向日葵は闇夜に臨む

★はじめに

 OCTOPATH TRAVELERは株式会社スクウェア・エニックスの著作物であり、OCTOPATH TRAVELER TRPGは久保田悠羅/F.E.A.R.の著作物です。

 当シナリオは同TRPGを盛り上げるのが目的であるため、これらの権利を侵害するような行為は固くお断りします。


※このシナリオには原作ゲームにおける小事件単位のネタバレが含まれています。原作の物語における発見や驚きを著しく損なうものではありませんが、ネタバレを強く嫌うプレイヤーがいる場合はご注意ください。




★マスタリングに際して


・判定を行う際は【○○:△】と表記します。【感覚:10】なら『目標値が10の【感覚】判定』と読んでください。

・(P○)の表記があったらルールブック○ページを参照してください。

・原作ゲームの地名やキャラクターが登場しますが、各種関連書籍や個々人の信じる姿と強い齟齬を覚えた場合は、適宜「そんな感じの別のキャラクター」等と補完してください。

・当シナリオの展開や結末は適宜変更していただいて結構ですが、著しい変更はご容赦ください。




★シナリオスペック


・プレイヤー人数:2〜4人

・想定プレイ時間:4~5時間

・PCの消費経験点:「200(以下、Lv4)」or「300(以下、Lv5)」

 ※消費経験点によってエネミーデータを差し替えます。「300」未満の場合、「200」として扱ってください。




★ストーリー概要


 旅の商人トレサから武器密輸組織“黒き炎”の調査協力を依頼される。

 彼女からの依頼は「組織との会合への協力」であるが、積極的に情報収集なども行い、最終的にこの組織の首領を倒すまでがこのシナリオにおける目標となる。

 「最低限、依頼内容は遂行した」という終わり方でもシナリオ終了にはできるが、連作としてのこの事件に対するPC達の関わりはそれで終了となってしまう。




★トレーラー


 横暴な領主を打ち倒した後、商人見習いの少女は信じられないものを目にした。

 ――国家間の争いにすら一石を投じ得る、強力な爆発物の取引。

 武器を売る商人がいるのは分かる。だが、争いを……死を売る商売となると、看過することは難しい。

 とはいえ、相手はそんな商売を担う危険な組織。

 彼女には、仲間が必要だ――。


 オクトパストラベラーTRPG「向日葵は闇夜に臨む」




★NPC情報


・トレサ

 コーストランド地方の港町で生まれた、商人見習いの少女。18歳。


・ヘルミナ

 フラットランド地方アトラスダムの元・王宮錬金術師。22歳。

 病気がちな弟をゴッドハルトに攫われ、言いなりとなって“黒き炎”の商品開発を行っている。“ガルデラの火”の作者。


・ジーノ

 体が弱いヘルミナの弟。14歳。


・ゴッドハルト

 武器密輸組織“黒き炎”の首領。32歳。

 筋骨隆々とした巨漢で、試作品の大盾“漆黒の塔”を扱える唯一の人間。


・モーロック

 クオリークレストの鉱山を仕切っていた元・領主。

 原作ゲームで旅の商人トレサによって失脚させられるが、当シナリオではその失脚事件直後、かつ“黒き炎”と繋がりがあったものとして扱う。




★オープニング


 PC達は鉱山の町、クオリークレストの警備隊詰め所で、前回倒したならず者達の報告や引き渡しをしていた。鉱山の町らしく土埃や砂埃で汚れた詰め所は別の事件か何かの対応に追われているらしく、対応してくれた警備員は一人だけであった。

「ご報告ありがとうございます。強力な爆発物、ですか……そんな集団が裏取引をしているとなると由々しき事態ですね。

 こちらでも可能な限り調査などはしてみますが、今は少々立て込んでおりまして、本腰を入れられるのは当分先になるかもしれません」

 クオリークレストではちょうど前日、既得権益を振り回し横暴の限りを尽くしていた領主が突然の失脚を迎えたところ。これは原作ゲームにおけるイベントであり、当シナリオで深く追いかけるものではない。また、当シナリオ上では領主失脚の功労者は不明として扱う。


