『一緒にいたい』じゃ、ダメですか

CHOPI

『一緒にいたい』じゃ、ダメですか

私は『好き』というのがよく、わからない。

いや、わからないというのは噓かもしれない。

例えば芸能人に対する『好き』はそこそこ感じる。

イケメンは好きだし、見ていていいなーって思う。

でも別に、それは伝わらなくて当たり前だし、伝えたいって思ったことも無い。

だからよく話題に上る『好きな人の話』や『恋愛の話』がかなり苦手だ。


そもそも友人に対する『好き』って気持ちと、

『恋』をした相手に感じる『好き』って気持ちの差があまりわからない。

一度だけ女友達に相談したら、

「んー、上手く言えないけど。

 ドキドキするし、とにかく『大好きー!』『愛してるー!』ってなる。」

って言われた。

相談した自分がアホらしく思えて、以降恋愛相談は聞く専門になった。



ある日のことだった。

最近仲良くなった男の子と二人、話して解散した後のこと。

いつも一緒にいる女友達がその様子を見ていたらしい。

「え、さっきの誰~?ってか男子と二人でいるの、珍しいね」

「……そう?最近よく話してると思うんだけど」

「あれ、ほんとに?気が付かなかった。え、好きとかないの?」

そう聞かれてちょっとだけ考えてみる。

「……そもそも私、自分が好きな人としか話さないと思うよ。

 嫌いな人とか、どうでもいい人とかと一緒にいるのは疲れるから好きじゃない」

そう言うと女友達が少し笑って

「あれ、今私の事『好き』って言った?」

と聞いてきた。

「ま、うん。そういうことになるね」

「キャー、嬉しい!!私も大好きー!!」

そう言いながら抱き着いてくるのをハイハイ……、と受け止めつつ流す。

「え、冷たいっ!」

「いつもでしょー」

普段通りのやり取り。

その居心地が良くて、この子のことを『好き』と思うのは本当のことだ。

「恋愛としてどうなのよ、あの男の子のこと」

「……恋愛、かぁ」

考えて、考えて、でもやっぱりわからない。

「前にさー、好きってどんな感じ?って聞いてきたでしょ、アンタ」

「あ、うん」

「あの男の子にさー、感じない?なんかこう……私に対するのとは違う……」

「うーん……」

好きか、嫌いか、だったら『好き』。

じゃあ、他には……?

「……もうちょっと」

「ん?」

「もうちょっとだけ、話していたいなー、とか」

「お?」

「もうちょっとだけ、今より仲良くなれたらいいなー、とか」

「うんうん」

「もうちょっとだけ、私のことも知ってほしいなー、とか」

「それで?」

「……ほんとはもうちょっと、一緒にいたいな、とか」

それを聞いた女友達は満面の笑みで私に言った。

「それ!もうちゃんとあの男の子の事『好き』じゃん!」

それを聞いて、あぁ、これが『好き』でいいんだと分かった途端。

「……『一緒にいたい』じゃ、ダメですか」


(その後女友達には「アンタひねくれすぎ!!」って叫ばれた)

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