とあるTRPGプレイヤーの卓その5
国見 紀行
未成年はお断り? つけたし設定にご用心!
「とりあえず、ログアウトできるようになったわけだし、これでシナリオクリア、と!」
んなわけないのが、俺のシナリオだっつーの。
「ところが、皆さんは交換コードを公式ホームページで入力するも、一向にカード応募フォームに移行しないことに気が付きます」
「えー、めんどくさい」
フレイア飯田がもうダイスに手を伸ばすことを諦めようとしている。
「ここで終わったら流石にシナリオとしてどうだよ」
「確かにそうだけど、ここからどうするんだよ」
マック田中も少し飽きてきている。まあ、ナゾトキも戦闘もないし、そりゃそうかもしれんが。
「とりあえず、君たちはもう一度ゲームの世界へ入る。そこで公式からアナウンスが入る。
プレイヤーの皆様へ
今回のプレリリース体験会にていくつか不具合が発生しています。交換コードの発行につきましては、ゲーム内でのクエストをなんでもよいのでクリアしていただければ発行フラグが機能します。ぜひパーティを組んでいただいてこの世界をお楽しみいただければ幸いです。
というものだった」
「ははーん、バグね」
バグと言うか、シナリオの仕様だ。
「クエストというか、依頼をこなす感じなのでしょうか?」
「まあセイイチ黒田の言う通り、サンディ含めた全員でギルドに登録して提示クエストを何かクリアしてくれ。クエスト一覧はこれな」
俺はあらかじめ用意しておいたクエストをプレイヤーに配る。
「……なあ、なんだか全部難易度高くね?」
「そりゃ、今回のシナリオというか、キャラ設定に沿った内容だからな。言っとくけど、結構簡単なものばかりだぜ」
「それなら、どれを選んでも変わらないということですわね。えっと、これでよいのではないでしょうか?」
アレックス佐藤さんが一番上にあったクエストを拾い上げる。
「『ゴブリン退治』ね、まあオーソドックスなやつだし、無難かな」
「えー、つまんない却下。こっちがいいわ!」
「『ユニコーンの捕獲』!? 処女いないと無理じゃない?」
「何言ってるの! 私がいるじゃない!」
そういえばメンバー全員の年齢を確認してないな……
「そういうフレイア飯田のキャラ年齢は何歳だよ」
「ぴちぴちの18歳!」
「……えー、ベタすぎて面白くねーよ」
お、珍しい。マック田中が突っ込んできた。
「そうですね、せっかくですし1D100で決めてみては?」
「はあ!? なに馬鹿なこと言って……」
「ははあ、怖いのか?」
まあこういえば絶対に乗ってくるのが飯田だ。
「余裕よ! 一ケタが出ないように祈っておきなさい!」
カラコロン。
「……ぷっ」
止まったダイスの目を見て思わず吹き出す。
「は…… は……」
固まる他のプレイヤー。
「はちじゅう、はっさい」
逆に妄想がはかどる。逆に人物像がくっきりくる。
「88歳の処女! ユニコーン来るのか?」
来るだろ、そこまで守り通した乙女なら迷わず来るわ。
「逆に考えましょう。エルフなら88歳は人間で言う10代ぐらいですよ」
「あ、いい! それいい! それで行こう! ていうかみんなもダイスで決めなよ! 私だけずるい!」
いつの間にか他のメンバーも年齢をダイスで決めることに。しかし……
「俺、48歳……」
「ガンマンですのに9歳はちょっと鍛えすぎなのでは?」
「学生が71歳というのは笑えないですね……」
サンディだけぎりぎり26歳となったが、このさきが不安な高齢化パーティとなってしまった。
もしかしたら、まともな人間がいないだけで割と普通なメンバーかもしれないが……
とあるTRPGプレイヤーの卓その5 国見 紀行 @nori_kunimi
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