最終話 新しい私の片思い

「こばせんに話したら落ち着いた。ありがとう」

「よっし。これで課題に集中できるな」

「あっ! 忘れてたー、手伝って」

「めんどくせぇ」


 いやいやながらも、ノートを手に取って見てくれた。

 こばせんの横顔を見て気づいたことがある。すっと通った鼻筋で、唇は薄い。ちゃんとスキンケアをしているのか肌は綺麗なほうだと思う。

あ、よく見たら寝ぐせついてる。かわいいなぁ。


「おいおい。フランス革命の年号、間違えてるぞ」

「えー? あっ、1789年なんだ」

「簡単な覚え方教えたぜ、ちゃんと聞いてろって。男にうつつを抜かすなよぉ」


毎回の授業は先輩ばかり見ていて勉強にもならなかった。今年の世界史の授業は1ミリも真面目に聞いたことがない。2週間後の期末考査が不安なくらいだ。


「でも、来週からは授業に集中できそうだよ」

「本当かよ」

「期末考査で満点とれそう!」

「本当かよ! お前、中間テスト赤点だったよな?」さっきより本気でつっこまれる。

「満点とったら、私と連絡先交換して?」

「へーへー、とれたらな」


 そして2週間後、迎えた期末考査の結果は70点台だった。放課後、こばせんのいる社会準備室に行った。


「よくやったほうじゃね?」

「満点がとりたかったのー……」

「そういえば川本が満点とれなかったらどうするか決めてなかったなぁ」

「うん……」

「俺と連絡先交換して」

「えー。……ええ!? いいの?」

「まぁなー。これから成長するかもしれないし?」私の胸をなだめるように見てきた。


 かなりひいたけど、それでも嫌いだとは思わなかった。

 こばせんの連絡先をもらった私は、目の前にこばせんがいるのに試しにメールしてみた。


「意味あんのかね」苦笑いをする。

「あはは」


 新しい私の片思いに、可能性がでてきたかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新しい片思い 久瀬ゆこ @hisase

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