生と死の狭間で流れ光る、名もなき料理の物語。

死ぬ前に食べたいものは? ……誰しも一度は遭遇したであろうこの問いに、改めて向き合うことになる、そんな作品でした。

読む人によって、最後の受け取り方は異なると思いますが、浮世と隠り世の狭間で救われるものは、その両者を渡るもの……魂のみに他ならず、ただ、それでも救いはあったのだろうと、私は思います。

また、考えてみると、世の中には名もなき料理の方が多いのではないかとも思います。

例えば一口にカレーと言っても、人によって思い浮かべるカレーは千差万別で、時には、それに名前を付けている方もいるかと想いますが、視覚、味覚、嗅覚、さらに歯触りの触覚、料理でできるまでの聴覚と、五感の全てで感じるものが料理であり、そのどれか一つでも欠けていたら、それは異なる料理になるのだろう思います。

なので、死ぬ前に食べたいもの……そこに思い浮かべた料理は、その人の人生そのものといってもいいのかもしれませんし、それを最後に思い出せたことは、絶望ではなく希望、幸せだったのではないかとも思います。

素敵な作品を、ありがとうございました!