「話は聞かせてもらったわ!」

 詰め所から出てきたPC達に声がかかる。振り向いた先には、羽帽子をかぶった若い少女が一人。

「初めまして。私はトレサ。旅の商人よ。

 色々あって、私もその黒づくめの集団について調べているところなの。協力をお願いできるかしら?」

 もしPCが彼女を疑うようであれば、【理知or魅力:10】で彼女に含むところがなく、純粋に協力者を探している様子だと分かる。


「経緯は省かせてもらうけど、ここの領主モーロックがどうも武器密輸組織“黒き炎”って奴らと取引をしていたらしいのね」

 往来の真ん中で話す内容でもないだろう、と広場の片隅に移動し、屋台で買ったホットドッグをPC達に渡しながら、トレサは話し始める。

「そこの一番の売り物が“ガルデラの火”っていう強力な爆発物。貴方達が詰め所で報告してたヤツよね。ということは、その黒づくめの集団が“黒き炎”でまず間違いないと思うの」

「モーロックは5日後にリバーランドのセントブリッジ近くで、“黒き炎”のヘルミナっていう女性と密会する予定だったみたい。私はその密会場所にモーロックの使いとして行ってみるつもり。

 ただ、一人だと少し不安で……協力してもらえないかしら? 謝礼は1人1000リーフ出すわ」

 もしPCが値上げ交渉を試みるなら、【理知or魅力:12】で1人2000リーフまで釣りあげられる。

 また、もしPCが「それもまた一つの商売。武器商人と何が違う?」などトレサに迫るなら、「武器を売る商人がいるのは分かる。けど彼らが売っているのは人々が生きる手段であって、奴らが売ろうとしている争いの道具とは違う。死の商人なんて私には受け入れられないわ!」と答える。実際、モーロックはそういった使い方を企んでいたかのように手記に書いてあったという。

 PCが依頼を受けたら、トレサは

「ありがとう! セントブリッジへは5日あれば行ける。密会予定はその日の夜だから……今から出れば、向こうに着いてから体を休める時間もとれると思う。

 よろしくね!」

 と太陽のような笑顔で応える。


※トレサはモーロック邸に押し入って彼(正確には彼の護衛)を倒した後、その書斎で今回の密会予定の資料を入手した。同時にモーロックの印章も手に入れているため、これを見せればモーロックの代理と言い張れるだろう、と見込んでいる。

 PC達が事情に詳しすぎるトレサを怪しみ、追及するようなら【魅力:10】でトレサは「……そうね。協力者に秘密にするのも良くないわ」とモーロックを倒したのが自分であること、その後モーロックの書斎から手記を発見し、この事を知るに至ったことを説明する。




★ミドルフェイズ


 クオリークレストを出発し、険しい岩山を抜けて3日。陽の光をきらきらと反射する小川のせせらぎを聞きながら歩くこと、更に2日。一行は大河の川洲に築かれた町、セントブリッジに到着する。

 今は町の入り口だが、そこからでも見える大河の中洲に建てられた巨大な聖堂が印象的だ。ふと、前の事件で知り合った神官の少女が向かった先がここである、ということを思い出すPCもいるかもしれない。

「とうちゃーく! ちゃんと予定通りに着けたわね。良かった良かった。

 密会は夜だから……夕方にまたここで落ち合いましょう。それまではゆっくり休んでていいわ。私はその間に色々と買い込んでおかなきゃ!」

 と、疲れを感じさせない調子でトレサは町に駆け出していく。

※トレサはPC達を戦力として期待しているため「休んでて良い」と言って去ったが、特に長旅の疲れは大きくないため、PCも情報収集など活動して問題ない。


 ここでは「可能な限り“黒き炎”についての情報を集めておく」が目標となる。

 町には聖火騎士が多くいる他、相手の活動が武器の密輸である以上、商人に聞いて回ってもある程度の情報が得られるだろう。……が、裏組織が今なお活動できている以上、十分な情報は期待できない、とも言える。

 当シナリオは「前もって調べあげて目標に挑むのがオクトラTRPG……ではあるが、必ずしも十全に調べ上げられるとは限らない」というシナリオである。この下りをどこまでプレイヤーに説明するか、はGMに一任する。


 以下に基本パターンを記載するが、異なる提案が出た場合、基本は目標値12として判定。名案だと思ったら目標値10、無理矢理だと思ったら目標値14とする。使えそうなフィールドアクションがない場合、目標値を-2(8/10/12)しても良い。

 判定に失敗した場合、ミドルフェイズ通じて1回は再判定しても構わないが、2回以上の再判定を求める場合、「酒場のマスターや名士に200リーフ渡して、とりなしてもらう」ことで再判定可能とする(2回目以降は再判定の度に200リーフ)。


