第3話 こばせんの一言

「告白してフラれるより、そもそも好きな人に話しかけられない私のほうが辛いよ」

「んー、川本。そういうことは思わないほうが良い」


 こばせんは頬杖をつくのをやめた。


「つらさに差なんてない」


 私に対してまっすぐな眼差しを向けるから少しだけドキッとした。


「わざわざ他人と比べるな。人間、生きてればつらいことはある。川本だけがつらいわけじゃない」


 よく考えたら確かにそうかもしれない。

世界で私だけが片思いに苦しんでいるわけじゃない。先輩のことが好きすぎて心に余裕がもてなかったせいで、周りのことを考えられていなかった。

 ……恋って怖いな。私が私じゃないみたいな気持ちになる。


「俺もう10回以上は女にビンタされてるぜ。美人の身体に惚れてねぇ。はぁ、触れられないのがつらいぜぇ」大根芝居のように目元に腕を添えて泣くふりをする。

「さいってい。身体目当てだったんだ」


 少しでもかっこいいと思った自分がばかみたい。


「ははっ。まぁ、その片思いもいつか良い思い出になるさ」

「……何度もつらい思いをしてきたこばせんが言うなら、信じてみます」

「おう」クシャっと笑う。


 その笑顔に心を揺さぶられた。

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