赴くオルベリクさんに代わり、戦況把握などの補佐をしています。

 見ての通りサンシェイドは不気味な黒い魔物と邪教団からの襲撃を受けており、戦い手や癒し手を求めています。ご協力願えないでしょうか?」

  ↓

 オルベリクとレスターにPCが持つ情報を共有。

 レスターからは「二日前の夜、町の東にある砂笛の洞窟で地響きがした後、少ししてあの黒い泥の魔物が現れた」「魔物の中には何人か黒衣の人間が混じっていて、ガルデラ教の印を携えているらしい」「襲撃は散発的だが、良くて五分。“ガルデラの火”を投げられた分はそのまま町の被害となり、こちらの負傷者は増える一方」という話が聞ける。

  ↓

「なるほど。それは有用ですね。

 ……ですが、今は<氷>の属性を扱える者がほとんど居ません。薬師の中に多少いるかもしれませんが、救護に手一杯で……」

 どうしたものか……と黙り込んでしまうレスター。

「レスター、追加戦力だ」

 上半身に痛々しい包帯を巻いたオルベリクが現れる。

「オルベリクさん!? 駄目です、休んでいてください! 大怪我と聞きましたよ!?」

「大丈夫だ。腕の良い薬師と神官が来てくれたのでな」

「怪我人の救護は私に協力させてください」

「ってことは……俺はその“ガルデラの火”の迎撃だな」

 力こぶを作るようなポーズで快復を伝えるオルベリクに続いて、見知った顔の薬師と神官が入ってくる。アーフェンとオフィーリアだ。


「よっ、久しぶり。オニマダラの件が気になってな。あの後調査してみたらここにたどり着いたってわけだ」

「私はセントブリッジを発った後、アーフェンさんに会って、セントブリッジへ引き返し……」

「私とも合流したんだよね、オフィーリアさん!」

 と、いつの間にか入り口から顔を覗かせているトレサの姿。

「氷の精霊石とお薬、たんまり買い込んできたよ! それにほら、ジネットさん達が聖火騎士さんも連れてきてくれたし!」

 酒場の外にはいつの間にやら20人程度の聖火騎士が集まっている。

「これだけ戦力がいれば攻勢にも出られるだろう」

 オルベリクは続ける。

「皆が町を守ってくれている間に、俺が砂笛の洞窟に潜入し、頭を取ろう」

「待て、オルベリク。いくらあんたでも一人じゃ危険だ。彼ら(PC)も潜入組に入れよう。あのオニマダラ……と言ってもアンタは知らないか。まぁかなり凶悪なモンスターをサクッとやっちまった奴らだ。腕は俺が保証する」

 1人で敵陣へ乗り込もうとするオルベリクに、PCの同行を提案するアーフェン。

「そうか……では、背中を頼めるか?」


 オルベリクと共に砂笛の洞窟へ向かうことになったPC一行。買い物をして出発までがミドルフェイズで、今回は特別目標となる情報はない。「攻略上参考にできるかも?」程度の情報しか街では得られないが、以下に記述する。

 聞き込みできる内容としては「邪教団について」「黒い泥の魔物について」「砂笛の洞窟について」

 例によって、以下に基本パターンを記載するが、異なる提案が出た場合、基本は目標値12として判定。名案だと思ったら目標値10、無理矢理だと思ったら目標値14とする。使えそうなフィールドアクションがない場合、目標値を-2(8/10/12)しても良い。PC全員が判定に失敗した場合、300リーフ支払うことで、成功時に得られる情報を得られることとしても良い。


 また、買い物前に発生するイベントもあるため、下記3つの情報記述の後も参照されたい。


「邪教団について」

 [魅力or幸運:12]に成功すると、集まった聖火騎士の中から、この地方で活動しているガルデラ教団について知っている者を見つけ、聞き出せる。

『ここ数年で話を聞くようになった集団。

 砂漠出身者は少ないのか、砂嵐や強風に翻弄される姿がしばしば見られるようで、あまり危険視されてこなかった。

 リーダーは二刀を操る女剣士で、かつて何処かの国の騎士をやっていたという噂』

 この情報を聞くと、オルベリクは「まさか……いや、考えすぎだな」と呟く。PCが問い質すと「古い知り合いにそういう者がいただけだ。気にするようなことじゃない」と返す。


「黒い泥の魔物について」

 救護所から出てきたばかりの比較的軽傷な戦士から話を聞けるが、ポッと出の旅人がリーダーのオルベリクと共同作戦を取ることに、いい気分ではない様子。

 [身体or敏捷:12]で認めさせることができ、「黒い獣には剣による斬撃や<光>の属性が有効らしい」という話が聞ける。また、「絡んで悪かったな」と餞別にHP回復のブドウ2個を貰える。


