13話 悪魔召喚士2人

「ここがベルディモードの街」と、あたしは門をくぐり、上を見上げる。

大樹が聳えている。いつからあるのか分からないけれど。

大樹の根元に腰を下して、あたしはゆっくりと目を閉じた。

悪魔召喚士ならベルディモードを訪れるといい。という噂を聞いてやって来た。何でもここには、始祖の悪魔様がいるという噂だ。始祖…はじまり。

それって最後の御方様とか、最後のかみさま…死の天使、あたしは最後のかみさまって呼び方が好き。

不思議と眠りにつく。あたしが呼べる悪魔は人型をした精霊様。どうしてあたしにそんなすごい悪魔様が呼べるのか分からないけど。

今も4体の精霊様たちがあたしの周囲をウロウロして見張ってくれている。あたしは深い眠りに落ちて行く。


「ここが良質の贄がいるとウワサのベルディモードの街かぁ」と、オレは路上で寝ている女を見つける。年格好からしてオレと同い年か。ただ紫の髪の毛をしている。肩の当たりで切っていて、胸当て一つ、黒いスカート…おいおい、無防備すぎだろ。で、カバンを持っている。どうやらこいつはオレと同じ旅人のようだ。住民じゃない。良質な贄は住民の方だ。こいつに用は無い。

オレはさっそく山羊の顔をしていて、二本の角がある悪魔、ヴォルフスを呼び出した。首から下は熊の体毛だ。今まで贄を10体ほど食わしてここまで育てた。ここの住民を食べさせれば、人型にまで進化するかもしれねぇ。楽しみだ。

おっ、さっそく住民が歩いて来ているじゃねぇか。住民の特徴は赤く目が光っている事。うん、間違いねぇ。

「ヴォルフス、食べろ」

ヴァルフスは動かない。どういうわけか、ガタガタブルブルと震えている。

「どうした、ヴォルフス?」と、オレは緑の短い髪をかきながらヴォルフスに近づく。「おい、ヴォルフス!」と、名前を呼ぶ。

焦点は定まって無く、ガタガタブルブルと震えている。

「…ドルクマはこの霊圧が感じられないのか?無能なのか?」と、ヴォルフスは訳の分からない事を言いだす。

「食べないなら契約解除するよぉ…いいのぉ?」と、オレ(ドルクマ)は聞く。

「あーもう無理だ。われらはすでに狙われている。もう、どうあがいても」

「あん?誰に狙われているんだよ。ガタガタ言うなよ、お前悪魔だろ?」

<リティアが食べるわよ>



念話???

悪魔召喚士は自分の魂よりも上位の悪魔には念話で話されると、習った。

上位???



あたしは突然の声に起きる。うれしい……。

キョロキョロと周囲を見渡す。どこにおられるのか。


オレは突然の声に理解が追い付かない。

上位の悪魔に遭遇した時はどうすればいい?

先生はなんて…

「上位の悪魔に出遭ったら……逃げろ、全速力で」


そうだ、逃げろだ。

「ヴォルフス、オレを街の外へ投げろ!」

<チェックメイト>


え???

ヴォルフスは黒い何かに喰われて、すでに地面に沈んでいく途中だった。

ヴォルフスの顔だけが、上を向いて、手を伸ばして…沈んでいく。


オレは走った。

走ったはずだった。

一つ目の闇の精霊シェイドが、オレの足を地面に沈めて行く。

「あなた、最後のかみさまに喧嘩を売るなんて…悪魔召喚士失格ね。あたしはブリュンヒルデ。あなたを最後のかみさまに渡してあげる」と、紫の髪をしたブリュンヒルデは言う。

「何言っているんだ!?始祖の悪魔の話なんかしてんじゃねぇ!オレはドルクマ。こんなところで死ねるかよ。われ、契約を欲する、闇の精霊シェイドよ、われの足を贄として、この束縛を解かん!」と、オレは叫ぶ。

オレの叫びは通じたのか、太腿まで消えて、オレは解放された。

「あなた…本当に向いてないわ。召喚士……。もう会う事も無いと思うけど」

そう言いながら、ブリュンヒルデはオレの足を再生?してくれた。

「はは、何だ。身体欠損を治せるなんて…スゲーな。おい、お前。おいってばよ」

ブリュンヒルデは背を向けたまま街の奥へ消えて行く。消えて?行く?


何だどうして見えなく……。

<わらわを誰と思うかや>


「はっ、上位の悪魔だから何だってんだ?今すぐ契約してやるよ」

<何を持って契約するや>

「この街の住民全部だ。文句ねぇだろ」

<なーに、そなたの心臓だけでよい>

え???


何だ?オレがいる?


白い手に心臓をえぐられて、握り潰された。

口から血を吐いている。

何だこれ?


あれ?後ろに大きな口を開いた狼がいる。

どうして分かる?

身体…いや、今のオレは何だ?

どうして食べられるのを見ているんだ。

あ、オレのオレのからだぁあああああ


あ、暗い、暗い、暗い。寒い、寒い、寒い

嫌だぁ


嫌だぁあああああああ


「タナトス、千年牢獄にお客さんだ。今宵は良い絶望のワインを待っておるぞ」

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