〇大聖堂関係者

 大聖堂に赴く場合、まずは一般神官と話すことになる。

 彼らには【魅力:10】のみが有効。彼らも“黒き炎”の噂は聞いているが、直接的な情報は持っていない。判定に成功すると、「皆さんのことは伺っております。こちらへ」とバルトロ司教へ繋いでくれる。


・バルトロ司教

 セントブリッジ大聖堂の上役。彼は既にここを訪れ、そして去ったオフィーリアから先の事件についての話を聞いているため、オフィーリアへの協力の謝意と共にPC達を歓迎してくれる。PC達にはその経歴・実績があるため、特に判定の必要なく彼からの協力を引き出せる。

「“黒き炎”については私も伺っております。聖火騎士を何人か調査に当たらせていますが、流石に敵も慎重で、尻尾をつかみきれずにいるのが現状です」

 と、具体的な情報は彼からも得られないが、話の最後にこの件の担当調査員である「聖火騎士シャルル」「聖火騎士ジネット」の2人を紹介してくれて、司教からお墨付きのサインをもらえる。

 

〇聖火騎士

 バルトロ司教を通さずに聖火騎士を探した場合、GMは1d振り、出目が1~3ならシャルル、4~6ならジネットに先に会うものとする。先に会った聖火騎士のテストに合格したら、情報を得た後にもう片方の名前を教えてくれる。これによってもう片方を名指しで探すことは可能となるが、お互い「相手は頭でっかち/脳筋なところがあるから、それだけでは信用ならない」とそれぞれのテストは必要。バルトロ司教の紹介がある時のみテスト不要となる。


・聖火騎士シャルル

 眼鏡をかけた、おおらかな表情の金髪イケメン。腰にはクォーツロッドを提げており、近接戦闘より後衛からの支援タイプだろうと伺わせる外見。

 彼は“黒き炎”について調べている担当騎士の一人であり、まず話を聞いてもらうために【魅力:10】で人柄を認めてもらう必要がある。

 その上で「こちらの情報を相手に知られてしまうと困るのでね、申し訳ないけど少し試させてほしい」と誘導尋問や謎かけのような問いをいくつか受ける。【理知:12】に成功するとこれらのテストをクリアでき、信用してもらえる。バルトロ司教を通してきた場合、司教のサインを見せるとテストはスルー可能(【魅力】判定で信用を得る必要はある)。

 テストに合格すると、シャルルは以下の情報をくれる。

『黒き炎には、首領の他にヘルミナという幹部がいる。フラットランド地方アトラスダムの王宮錬金術師から出奔した女性で、ガルデラの火を生み出したのは彼女と思われる』


・聖火騎士ジネット

 赤髪を高頭部の高い位置で一つ結びにした、長身(170cm程度)の女性。腰にはシルバーソードを提げており、近接戦闘に秀でたタイプだろうと伺わせる外見。

 彼女もまた“黒き炎”について調べている担当騎士であり、まず話を聞いてもらうために【魅力:10】で人柄を認めてもらう必要がある。

 その上で「情報を与えたことで犠牲者を増やすわけにもいかないのでね。悪いけど少し試させてもらうよ」と剣を抜く。【身体or敏捷:13】に成功するとジネットに戦闘能力を認めてもらうことができ、信用してもらえる。バルトロ司教を通してきた場合、司教のサインを見せるとテストはスルー可能(【魅力】判定で信用を得る必要はある)。

 テストに合格すると、ジネットは以下の情報を(悔しそうに)話す。

『黒き炎の首領はゴッドハルト。筋骨隆々な巨漢で、巨大な盾を持った重戦士。その盾には剣による攻撃や火の属性が殆ど通じず、ジネットは一度相対したが敗走を余儀なくされた』


〇商人

 町にいる商人に“黒き炎”について知らないか聞いて回ると、【幸運:12】で営業を受けたことがある商人に出会える。

『黒き炎は一般商人にもちらちらと声をかけている。敵の主な売り物は爆弾“ガルデラの火”の他に、他者に言うことを聞かせる“絆の鎖と闇の精霊石セット”、開発中の品として大盾“漆黒の塔”があるらしい』

 また、この時点でPCがまだ聖火騎士に接触していない場合、

「後は……やっぱりそういう話題なら聖火騎士に聞いてみるのが一番じゃないか? あぁ、もちろん俺はそんな奴らと取引なんてしてないからな? 勘違いするなよ?」

 と最後に言葉を続ける。


 今回、ミドルフェイズで得られる情報はシャルル・ジネット・商人からの3つであるため、これらを一通り入手出来たら「そろそろ日が傾いてきたので、買い出しを済ませて集合場所へ急ごう」と伝える。


