第16話動機の鑑定

「お、お兄ちゃんどうして。なんで……」

北園友子は崩れ落ちた。

僕は調べ上げた2人の過去を話した。

「寺山さんと北園さんは兄妹ですね。そして、15年前自殺した大島明さんの子供さんです。あなた方は別々の親戚に引き取られてましたね。だから、名字が違うんです。ここまでいいですか?」

2人は黙っている。

「続けます。あんた方は何らの理由で平坂先生と山下看護師長がグルで病院の金を使い込み、そしてあなた方の父親、大島さんに罪をなすり付けた事を知り犯行に及んだんだ」


「わたしは父親の自殺の真相が知りたくてこの病院で勤務し始めました。10年目で、アイツらが話しているのを耳にしました。だから、殺そうと思ったんです。その時、兄がガードマンとしてこの病院で勤務する事を知って、計画を立てたんです。だけど、お兄ちゃんを巻き込みたくなかった」

寺山は涙を流していた。

「刑事さん、分かって下さい。母親がおらず、父だけが心の支えだったんです。わたしが、天に代わって罰をアイツらに下したんです」

僕は深くため息をつき、

「あなた方の気持ちは理解できます。でも殺しはいけません。詳しくは取り調べで聞く事にします」

北園友子と寺山陽介の2人は手錠かけられ、パトカーに乗せられた。

僕はタバコに火をつけた。

隣にはワトソン君もタバコに火をつけている。

「黒井川警部、僕は寺山に上手くだまされましたよ」

「ま、そんな時もある。今夜、飲もうか?」

「いいですね。いつもの店でいいですか?」

「うん」

僕は、尼ヶ坂病院を後にした。


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尼ヶ坂病院殺人事件 羽弦トリス @September-0919

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