「砂笛の洞窟について」

 [理知or魅力:12]に成功すると、町の老人から話を聞くことができる。

『砂笛の洞窟は一見ただの洞窟だが、実はその地下に古い遺跡が眠っている。

 そこはかつて、武神の一柱が混沌の獣と戦った場所であり、その獣は複数の獰猛な魔物の特性をかけ合わせたような化け物だったという話だ』


 PCが買い物をしようと市場に向かうと、金髪眼鏡の聖火騎士シャルルが声をかけてくる。

「やぁ。まさかこんな大きな戦いになるとはね。

 追加で武具を余分に持ってきているから、見繕ってくれ」

 と聖火騎士の物資置き場に案内され、「3000リーフ未満の武器か防具」を1人1つ選んで貰える。


 準備が整ったら砂笛の洞窟へ出発。

 洞窟では中ボスクラスの戦闘2回に加えてボス戦が控えている。PCの回復剤購入量が心許なければ、オルベリクを通して「敵陣では困難な戦闘が予想される。回復剤は多めに用意しておいたほうが良いだろう」と伝える。


 一行が町を出ると、ほぼ入れ違いで物見の敵襲を告げる声が響く。東の砂漠から先程のような黒い泥の魔物と黒衣の邪教徒が攻めてくるのが見える。

「アレと衝突しては本末転倒だ。アーフェン達を信じて、我々は迂回して洞窟へ急ごう」




★クライマックス


〜砂笛の洞窟〜

 砂笛の洞窟内部は広い空洞となっており、外から吹き込んだだろう砂が地面を覆う、黄色い空間だ。視界が閉ざされない程度にかがり火が配置されており、奥から何やら声が聞こえてくる。

 近寄ると黒衣の邪教徒が言い争っていて、以下のように意見が割れていることがわかる。

「リーダーが混沌の獣を味方につけた。今こそ我らの力を示すときだ」

「混沌の獣を使役しようなんて危なすぎる。止めよう」

 隠れて様子を見る、教団員に仕掛ける等、PCが対応を決めた辺りで、洞窟中に金切り声のようなものが響き渡る。

 続いて教団員がいる所より更に奥から、コウモリを思わせる皮膜の翼を生やした大蛇が現れる。

「これは素晴らしい。こんなモノも眠っているのか」

「なんて恐ろしい。これは我々の手に余る化け物だ。重ねて言う、止めるべきだ!」

 中止派は続行派の肩を掴んで迫るが、業を煮やした続行派によって胸をナイフで突かれ、崩れ落ちてしまう。

 続行派はその翼持つ蛇を連れて洞窟の入口、つまりはPC達のいる方へ進んでPC達を発見、蛇をけしかけてくる。

 ここまでの流れの途中でPCが躍り出た場合でも同様に、戦闘開始。


《戦闘》

 ウイングドスネーク

 邪教徒×[PC数−1](1:剣、斧、風、闇)

 ・ウイングドスネークは下記データを参照。

 ・邪教徒は海賊(曲剣)Ⅰ(P260)準拠。

  弱点を4(剣、斧、風、闇)に変更。

  シールド強度を1に変更。

 ・敵は全て前衛エリアに配置する。

 ・オルベリクは各ターン毎に1回、PC1人が受けるダメージを肩代わりしてくれる。ターン中にこの効果を使わなかった場合、ターン終了時に前線エリアにいる単体(敵)に対し、<剣>による2D+24点のダメージを与える。

 ・[感覚:10]に成功すると、鱗がぬらりと粘液で覆われていることに気づく。

 ・[理知:12]に成功すると、「通常の蛇だと熱に弱いことが多いが、体液で身を包んで守っていることもある。その場合、代わりに<雷>の通りが良くなる」という知識が思い出される。


≪ウイングドスネーク≫

 命中:9 回避:14 クリ:0

 物攻:28/34 物防:28/10

 属攻:20/28 属防:26/8

 HP:120

 速度:20 シールド:4

 弱点:4(槍、短剣、弓、雷)

 無効デバフ:なし

 所持品:毒の治療ハーブ

 アビリティ:

 1~3 <スネークバイト>

  単体(同)に物理攻撃。命中時、[毒Ⅱ]を与える。

 4~6 <逆鱗>

  エリア(同)に物理攻撃。

  

▼PC人数による調整

・PC人数が4人の場合

 このエネミーの最大HPを150、シールド強度を5に変更する。

・PC人数が2人の場合

 このエネミーの最大HPを100、シールド強度を3に変更する。


 戦闘後、邪教徒は投降する。投降するが、報復を恐れて情報は出さない。[身体or魅力:12]によって情報を引き出すことが可能。《聞き出す》や《探る》の他、《試合》や《誘惑》も有効。