 買い物を済ませ、トレサとの集合場所へ向かうことをPCが選んだら、ミドルフェイズの自由行動は終了となる。


 集合場所でトレサを待っていると、先にシャルル&ジネットが現れ「“黒き炎”捜査の協力者に餞別を、とバルトロ司教から」と伝言と共に荷物を広げる。彼らが持ってきたのは様々な「3000リーフ未満の武器や防具」で、PC1人につき1つ、任意のものをくれる。

 もしシャルル・ジネット・バルトロ司教の誰にも会うことなく集合場所に到達したなら、集合場所に現れたトレサが「装備も整えておきましょう! 希望があれば教えて!」と代わりに1人1つ買ってくれる展開に変更。




★クライマックス


~密会場所~


 夜。東セントブリッジ川道を南東に進んだ先。

 緊張した面持ちのトレサと共に待っていると、PCと同数の黒いローブを目深に着込んだ集団が現れ、そのうちの一人が口を開く。女性の声だ。

「こんばんは。話ではモーロックさんというオジサマが護衛の方と二人で来られると聞いていたけれど。可愛らしい代理の方に護衛も思ったよりたくさん。どうしたのかしら?」

「鉱山の方で問題が起きまして、領主様は手一杯。私が代理ということで参りました。彼らは私が個人的に雇った護衛です。……ほら、印章もちゃんとあります」

 トレサは話しかけてきた黒づくめの女性に領主の印章を見せる。対等に話しているようにも見えるが、何やら周囲の黒づくめ達はニヤニヤとこちらを馬鹿にするかのように笑みを浮かべている。この時点でPCは【感覚:14】を行う。成否の影響は後ほど。

「ところで……」

 ヘルミナは芝居がかった身振り手振りで思い出したように言葉を続ける

「クオリークレストでは数日前に領主が失脚。羽帽子のお嬢さんが絡んでいたらしいのよね。……偶然にしては……フフフ、面白い一致ね?」

「……ッ、皆! 口と鼻を!」

 時すでに遅く、周囲には異臭が立ち込める。先の【感覚:14】判定に失敗したPCは[混乱]にかかった状態で戦闘開始。【感覚】判定に成功したPCは事前に察知し、口と鼻を覆うことに成功する。クリティカルしていた場合、より早く察知して仲間全員により早く指示を出していて、全員間に合ったことにしても良い。


《戦闘》

 錬金術師ヘルミナ

 黒づくめの手下xPC数-1

 ・錬金術師ヘルミナは下記データを参照。

 ・黒づくめの手下は魔導機(火)(P258)準拠。

  弱点を4(剣、弓、氷、光)に変更。

  アビリティを以下に差し替える。

  1~3 <短剣攻撃>:単体(同)に物理攻撃。

  4~6 <闇の波動(小)>:単体に<闇>の属性攻撃。

 ・Lv5の場合、黒づくめの手下を[PC数-1]体追加。

 ・黒づくめの手下を前衛エリアに、錬金術師ヘルミナを後衛エリアに配置する。

 ・[混乱]は戦闘終了まで持続する。

 ・戦闘開始時、【理知:12】で「ヘルミナと手下の着ている黒ローブは同じ物と思われる。恐らくは耐性や弱点も似たようなものだろう」と見抜ける。

 ・前話と同様、黒づくめの手下のHPを「0」以下にする攻撃を行ったPCの任意で気絶、捕縛などの形で無力化できるものとする。プレイヤーからこの提案が出なかった場合、最初に黒づくめの手下のHPが「0」以下になった際に「トドメを刺しますか? 望むなら気絶等でも構いません」とGMから伝える。


≪錬金術師ヘルミナ≫

 命中:10 回避:10 クリ:0

 物攻:18/24 物防:14/7

 属攻:24/30 属防:16/8

 HP:100

 速度:12 シールド:2

 弱点:4(剣、弓、氷、光)

 無効デバフ:なし

 所持品:SP回復のプラム

 アビリティ:

