幸せ
2年後。
「マナ、めっちゃ綺麗。」
「…へへ、ありがと。」
今日は、私達の結婚式。
私は、柊真実から、南真実になった。
ちょっと名字と名前のバランスが悪い気がするけど、それがくすぐったくて、心地いい。
ぼんは、今日はポケットがないので、ふわふわ浮いている。
「じゃあ、また後でね。」
「うん。」
春吉さんは部屋を出ていった。
「んっきゅ。」
「ふふ、ぼん、私綺麗?」
「んー。」
「おい。」
私はぼんを睨んだ後、ぼんを手のひらに迎え入れた。
「…ぼん、ありがとね。ぼんがいたから、変われたんだよ。ぼんと出会えて、本当に良かった。私、すごく幸せだよ。」
「…んっきゅ!」
ぼんは私に頬擦りした。
「どっぼ!」
「ん?」
「…きゅ!」
「ふふ、何よ。」
ぼんは、手のひらからふわふわと飛び立つ。
そして窓の外へ出た。
「あっ、ぼん!そっちは外だよ!危ないから戻っておいで!」
「…どっぼ!」
「…ぼん?」
ぼんは、ニコッと笑い、ふわふわと飛んで行ってしまった。
「ぼん!?ぼん!…ぼん…。」
––コンコンッ。
「失礼致します…真実様!?」
式場スタッフが、泣き崩れている私に駆け寄る。
「す、すみません…すごく、今日が嬉しくて…」
久しぶりに、取り繕った。
「そ、そうでしたか…。お化粧、直しましょうね。」
「…はいっ。」
ぼんは、もう戻ってこないと悟った。
すごく悲しくて寂しい。
でも、きっと私が幸せになったから
ぼんは役目を果たして去っていったんだ。
だから、私はこの幸せを大切にして生きるよ。
それからしばらく経った冬。
「美味しかったねー!あのお店!」
「そうだね!また行こっか!」
今日はクリスマスイブ。
私は、夫の春吉さんと食事の帰り。
とても幸せに暮らしている。
「…?」
向こう側に、背中を丸めて俯きながら歩く若い女性。
不幸丸出し。昔の私を見てるようだ。
ふと、彼女のコートのポケットに目がいく。
白いふわふわが、モゾモゾとポケットの中へ入っていった。
「…ぼん!」
思わず声が出た。
「ん?」
春吉さんが、反応する。
「あ…いや、なんでもない!」
…そっか。次はあの子を幸せにしてあげるんだね。
「…えいっ。」
私は春吉さんのポケットに手を突っ込む。
「ふふ、どしたの。」
彼はポケットに手を入れ、私の手を握った。
「へへ、今日はこーやって帰るっ。」
私はぼんに想いを馳せながら、笑顔で家に帰った。
今度は、どんな名前をつけてもらうのかな。
ふわふわポッケ いと @shima-i
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