『リーダーがガルデラ神から賜った粛清の炎(ガルデラの火)で世界を変える』

『差し当たってこの洞窟の奥に封じられた遺跡を解放し、混沌の獣を解き放った』

『リーダーは最奥に眠る獣を起こしに遺跡を進んでいる』

『リーダーはかつて何処かしらの王国で騎士をしていた剣の達人』

 なお、胸を刺され倒れている中止派に何らかのHP回復を行うと、[理知or魅力:10]で上記の情報が得られる。こちらは《試合》の代わりに《導く》が有効。


〜縦穴〜

 蛇が出てきた洞窟の奥の方へ進むと、真新しい縦穴を発見する(リーダーが“ガルデラの火”で開けた穴)。

 縦穴は直径5mほどで、縁にはロープがしっかりと固定され、縦穴の中へ伸びている。

 先へ進むには[体力or敏捷:12]を行う。失敗すると落下し、物防/魔防無効の2D+10点のダメージを受けるが、失敗したPCのうち最も現在のHPが低いPC1名はオルベリクが助けてくれるため、このダメージを免れる。


〜混沌の遺跡〜

 洞窟の下層はとても古い時代の遺跡となっていて、壁には燭台もあるが古く、機能していない。

 壁や柱など所々に古代の言語が刻まれており、[理知:12]に成功すると読み解ける。《探る》も可。失敗した場合、代表1名が2D点のSPを消費することでも読み取れる。

『ここは古い時代、豪武匠ウィンヒルドがある魔物と戦った場所である。

 その魔物は獅子、山羊、蛇竜を混ぜ合わせたような魔獣で、倒れてもなお立ち上がった。

 長い戦いの末、遂に魔獣はウィンヒルドの剣(※)の前に倒れた。

 ウィンヒルドは魔獣が二度と立ち上がらないよう、剣を楔として残し、その場を去った。

 人々はここに祠を建て、その楔を守ることとした』

※この“楔の剣”は最終戦闘の直前に最高級品相当の武器として入手可能である。これまでのキャンペーン、及び洞窟に来る前の買い物を鑑みて、他によりプレイヤーが喜びそうな、または場が盛り上がりそうな武器種があれば、該当する武器種(槍、斧など)に変更して良い。但し、弓や杖に変更する場合は不自然にならないような描写に変更してほしい。


 言語の読み取りを終える、または読み取るための判定を諦めると、奥から獅子の嘶く声が聞こえ、獅子と山羊、二つの頭を持った魔獣が、黒い泥の獣を伴って現れる。




《戦闘》

 ツインヘッド

 ラルヴァビースト×[PC数−1]

 ・ツインヘッドは下記データを参照。

  描写上は<獄炎のブレス>は獅子頭から、<静寂の吹雪>は山羊頭から放たれる。

 ・ラルヴァビーストは砂漠のリザードマンⅡ(P251)準拠。

  弱点を4(剣、斧、弓、光)に変更。

 ・ラルヴァビーストを前衛エリアに、ツインヘッドを後衛エリアに配置する。

 ・オルベリクは各ターン毎に1回、PC1人が受けるダメージを肩代わりしてくれる。ターン中にこの効果を使わなかった場合、ターン終了時に前線エリアにいる単体(敵)に対し、<剣>による2D+24点のダメージを与える。


≪ツインヘッド≫

 命中:8 回避:13 クリ:0

 物攻:30/36 物防:30/12

 属攻:28/34 属防:26/8

 HP:135

 速度:18 シールド:4

 弱点:4(槍、短剣、火、水)

 無効デバフ:なし

 所持品:SP回復のプラム

 アビリティ:

 1~3 <蹂躙>

  エリア(同)に物理攻撃。

 4~6 <獄炎のブレス>

  単体に<火>の属性攻撃。

 特殊 <静寂の吹雪>

  HP0以下になった際、死亡前に手番を無視して使用。エリア(同)に<氷>の属性攻撃。命中時、[沈黙]を与える。

 ※直後に戦闘終了となるため、この[沈黙]はすぐ解除されるが、「山羊頭は弱ると[沈黙]付与の攻撃をしてくる」「この死に際の攻撃には何か意味がある(=ボスのヒント)」という情報となる。