 1~4 <スタナー>

  単体に<雷>の属性攻撃。

 5~6 <闇の波動>

  エリアに<闇>の属性攻撃。

 特殊  <先制スタナー>

  戦闘開始時に使用。自身に[最速行動]を与える。その後、自身の手番で単体に<雷>の属性攻撃。1戦闘1回。


 戦闘後、敵が一人も生き残っていない場合、彼らの足跡を【感覚:12】で追いかけ、たどり着いたアジトで追加情報なしのボス戦とする。この【感覚】に失敗した場合、これ以上組織について調べることは不可能として、トレサから「尻尾をつかめなかったのは残念だけど……私が頼んだのはここまでだからね。ありがとう、みんな。後は一人で頑張るわ」と当初話していた謝礼をもらってシナリオ終了。取得経験値は50点とし、このキャンペーンも終了となる。

 この【感覚】に成功した場合、川に沿った洞窟“果ての川岸”入口まで着いたところで、ヘルミナの帰りが遅いことを訝しんだ首領ゴッドハルトが洞窟から現れて鉢合わせ。ボス戦となる。ボス戦は後述のボス戦条件を参照し、ヘルミナとジーノがいないものとして進める。


 戦闘後、ヘルミナが生き残っている場合。

 ヘルミナはもともとアトラスダムの王宮錬金術師だったが、病気がちな弟のジーノをゴッドハルトに攫われ、彼を人質として商品の開発に利用されていた。意識を取り戻した彼女の最初の態度は「ゴッドハルトの指示を全うできなかった。これではジーノが殺されてしまう」である。

 ヘルミナに【身体:12】で強さアピールか、【魅力:12】で説得することによって、彼女を味方につけることができ、彼女のもつ情報を引き出せる。

「ヘルミナはガルデラの火、絆の鎖、漆黒の塔の作者である」

「ガルデラの火は衝撃によって爆発する爆弾で、直接戦闘で使うには不向き。洞窟を崩したり、岩山を削ったり、城壁を破壊したりするのに使うようなもの」

「絆の鎖は闇の属性によって耐えがたい苦痛を覚えるようになる呪いの装飾品」

「漆黒の塔は闇のヴェールで強化した大盾で、現在は首領のゴッドハルトが持っている試作品1つしかない。

 試作品といっても正面からの剣や槍、矢などは弾き返し、凹んだ形(GMには裏返った傘をイメージしていただきたい)が炎や冷気を集めて闇のヴェールで防いでしまう。

 ヘルミナが何れ突破できるよう、こっそり雷の属性に弱くなるよう仕込んである他、ゴッドハルトもまだ使いこなせないほど重いので、斧の重い一撃や短剣の素早い攻撃なら体勢を崩せるかもしれない」

「アジトはこの先、“果ての川岸”と呼ばれる川沿いの洞窟の奥に隠されている。病気がちの弟ジーノもその中の牢屋に繋がれており、彼が人質にされている以上、ヘルミナは表立って協力できない」

 この他、アジトの内部構造も聞き出すことができ、アジトに入ったら「ジーノの牢屋」「首領の部屋」「ヘルミナの研究室」を目的地として迷わず行けるようになる。

 なお、他の手下達が捕縛等されている場合、話すヘルミナに「お前、裏切ったら弟がどうなるか分かってんのか!」「そいつらにゴッドハルトさんをどうこうできると思ってんのか!」と野次を飛ばすばかりで、有意義な情報は口にしない。万一ヘルミナ志望・手下生存となっていたら、GM権限で手下から情報を話させても良い。


 アジトへ向かうに当たって、PCから何らかの作戦が出てこない場合、トレサから「私のことが既にバレているんだったら……私がヘルミナさんに捕まったものとして、首領の元へ。その隙に皆さんにはジーノ君を助けてもらう。……というのはどうかしら?」と提案があがる。


 以下、その展開として記述。他の手段の場合、「同程度に隙を突ける作戦なら同じ目標値」「ごり押しなら目標値+2」「より考えられた作戦なら目標値-2」など調整してほしい。


 なお、トレサは「300リーフ未満の消費アイテム」を十分に買い込んできているため、アジトに到着するまでの間なら彼女から有料でこれらのアイテムを購入することができる。



