88歳のヒーロー
白鷺雨月
第1話88歳のヒーロー
私はおじいちゃんと二人暮らしをしている。
研究者である両親はアメリカの製薬会社で新薬の研究をしていて、私だけ日本の高校に進学するために残った。
そんな私の一応面倒をみてくれているのが88歳になるおじいちゃんだ。
おじいちゃんは顔中しわだらけで髪も真っ白だけど背筋がピンと延びていて嘘みたいに元気だ。
毎日お弁当をつくってくれる。
おかずが筑前煮だったりひじきの煮物だったりするのがかなり残念だけどね。味はいいんだけどぜんぜん映えないんだよな。
授業が終わり、私は帰路についていた。
はやく帰ってアニメをみたいな。
そんなことを考えながら道を歩いていると私の視界が真っ暗になった。
えっどういうこと……。
夜にはまだ早いし、今日は晴れていたはずなのに。
私はゆっくりと視界を上にあげる。
どうやら夜になったのではなくて、目の前に巨大な何物かがあらわれ、その影によって光が塞がれているためだ。
その人物は黒い身体をしている。
全身を蛇のような鱗でおおわれていた。
顔もトカゲか蛇のような顔をしている。
身長はざっと目測だけど三メートルぐらいはありそう。
「高林博士の娘だな」
それは女の声だった。
どうやらあの黒い蛇男がしゃべっているのではなさそうだ。
蛇男の右肩に白衣を着た小柄な女性が座っている。
ちなみに高林というのは私の姓だ。
「あっ違うんで」
私は知らんぷりをして、その蛇男の横を通り抜けようとする。
やばい、こんなのに関わりたくないよ。
私は足早に逃げようしたが、ばかでかい手のひらが私の行く手を阻む。
「お前の両親は我らの組織を裏切り、あまつさえ数多くの研究所を破壊した。その罪を貴様につぐなってもらうぞ。さあ、やってしまえリヴァイアサン!!」
勝手に死刑宣告された私はリヴァイアサンという悪魔の名前をもった巨人に引き裂かれようしていた。
「きゃあ!!」
私は頭を抱え、しゃがみこむしかなかった。
だが、私はその巨大な爪で引き裂かれることはなかった。
その怪人リヴァイアサンの筋骨隆々の腕がピタリと止められている。
「そうはさせん」
そのしわがれた声は今年88歳になるおじいちゃんのものだった。
おじいちゃんは怪人リヴァイアサンの腕を関節と逆の方向にねじる。
怪人は簡単に地面に転んだ。
おじいちゃんはジャンプすると怪人リヴァイアサンをたこ殴りにした。
リヴァイアサンは必死に抵抗するもおじいちゃんの圧倒的な戦闘力にはかなわない。
怪人リヴァイアサンは口から血をはき、動かなくなってしまった。
「そ、そんな……七つの大罪の怪人がこんなあっけなく」
白衣の女性はうなだれ、地面に両手をつく。
おじいちゃん強すぎる。
「さあ、葉子かえろうか」
おじいちゃんは何事もなかったかのように私の手を引き、家に帰った。
「おじいちゃん強いのね」
夕飯の唐揚げを食べながら私は言う。
「まあな、おじいちゃんはこれでも昔は仮面のヒーローだったからな」
そう言い、おじいちゃんはがははと豪快にわらった。
88歳のヒーロー 白鷺雨月 @sirasagiugethu
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