千佳と共に駆ける、元気な八十八歳の八十八夜。

大創 淳

第五回 お題は「88歳」


 ――駆け抜ける青春は、温い春風と、今も爽やかな挨拶の中にある。



 緑の香りを感じながら、このカントリーロードを駆ける。今はもう、朝のルーティーンとなっているジョギング。僕は喩え……八十八歳になっても元気に走っていると思うの。


 今日も、元気に走っている……

 お爺ちゃん。御年八十八歳と言った。


「やあ千佳ちかちゃん、おはようさん」と、颯爽たる挨拶。この風に乗じて。


「お爺ちゃん、今日も元気だね」「まだまだ千佳ちゃんには負けないよ」と、展開する会話も風の中へ。緑の香りを感じながら嬉々として、並んで暫しの間を共に走るの。


 ペースはね、僕が少しハイになるくらい。……つまり速いペースなの。


 僕の呼吸は、アップする。それでお爺ちゃんは「もう少しゆっくり走るかい?」と訊いて、僕は頷くコクリと。そうやっていつも僕にペースを合わしてくれる。


 お爺ちゃんには、お孫さんがいると……


 いつの日か聞いたことがあったの。でも、その家族は疎遠……もう十年ほど会っていないと言っていた。お孫さんは女の子。僕と同じ年と言っていたの。お爺ちゃんが毎朝ジョギングを続けている理由は、元気を維持するため。だから、その思考はいつもポジティブなの。僕の方がいつも元気を貰っているほど……今はもう、お友達の域にあるの。


 お爺ちゃんから見れば、

 ……僕は、お孫さん的存在かも。その女の子と重ねて見えるのかも。……自意識過剰かな? 少々、あくまで少々……言葉にはしないけど、いつの日か、お爺ちゃんがお孫さんに会える日を僕はイメージし、願っている。そして八十八といえば米寿の他にも、夏の季節は八十八夜といわれている。やはり夏なの。……そんな予感が過る、今この時。



 ――きっと会えるよ、お孫さんに。


 僕は確信しているの、今この時に過った、その予感を。八十八歳の八十八夜に。



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千佳と共に駆ける、元気な八十八歳の八十八夜。 大創 淳 @jun-0824

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