~“黒き炎”のアジト~


 ヘルミナの案内でセントブリッジ南東にある川沿いの洞窟“果ての川岸”へ。

 通路の半分以上が川に面した真っ暗な洞窟の中、水面が反射した月の光と角灯の明かりを頼りに進むと、ヘルミナが巧妙に岩の間に隠された入口を教えてくれる。

 隠し方に自信があるのか、人手不足なのか、入口に見張りなどはなく、問題なく侵入が可能。

 アジト内部も引き続き自然洞窟を活用した空間が続く。道中構成員に遭遇することもなく、矢張りそう大きい組織ではないのかもしれない。


 アジト内部の通路を進むと、まずヘルミナの研究室の前を通る。そこには洞窟に後付けされたような木製の扉が一つ。

 ヘルミナは「この中にいくつか精霊石のストックがあったはず。良ければ使って。一緒にいるところを見つかるとまずいから、私たちは先に行くわね」と、PC達に鍵を預けた後、トレサを連れて奥へ先行する。

 ヘルミナから受け取った鍵で扉を開けると、内部は雑多な研究室となっていて、少し離れたところに水面が顔を覗かせている。【理知:10】で錬金術に通ずる品々が並んでいることが分かり、その中から雷の精霊石2個を発見できる。失敗し、続けて判定したい場合はGMからのアドバイスとして「ヘルミナがどの程度時間を稼げるか。長居は禁物では?」と伝えた上で、追加判定の回数を記録しておく。


 その後はヘルミナに聞いた順路で進むことで、「首領の部屋」か「ジーノの牢屋」へ向かうことが可能。



~ジーノの牢屋~


 ジーノの牢屋は洞窟の岩肌に打ち付けられた木製の扉で塞がれている。牢屋の前には黒づくめの門番が2人(PCが2人の場合のみ1人とする)。

 門番は【身体:12】で1人を速やかに制することができる。全員を制することが出来なかった場合、門番は敵襲を首領へ告げに逃げる。判定失敗直後に「試合」「けしかける」辺りを使った場合、無力化できるとしても良い。あるいは「誘惑」で味方に引き込む等も可とする。また、後述するが門番は牢屋の鍵を持っているため、PLから提案があったら「盗む」「買い取る(400リーフ)」で鍵だけ奪い取っても良い。

 門番を制するor逃がした後、牢屋には鍵がかかっているため、【感覚:12】で解錠する必要がある。【身体:12】で破壊しても良いし、門番から牢屋の鍵を得ていたら判定なしに解錠が可能である。制した門番から貰う場合、【身体:12】による脅迫か【魅力:12】による説得となる。もちろん、「盗む」「買い取る(400リーフ)」でも可。

 扉の奥には14歳の少年ジーノが拘束されている。顔色は優れず、時折せき込む様子も見られるが、要介護というほどではなさそう。プレイヤーが心配するようなら【理知:10】で「急を要する症状は出ていないが、順当に村へ連れ帰って養生させる方が良いだろう状態」と伝える。

 扉の鍵開けやジーノの容態確認に再判定を行っても良いが、ヘルミナの研究室同様に注意した上で、再判定の累計回数を記録しておく。



~首領の部屋~


 首領の部屋に着くと、ロープでぐるぐる巻きにされたトレサと、その縄を持った状態のヘルミナが、黒い部分鎧と大盾の巨漢と相対している。周囲には[PC数]の黒づくめが2人の女性を囲んでいる。

※再判定を1回以上行っていた場合、トレサは黒づくめの手下達に痛めつけられている。

 PCが堂々と現れるならヘルミナは「ジーノ……ありがとう、皆さん!」と声を上げる。次いでトレサの周囲に緑色の風が巻き起こり、彼女の束縛を切り刻む。

「信じてたわ、みんな! ヘルミナさんはジーノ君と下がってて!

 さぁ観念なさい、ゴッドハルト! 死の商人なんて私が許さない!」

 次いでトレサは緑色の風を起こして大盾の巨漢に叩きつける。

「くっ、この小娘が……こんなもの、この盾に効くと思うなぁ!」

 ダメージは殆ど通っていないようだが、盾の凹型が風を集めたようで、男は体勢を崩された様子。

「貴様ら如きにこの黒き炎が屈すると思うな! 思い知らせてやれ、野郎ども!」

 男は狼狽を振り払うように鬨の声を上げ、大仰にもう片手に持った戦鎚を地面へ叩きつける。

※再判定を2回以上行っていた場合、トレサは自身の束縛を風で解いた後、風の一撃を打ち込むことなく「ごめん、皆……後はお願い……」とその場に崩れ落ちる。

※再判定を1回行っていた場合、トレサはゴッドハルトに風の一撃を打ち込んだ後「ごめん、皆……これで限界、みたい……」とその場に崩れ落ちる。

※ヘルミナ生存、かつジーノを救出せずにここまで来た場合、ゴッドハルトはジーノを人質にとり、ヘルミナに後方支援を強要する。


《最終戦闘》

 “首領”ゴッドハルト

 黒づくめの手下xPC数(+α)

