今日から「推し」と暮らします。

@mitarasi198

第1話 毎年変わらぬ誕生日

幼い頃家族と夜景を見た時、とても感動したことを覚えている。

街を照らす眩い光がまるで夜空に浮かぶ星屑のようだと。

この光のようになりたいと強く思った幼き日の私へ。今貴方はその「光」の一部になっています。




「ふぁぁぁ…眠い…」


そう呟きながら自動販売機にあった缶コーヒーを一気飲みする。

ちらっと腕時計を見ると、午後9時をまわったところだった。


「…10時には帰れるかな」


周りを見渡すとオフィスはがらんとしている。

この時間まで残っているのは私だけだ。

まぁいつもの事なのだけど。


疲れきった身体に鞭を打ち、書類と睨み合う。

何十枚とある書類の修正箇所を探し修正する。

全ての書類に目を通し終わった時、時刻は10時50分を指していた。


「やば、帰らないと」


今日は小さな楽しみがある。

心を躍らせながら会社を後にした。




帰宅すると同時にお風呂に入り髪を乾かす。

急いで冷蔵庫からおつまみと缶ビールを出し、小さなテーブルに並べる。そして。


「よし」


スマホのアプリを起動した。

画面に映る超絶美少女が話しかけてくる。


「「お誕生日おめでとう。今年も良い年になるよう願っている。」」


「あーーーやっぱリリウム様素敵過ぎる」


超絶美女…リリウム・マグオートは私の推しである。

スマホゲーム「悪魔と天使の鎮魂歌」、通称「悪天」に登場する悪魔界の女王でありながら天使の世界で生きていく美女。

格好良い見た目とは裏腹におっちょこちょいな部分があり、毎年人気ランキング上位に並んでいる。


リリウム様にお祝いしてもらいながら晩酌するのが、誕生日恒例なのだ。ただ…


「ずっと1人は寂しいな」


そうボソッと呟いた瞬間、酔いが回ったのか眠気に襲われテーブルに突っ伏したまま寝てしまった。


眠りにつく寸前、スマホの画面が何度か点滅した気がした。


























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