▼PC人数による調整

・PC人数が4人の場合

 このエネミーの最大HPを160、シールド強度を5に変更する。

・PC人数が2人の場合

 このエネミーの最大HPを110、シールド強度を3に変更する。


 戦闘後、先に進むと古代の祭壇へ


〜古代の祭壇〜

 遺跡を先に進むと、祭壇のような場所に着く。

 祭壇の中央には内側から破壊されたような石棺の残骸と、古い剣(※楔の剣)が転がっている。

 剣(※)を調べる場合、[理知or感覚:12]で「古い時代の剣だが、今なおイーグルセイバー(※)相当の武器として使える」「(先の古代言語を読んでいた場合)これが先の古代言語に記された楔の剣(※)だろう」ことが分かる。

※楔の剣を別の武器種にしていた場合、

 槍 :ヘヴィランス

 短剣:トリックスターダガー

 斧 :バイキングアクス

 弓 :トマホークボウ

 杖 :ワンダースタッフ

 とする。


 その後、そこから更に奥へ大きなものを引きずったような跡を目にする。


〜最後の戦い〜

 祭壇の奥へ進むと、大きな広間に出る。

 広間の中央では異形の獣がラルヴァビーストを生み出そうとしているところ。獣は獅子と山羊の首を持ち、蝙蝠の翼と大蛇の尾を生やしたおぞましい化け物だ。

 獣の傍では黒い胸当てとローブに身を包んだ女が獣を撫でている。

 その女――教団のリーダーはオルベリクのかつての部下ブリュンヒルデであり、それに気づいたオルベリクは

「ブリュンヒルデ卿! 何をしている! ……考えたくはなかったが、まさか……」

「……これはオルベリク隊長。お久しぶりです。

 これですか? これは力です。我らがホルンブルグは力不足により滅んだ。我々騎士にもっと力があれば守ることができた。

 だから私はより強い絶対的な力……黒呪帝ガルデラの力を求める。これはその一端に過ぎない」

 目の据わったかつての部下を見つめ、オルベリクは

「……君達。すまないがしばし、あの化け物の相手を頼めないだろうか。彼女は私が正してあげなければならない相手だ」

 とPCに頼みながら、腰の剣を抜き放つ。

「邪魔をするなら、かつての隊長といえど容赦はしない。……おい、魔獣。お前はあの取り巻きを倒せ。再生能力が失われようとも、貴様の敵ではあるまい」

 二刀を構えるブリュンヒルデの命令に、異形の獣は恐ろしい咆哮をあげ、ラルヴァビーストと共にPCへ襲いかかってくる。


《最終戦闘》

 混沌のキマイラ

 ラルヴァビースト×[PC数−1]

 ・混沌のキマイラは下記データを参照。

 ・ラルヴァビーストは砂漠のリザードマンⅡ(P251)準拠。

  弱点を4(剣、斧、弓、光)に変更。

 ・ラルヴァビーストを前衛エリアに、混沌のキマイラを後衛エリアに配置する。

  混沌のキマイラは前衛エリアにラルヴァビーストがいる場合、後衛エリアから<獄炎のブレス>を使用し、<逆鱗><スネークバイト>は使用しない。万一そのままHPが規定値を下回ることがあれば<静寂の吹雪>は使用する。

 ・PCがあまりに不利な状況となった場合、GMは一度だけ後述のイベント『駆けつけた仲間達』を起こして良い。


≪混沌のキマイラ≫

 命中:10 回避:14 クリ:0

 物攻:34/44 物防:36/12

 属攻:32/42 属防:34/10

 HP:300

 速度:20 シールド:14

 弱点:6(槍、短剣、弓、火、氷、雷)

 無効デバフ:なし

 所持品:復活のオリーブ

 アビリティ:

 1~3 <獄炎のブレス>

  エリアに<火>の属性攻撃。

 4~6 <逆鱗>

  エリア(同)に物理攻撃。

 特殊 <スネークバイト>

  クリンナッププロセス直前に、手番を無視して使用。単体(同)に物理攻撃。命中に−2、ダメージに−4し、命中時、[毒Ⅱ]を与える。

 特殊 <静寂の吹雪>

  HP100以下で使用。全体に<氷>の属性攻撃。命中時、[沈黙]を与える。1戦闘1回。

  