・ジーノの牢屋で門番を取り逃がした場合、それと同数の黒づくめの手下を追加。

・全て前衛エリアに配置する。

・黒づくめの手下は“密会場所”で戦闘する黒づくめの手下と同様。

・ヘルミナ生存、かつジーノを救出していない場合、後衛エリアに錬金術師ヘルミナを追加。これも“密会場所”の錬金術師ヘルミナと同様。

・戦闘開始時点でゴッドハルトの弱点「風」は開示され、シールドも1点減少状態でスタート。再判定2回以上でトレサが倒れている場合、これらは全て無しとなる。

・戦闘開始時、トレサが

「私も共に戦うわ! もし必要なアイテムがあったら言ってね。そんなに高い物は常備してないけど、ツケでいいから!」

 と参戦する。

 トレサは敵の攻撃の対象にならず、各ターンの終了時に「風による攻撃で敵のシールドを1個減少」か「300リーフ以下の消費アイテムを1つだけ任意のPCに渡す(戦闘後に清算)」を行ってくれる。

※再判定1回以上でトレサが倒れている場合、この参戦も無し。


≪“首領”ゴッドハルトLv4≫

 命中:10 回避:12 クリ:0

 物攻:28/34 物防:30/8

 属攻:20/28 属防:28/6

 HP:200

 速度:16 シールド:12

 弱点:5(短剣、斧、雷、風、光)

 無効デバフ:なし

 所持品:復活のオリーブ

 アビリティ:

 1~3 <薙ぎ払い>

  エリア(同)に物理攻撃。

 4~6 <シールドバッシュ>

  単体に物理攻撃。ダメージに+4し、命中時、[恐怖]を与える。

 特殊  <錯乱の香+蹂躙の構え>

  戦闘開始時に使用。全体に属性攻撃をし、命中時、ダメージの代わりに戦闘終了まで持続する[混乱]を与える。

  また、そのターンの終了時、更にエリア(同)に物理攻撃。1戦闘1回。

 特殊  <テラースイング>

  HP80以下で使用。全体に物理攻撃。命中時、[恐怖]を与える。1戦闘1回。

  

▼PC人数による調整

・PC人数が4人の場合

 このエネミーの最大HPを250、シールド強度を15に変更する。また、<テラースイング>を「HP100以下で使用」に変更する。

・PC人数が2人の場合

 このエネミーの最大HPを150、シールド強度を8に変更する。また、<テラースイング>は使用しない。


≪“首領”ゴッドハルトLv5≫

 命中:11 回避:13 クリ:0

 物攻:32/39 物防:32/9

 属攻:22/30 属防:30/7

 HP:250

 速度:18 シールド:12

 弱点:5(短剣、斧、雷、風、光)

 無効デバフ:なし

 所持品:復活のオリーブ

 アビリティ:

 1~3 <薙ぎ払い>

  エリア(同)に物理攻撃。

 4~6 <シールドバッシュ>

  単体に物理攻撃。ダメージに+4し、命中時、[恐怖]を与える。

 特殊  <錯乱の香+蹂躙の構え>

  戦闘開始時に使用。全体に属性攻撃をし、命中時、ダメージの代わりに戦闘終了まで持続する[混乱]を与える。

  また、そのターンの終了時、更にエリア(同)に物理攻撃。1戦闘1回。

 特殊  <テラースイング>

  HP100以下で使用。全体に物理攻撃。命中時、[恐怖]を与える。1戦闘1回。

  

▼PC人数による調整

・PC人数が4人の場合

 このエネミーの最大HPを320、シールド強度を15に変更する。また、<テラースイング>を「HP150以下で使用」に変更する。

・PC人数が2人の場合

 このエネミーの最大HPを180、シールド強度を8に変更する。また、<テラースイング>は使用しない。


※PC達が全滅した場合、止めを刺される寸前で「そこまでだ!」と聖火騎士ジネットとシャルルが現れ、更に多くの聖火騎士が雪崩れ込んでくる。

 シャルルは満身創痍のPC達に回復魔法をかけながら「失礼ながら君たちを遠くから観察させてもらっていたんだ。お陰で奴らのアジトを見つけられた。ありがとう」と礼を告げる。

