第5話

「この後どうする?」

「先輩にどの講義がいいかとか、一年生の講義内容とか聞きに行こうかなって」

「先輩に知り合いがいるの?」

「うん。こっちに来た時からお世話になってる先輩がいて」

「へー!一緒に行っていい?私も話聞きたい!」

「いいよ。せっかくだからみんなで行こうか」


 お世話になっている人というか、件のノエルさんの娘であるニーナさんの事だ。

 この大学で研究員とTAをやっているらしいから講義についても詳しいと思う。


「それで、その先輩はどこにいるんだ?」

「アルブス研究室の所属って言ってたし多分そこかな。研究室棟ってどこだろう」


 せっかくだから先生とかもいてくれると詳しい話聞けそうかな。

 ついでにいい加減グループ演習についても詳しく聞きたいなぁ……


 というか、なんか急にみんな静かになったような。


「どうしたのみんなそんなに静かになって」

「いやそのなんだ、本当にアルブス研究室で間違いないか?」

「えっうん。研究室まで行ったことはないけど何回も聞いてるから間違いないよ」

「そうか……」


 えっ何そんなに何かあるような研究室なんだろうか。


「えっとね、シュウ君は知らないようだけどね、さっきのセルジア先生と同じくその研究室の室長アルブス・レム先生もクラスⅤの凄い人なんだよ。セルジア先生より外に名前が出る機会が多いみたいだからⅤの中でも有名な方なんじゃないかな」


 あぁ……なるほどねそういう……


「ま、まぁほらそんなすごい人と縁ができるかもしれないし、そうでなくともその研究室の人と話ができるのはいいことじゃん。ね?」

「そうだな。なぜその研究室の人と知り合いなのかとか聞きたいことはあるが早く向かうとしようじゃないか」

「そうです!そんなことより研究室とかそこでのお話の方が聞きたいです!」

「だね。それじゃ行こっか」


 後で色々聞かれたときのためのごまかし方を考えておかないとな……




 研究室棟の場所はイリスさんが知っていたので先導されてその建物へと向かった。

 結構大きい建物でそんなに分かりにくい場所でもなかったから次からは一人でもこれそうだ。

 ただ……


「なんか人が多いというか、慌ただしくしてない?」


 そう、やたらと人の出入りが多く、その全員が小走りで急いでいるように見える。

 僕たちと同じ目的の新入生かとも思ったがどうも出入りしているのは在学生や何かの作業員みたい。

 周りに新入生もちらほら見えるのだがこの様子を見て入れずにいるか、入ることを諦めている者が多数なようだ。

 ちょっと聞いてみようか。


「すいません」

「おっと、新入生かな。どうしたんだい?」

「アルブス研究室に用があってきたんですけどこれはいったい?」

「えっあーアルブス研究室か……えっとね……うーん……」


 どうしてこんなに歯切れが悪いのだろう。

 あちこちを見ながら考え込んでいる。


「もしかしてですけどこの騒ぎに関係が?」

「いや……まぁある……けど……あっそうだ!」


 あるんだ……今から行こうと思ってたのに。

 そしてそうだって、何かを思いついたのかな。


「君たちアルブス研究室に用事があるんだよね。ってことはこれからよくあることになるだろうし先に見ておくことも大切だよね。うんうん。」


 いったい何があるというのか。

 これが日常茶飯事のよくあることなのか。

 一気に怖くなってきたが話を聞いた先輩は具体的なことは教えてくれず場所だけ教えてどこかへ去っていった。


「あのさ、これ行く?」

「いささか不安にはなるが行くしかないのではないか?」

「それにこれはこれで気になるしねー」


 しょうがない……行くか……




 アルブス研究室は建物の結構奥の方にあった。

 上に行ったり下に行ったり曲がり角を何回も曲がったり。

 なんだこの建物。


「えーっと多分あそこだと思うんだけど」

「なんかボロボロじゃない?」


 周囲は焦げ付き、瓦礫が散乱し、廊下の先外への扉があったであろう場所はそれ以上にしっかりと空が見えてしまっている。

 火事かそれ以上の大惨事でもあったのかという有様だがそんな中にしっかりと「アルブス研究室」のプレートと新品同様の扉があり異彩を放っている。


「これは推測なんだが、入学式前にあった爆発音はもしかしてここであったのではないか?」

「「「あ~……」」」


 エヴァンの推測に対して三人は納得の声を上げてしまった。

 原因は分からないがここで爆発があり、入り口の慌ただしさはこれの関係ということだろう。

 そして、場所を聞いた先輩によればこれが日常茶飯事であると。


「ははっ、笑うしかないな……」

「笑ってるのはいいんだけど、さっさとノックなりなんなりしてくれる?シュウ君の知り合いの先輩なんだからシュウ君が行かなきゃ」


 そうなんだけど今は大変帰りたい。

 こんな混沌としていそうなところに入りたくはない。

 が……ここまでみんなを連れてきてしまったからにはもう行くしかないのか……


 少し覚悟をして扉をノックする。


「すいません、シュウです。誰かいますか」

「は~いどうぞ入って~」


 中から女の人の声がする。

 扉越しで少しわかりにくいがニーナさんの声で間違いないだろう。


「入ろうか」


 扉を開けてみんなと一緒に入る。

 部屋は何かよくわからないものや機材が積まれた机がいくつかと本棚、あとはまだ奥があるのか扉が一つ存在した。

 ニーナさんの他には誰もおらず、ただとある机に白い鳥が止まっていた。


「あれ、その鳥入学式の時に先生たちの所に居た鳥じゃないですか。何ですかこの子」

「えっ!えっと~私の使い魔……かな……?」


 自分の使い魔なのになぜ疑問形なのかとか、研究員の使い魔が入学式の時に先生席にいたのかとか気になることはあるが今はいいか。


「それで、こんなところまで来て、今日はいったいどうしたのかな?」

「一年生の講義について聞きに来たんですけど……まず外の惨状について聞いていいですか」


 他の三人もうなずいて同意をしてくれている。

 講義内容も聞きたいが、あれが気になりすぎて話が入ってこなさそうだ。


「この研究室って魔道具っていう道具やからくりに術式を込めた物を研究してるんだけどね。その中で結構いろんなタイプの物と術式を使うんだけど組み合わせとか後は作業してる途中で失敗してとかで、爆発する」

「「「「爆発する!?」」」」

「よく爆発してる」


 僕にはよくわからないけど、そんな怖い研究をしてるんだ……


「部屋の中は色々対策してるんだけど廊下まではねー。だから漏れた爆風で外はあんな感じにこんがりってこと」

「嫌な研究室だ……」

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異世界の大学に進学しましたが、こんなにも物騒なものですか? @arbusrem

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