第15話(終)
神様は静かに私の事を見ていた。
ちょっと慰めてくれるような素振りしてくれてもいいんじゃないかな、とか思ったけど八つ当たりになるからやめておいた。
神様がいつも通りだったからかちょっと経ったら落ち着いてきた。
「ぐすっ、…ずッ、ふう…。」
『落ち着いたかの?』
「はい。すみません。取り乱しました。」
『まぁ、気持ちは分からなくもないからの。仕方ない。』
「落ち着いてきたので仕事に戻ります。」
『あー、うん。でもちょっと待ってくれるかの?』
「何でしょうか?」
『さっきの一連を見てきたからではないんだよ?そうじゃないんだけど、そろそろアズも転生してもいいかなって思っているのだけどどうかの?』
「え…?え!?まだ天使になって10年たってないですよ!?」
『知ってる知ってる。でも、いいかなって思ったのだけどどうする?』
「少し考えさせてください。」
『わかった。』
どうしよう、突然のこと過ぎて全く頭が追い付いてないや。
さっきセラが転生してすぐみたいなものじゃん。
え、夢?
私も転生したらもちろん記憶はなくなるんだよね。
それでもあと数年間待ってから転生するのと今転生するのでは、セラと再会できる確率は今の方が高い気がする。
門をくぐってからどれぐらいで転生が完了するかわからないけど、後より今の方がいいに決まってるよね。
『決まったのかい?』
「はい。」
『聞こうか。』
「転生したいです。」
『そうか。天使の時の記憶はなくなるがいいかい?』
「はい。」
『わかった。さっきの魂君の担当業務が終わってからすぐに転生に取りかかるとしようか。』
「わかりました。」
その後天使としての最後の仕事を終え、再び神様に会いに行くと、すでに転生の準備はされていた。
『私の大事なアズに転生後に贈り物を授けるからの。』
「贈り物ですか?」
『あぁ、言えないが転生したら楽しみにしてるといいよ。』
「わかりました。」
『さぁ、門をくぐりなさい。』
「今まで育ててくださりありがとうございました。」
神様の方を向くと、少し寂しそうな顔をしてた…。
でも贈り物って何だろう?
転生したら記憶なくなっちゃうのに。
セラとちゃんと会えますように、なんて願うのもおかしいかな。
「はぁ、大学生になったから一人暮らししようって家を出てきたのはいいけど…やっぱり寂しいな。」
お母さんとお父さんにはいっぱい甘やかしてもらったから、大学生活はちょっとだけ頑張ってみようかなって思ったけど…
まだ1か月も経ってないけど家が恋しいや。
近所の地理把握に散歩してみたけど…ここどこだ?
これって公園?
最近は公園も少なくなってきたし、遊具も規制が厳しくなってきたから遊ぶ人少なくなってきてるんだよね。
ここは珍しく土管がある!!
「うちってもしかして、ここ来た事ある…?」
いやいやいや!!
生まれてから一回もこの町に来たことないからそんな事ありえない!
え、何この懐かしい感じ。
土管の上によく登ってた、かも?
ちょっとでも高さあると眺めいいって感じする!
「わーーーーーーい!」
「うるさい。」
「!?え、なに!?」
なになになに!?
土管の中から声がした…?
「いきなり叫ばないでもらえます?」
不機嫌そうに男の人が土管の中から出てきた。
土管の中にいたのってぐらい思ったより背が高い…。
てかどうやって中にいたのさ!
顔はかっこいいけど、短めの黒髪マッシュにだぼだぼの服だし、見た目的に同い年か2,3年の先輩って感じかな。
「ごめんなさい。でも公園なんて久しぶりに見たからつい。」
「あんたここの人じゃないの?」
「はい。引っ越してきたばっかりで…。」
「そ、俺ここで寝てるから探索するなら静かにしてね。」
「わかりました。」
公園を何周化したけど、絶対ここの公園来た事ある。
でもお母さんに聞いてみたけど行ってないっていうし…。
すごい懐かしい感じがするんだよね。
てか、さっきから土管の中にいる男の人の視線がすごいんだけど!?
なんとなくこの人からも懐かしい感じがするから余計気になっちゃう。
「私、何かしました…?」
「いや、別に。さっき叫ばれた以外は何も。」
「でもすごい見てくるじゃないですか。」
「別に、この公園に人が来るなんて珍しいだけ。」
だめだ、やっぱりこの公園もそうだけど、この人にもあったことある気がする。
気になりすぎる。
「あの、変な事聞くんですけど、どこかでお会いしたことあります…?」
「はぁ?何言って……!!ってあんた何で泣いてるんだよ。」
「え…?ほんとだ、何で?」
今、なんかすごく嬉しかったというか、寂しかったというか、こう胸がぎゅうぅって締め付けられる感じがしたと思ったら泣いてたんだよね。
なにこれ…。
「お前と会ったことある…のか?」
「セ、ラ…?」
「は?俺はセラなんて名前じゃなくて、聖来だっつうの。セラなんて名前じゃ……ア、ズ?」
「私だってアズなんて名前じゃなくて梓凪って名前だ、しって…うそ、嘘だよ…なんで?だって、記憶はなくなるんじゃなかったの!?」
「まじかよ、嘘だろ…アズと会えた。」
アズって名前を呼ばれた瞬間、天使の時の記憶を一気に思い出した。
天使の時の名前がアズだったこと、魂として出会った彼の名前がセラだったこと。
他にも、お互い好き同士で転生したら会う約束をしてたことも全部思い出した。
「本当に会えた!記憶ないのに会えると思ってなかったよぉ~。」
「俺はここでずっと待ってたんだけど?記憶ないながらにここにいなきゃいけないと思ってさ。」
「うん。ありがとう。私もずっと探してたんだと思う。」
多分だけど、神様が最後に行っていた贈り物ってこれなのかな?
なんとなく近づけてくれて、話したら記憶が戻るなんて最高の贈り物だ。
次に神様に会ったらお礼を言わないといけなくなっちゃった。
「俺魂の時はダメだったけど、もう離さないから。」
「大丈夫。うちももう離れない。」
「思ったけど、なんかそのセリフダサいわ…。」
「ひどい自分から言ったのに!」
「まぁ、これからもよろしくな。」
「こちらこそ、よろしくね。」
―END―
読んで頂きありがとうございました!
空白の期間がかなりありましたが完走しました。
面白かったら♡やコメント、☆などお願いします。
また次の作品でお会いできること願っています(*´ω`*)
天使が導かせていただきます! 銀じゃけ @silver_syaaake
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