 ゴッドハルト達は聖火騎士に囲まれ、激しく抵抗するもやがて力尽き、捕縛される。

 傷の治療を受けたPC達は彼らと共にセントブリッジへ帰還し、エンディングへ。


 戦闘後、改めてゴッドハルト達の処遇をプレイヤーに問う。

 トドメを刺そうとするか、縛り上げている最中に「驚いた。まさか君達だけで制圧してしまうなんて……」と後方からシャルルの声が届いてくる。

 続けてシャルル・ジネット含め多くの聖火騎士が首領の部屋に入ってきて、“黒き炎”の構成員を次々に捕縛していく。

「失礼ながら君たちを遠くから観察させてもらっていたんだ。まさかアジトを暴くどころか、君達だけで解決してしまうなんて……恐れ入ったよ」

 部下に指示を出すジネットの後ろで、彼らを見守りながらシャルルがPC達に声をかける。

「話はヘルミナ氏から概ね聞いたよ。大丈夫、弟くん(トレサが倒れている場合はトレサも)もちゃんと保護してある」

 捕縛作業が終了し次第、全員でそろってセントブリッジへ帰還となる。

 帰り道、最終戦闘でトレサに持ち出してもらった消費アイテムの代金を清算してエンディングへ。



★エンディング


 セントブリッジ大聖堂でバルトロ司教から直々に感謝状をもらうPC達とトレサ。

 次いで謝礼金として以下の額を受け取る。


・順当にPCがゴッドハルトに勝利した場合:1人4000リーフ

・トレサの謝礼を2000リーフに値上げさせ、ゴッドハルトに勝利した場合:1人3000リーフ

・ゴッドハルトに敗北、聖火騎士に制圧してもらった場合:1人2000リーフ


 贈呈式を終え、大聖堂から出てくるPC達とトレサ。ジネットが見送りに来てくれる。

「今回は協力ありがとう。腕前をテストなどと……烏滸がましいにも程があったな。貴殿らを目標に、鍛錬を続けていこうと思う」

 と、紅潮した頬を掻きながら礼を述べるジネット。(PCがゴッドハルトに敗北した場合、ゴッドハルトを打ち倒したのはジネットとなり「雪辱を晴らすチャンスをくれてありがとう」という台詞に差し替える)

「捜査協力ありがとう。一気に組織壊滅まで行けるとは思わなかったわ!

 あなた達はこれから何処へ向かうのかしら? 私はね、“大競売”に参加するため、ヴィクターホロウへ商品を探しに行くのよ!」

 と、先々への希望に目を輝かせているトレサ。

「……っと、イケナイイケナイ。私からの謝礼を渡してなかったわね。ハイ!」

 トレサから1人1000リーフの謝礼をもらうPC達。値上げ交渉していたら1人2000リーフ。

「……良かった! まだ発っていなかったか!」

 トレサからの謝礼金受け渡しが終わるが早いか、シャルルが大聖堂から慌てて駆けてくる。「別れを言うのが間に合ってよかった」にしては鬼気迫る表情。肩を激しく上下させながら、シャルルは言葉を続ける。


「ゴッドハルトが供述したんだ……」


『仲良しこよしの平和を守りたいなら、遅かったな。既にガルデラの火の殆どはサンランドのガルデラ教団に売っ払った後だ』




★アフタープレイ


 アフタープレイのルールに従ってセッションを終了。

 ゴッドハルトを倒し、バルトロ司教から感謝状を貰えば、全てのPCは100点の経験点を得る。

 ゴッドハルトに敗北し、聖火騎士に制圧してもらったなら、全てのPCが得る経験点は50点となる。

 報酬はバルトロ司教からの謝礼とトレサからの謝礼を足して5000リーフになるはず。

 「Lv5」プレイの場合、以下のどちらかの処理とする。

 ・得られる経験点を「120点/60点」に変更、能力値の上昇にのみ使用できるものとして、次の最終話を迎える。

 ・最後のシャルルの下りはカット。“黒き炎”を壊滅させてハッピーエンドとする。




★最後に


 第2話から少々お時間を頂戴しましたが、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 当連作シナリオは次の話をもって終了とさせていただきます。

 最終話は「消費経験点:300(Lv5)」だけを想定して作成する予定です。経験点が300に満たない場合、経験点10=200リーフとして総経験点:300まで変換可能としていただいても構いません。キャンペーンを運営していただいているGM様に一任いたします。

 思い付きで書き始めたキャンペーンシナリオですが、最後までお付き合いいただけますと幸いです!

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