▼PC人数による調整

・PC人数が4人の場合

 このエネミーの最大HPを400、シールド強度を18に変更する。また、<静寂の吹雪>を「HP150以下で使用」に変更する。

・PC人数が2人の場合

 このエネミーの最大HPを200、シールド強度を10に変更する。また、<スネークバイト>は使用しない。


『駆け付けた仲間達』

 窮地に陥ったPC達に暖かな光が降り注ぎ、全員のHPが[2D6+20]点回復する。

 続いてプラムの香りのミストがPC達を包み、全員のSPが[2D6+10]点回復する。

「よっ、助けに来たぜ!」

「間に合って良かった!」

「はいはーい、補給物資ですよー!」

 駆け付けるアーフェン、オフィーリア、トレサの3人。

 トレサは倒れたPCに復活のオリーブを食べさせ、気絶から回復させる。

 ⇒気絶から回復したPCは即座に光とミストによるHP/SP回復効果を得る。気絶したPCがいない場合、トレサはPC全員にBP回復のザクロを使い、BP+1する。[沈黙]が回復できずに嵌っているのであれば、沈黙の治療ハーブによる回復としても良い。

「聖火騎士の方々が『皆さんの加勢に』と送り出してくれたんです」

「あんた等の持ってきたガルデラの火対策が功を奏してな。盛り返してきたところだ」

「それじゃ、私たちはオルベリクさんを手伝うね! みんなならもう大丈夫だよね!」


 止めの一撃が混沌のキマイラに決まるとほぼ同時に、広間に落雷の如き轟音が鳴り響く。

 音がした方を見ると、オルベリクの斬撃でブリュンヒルデが膝を折ったところだ。

「……殺せ……」

「殺しはしない。生きて罪を償うのだ」

 剣を鞘に収めたオルベリクはPCの方に振り返り、

「まさか君達だけで倒してしまうとはな。おかげで彼女との戦いに専念できた」

「さぁ、町へ帰ろう!」




★エンディング


 サンシェイドへ帰ると、戦いは終わり、聖火騎士や町の男手達が邪教徒を捕縛しているところだった。

「おかえりなさい、皆さん。

 少し前に突然、黒い泥の獣達が形を失い、崩れ落ちてしまったため、皆さんが大本を断ってくれたのだと分かりました。後はこの通りです」

 と、レスター。

「全部、皆さんと助っ人の方々、町のみんなのおかげです。ありがとうございました」

「貴殿の指揮もあっての勝利だ。胸を張ってくれ、レスター」

 後ろから赤髪の聖火騎士ジネットが現れ、レスターの労をねぎらう。

「力のある者は怪我人の搬送を手伝ってほしい。治療の心得がある者はその手当を。

 気の早い連中が祝宴をあげようと、早速準備を始めていてね。怪我人の彼らも宴に間に合うよう、手当してあげなければ」


 その夜、大酒場で上げられる祝宴。サンシェイド自慢の酒と踊り子のショーで勝利を祝う人々。PC達は各々、どのように勝利を祝っているだろうか?

 少しするとオルベリクがPCの元を訪れ、

「改めて礼を言う。君たちのおかげで町を守れたと言っても過言ではないだろう。

 君たちはこれからどうするんだ?」

 と話しかけてくる。

「……そうか。

 俺はまだ倒すべき相手がいるのでな。明日にでも町を発つつもりだ。また機会があればよろしく頼む」

「おるべりくさん、ぁにしゃべってんれすか、ちぁんとろんでますくぁー?」

 と、オルベリクになだれかかるように現れるトレサ。大変酒臭い。

「それは酒だぞ! 何を飲んでるんだトレサ。お前にはまだ早い!」

「わりぃ、興味ありそうに見てたから。まさか一口でこんなになるとは……」

「アーフェーン!!

 ……あぁ、もう。オフィーリアは何処だ? トレサの介抱を……」

「オフィーリアならあそこで顔真っ赤にして踊り子と踊ってるぞ」

 額を押さえ、肩を落とすオルベリク。

 その宴は夜遅くまで続いた。


 ――翌日。

 サンシェイドの町の入口で、町人達に見送られ旅立つ[PC数+4]人の旅人。

 それぞれの目的はバラバラだが、その道が交わることもまたあるだろう。

 砂漠の日差しは今日も強いが、長い夜が明けたかのように、旅立つ[PC数+4]人の未来を祝福しているようだった。




★アフタープレイ


 アフタープレイのルールに従ってセッションを終了。

 キャンペーンはこれで終了となるため、経験点や報酬金の計算は行わない。




★最後に


 第3話公開から更に時間を頂戴してしまいましたが、お待ちいただきありがとうございました。

 「オクトラTRPGを盛り上げよう」と勢いだけで執筆・公開を始めた自身初の公開シナリオでしたが、何とかラストまで書きあげることができました。

 このシナリオによって少しでも皆さんのオクトラTRPGライフが潤いましたら幸いです。定期的にエゴサしているので、何かしらTwitterで感想など呟いてもらえたら、これに勝る喜びはありません。


 重ねてになりますが、最後までありがとうございました!

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「大陸を侵す黒炎」 夕陽 薙 @nagix04d

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