コント風劇『卒都婆小町Remix』
小田舵木
《コント風劇『卒都婆小町Remix』》
【舞台】
①現代(↓から2000年代が正確なトコロですが、1920年代の雰囲気を
②1920年代、ダンスホール (承、転)
【役】
ボケ→老女、名は
ツッコミ→ヘルパー ②
ガヤ→男、女、各1人、その場面毎に設定は変える、複数名を演じる形となります
【
老女: 着たきりのパジャマ、下に
ヘルパー: ジャージのようなユニフォーム、下にフロックコート調のスーツ
ガヤ: 男は音声のみ、女は最終シーンのみ老人ホームのユニフォーム
【構成】
〈序(起~承)〉
介護付き老人ホームの一室、
そこにヘルパーの②が朝の食事
(状況1)
①老女の部屋の前、②ヘルパーが
②へ 「あ~あ。今日も仕事仕事っと…次は―
②へ 「あの人…認知症なんやけど…認めてへんからなぁ」
②へ 「服
②へ 「後なあ…たまーに俺の事、誰かと勘違いしよんねん。誰でもええけど、変な絡みされんのは
(状況2)
②、小野の朝食の
①、②を一瞥しながらベットの上で起き上がる。嫌そうな顔をする。
①老 「なんだい、あんたは?アタシがココで寝ているのが気に食わないのかい?」
②へ 「おはようございます、
①老 「加減?いい加減だよ、アタシゃ」 ト言いながら指を折る老女
②へ 「
①老 「ああん?別にアンタにゃ関係無いだろう?」
②へ 「まあ…関係ないですねぇ…さ、ご飯食べましょうよ」ト老女のベッドの前に朝食の盆を置く
①老 「今日は何かしら?ビフテキ?」ト
②へ 「そんな訳ないでしょ…おかいさんですよー大体、アナタ、総入れ歯でしょうに」
②老 「歯茎で
②へ 「歯茎で、ねえ…見てみたいような」
①老 「なら、肉を用意しな!こんなジジィの
②へ 「言い方!!まあ、食事があんま美味しくなさそうなのは申し訳ないけど」
②老 「まったく…最近の奴らときたら、老人を
②へ 「はいはい…済みませんねえー」 ト受け流す、おかゆを老女の口元に運ぶ
①老 「昔はアタシも
②へ 「食べながら文句言いなやぁ!」 ト強めのツッコミ
②老 「客に
②へ 「客っちゃ客やけど、アンタ、俺達の世話になってるやん。言葉が荒かったんは謝るけど」 ト顔に付いたおかゆを
②老 「はん、アタシみたいな美女の相手してんだ!感謝しな!」
②へ 「美女ぉ?昔はどうだが知らんけど、今は普通の婆さんやん!」 ト仕事口調を忘れた感じでツッコむ
①老 「ああん?アタシはなぁ…昔は
②へ 「小野小町だぁ~?頭が良くて美人だった、ってか?」
①老 「そうだよォ…男が列を作ったもんさ」
②へ 「想像でけへんわ…おかゆ顔にぶっかけてくるし」
①老 「
②へ 「マニアックが過ぎるわ!」
①老 「アンタ、この辺じゃ有名だ、SM大好きだって」
②へ 「老人の噂ネットワーク怖っ」
①老 「言いふらされたくなきゃ、アタシを美人扱いしな!!」
②へ 「脅迫すな、ババァ!!」
①老 「交渉だよ!若造!」
②へ 「ほな、もっと交渉材料寄越せや、ババァ!どうせ俺はSM好きだ、そんなの知れたところで問題ねェ!!」
①老 「なんだぁ…昔の姿を見せりゃいいのかい?」
〈破(転)〉
(状況3)
引き続き、老人ホームの1室、①の老女はベットの上、②は①の
②へ 「何だ、ババァ、写真でもあんのか?」 トすっかり
①老 「はん、あんな紙切れ、アタシの美しさを写しきってないよ」
②へ 「そんなに美人なのかよ…
①老 「広瀬すず(最近美人って言われる女性なら誰でも)
②へ 「詳しいな、最近の芸能界!!」とツッコミ
①老 「んな事ぁどうでもいい!!」
②へ 「ならどーすんだよ」
①老 「少し目を閉じな」
②へ 「何する気だよ」
①老 「細かいトコロにこだわるから素人童貞なんだよ!」
②へ 「やかましわ!!」
①老 「30分3万のあんな店に通うから女もロクに
②へ 「どこまで広まってるんだ、俺のプライベート!!」
①老 「言いふらされ…」
②へ ↑に被せ気味に
「言うこと聞いたるから黙れや!!」
①老 「よし…良いかい?ドMの小僧。アタシゃ…昔、
①老 「『モダン・ガール』だったのさ。髪はクロシェ―今はボブって言うかい?―服はアッパッパ」
②へ 「服の名前!!」 トツッコむが、状況に押され気味
①老 「
②へ 「へいへい…良いから座んなさいよ」 ト閉じていた目を開けながら言う。
①老 「いいや、座らん!!あの時はねぇ…」 トダンスをするかのような動き、しかし
②へ 「いや転んだらいよいよ死ぬて!!
①老 「はん!!昔はコレで鳴らしたもんさ。この
②へ 「脚、
①老 「それで良い!!さあ、踊れ―」 ト二人回りだす。
①老 「そして、目を閉じな小僧!!次に開ける時は―ダンスホールだよ」
(状況4)
老人ホームの個室から、ダンスホールに舞台は移る。ベッドはホールの
②へ 「ダンスホールになる訳ねぇだろ…老人ホームなんやから―」 ト目を開ける
②へ 「って!!マジでダンスホールや…」 ト言いつつ、自らの服装を見ると、スーツ姿になっているヘルパー(ジャージを脱いで対応?)
②へ 「しっかし―何したんや?あのババァ?」
①老 「私のことかしら?」 ト若返った老女登場。以下、①女とする
②へ 「どちらさんですかね?」 トひっくり返った声で返事
①女 「
②へ 「はい?」
①女 「だから―②―さん、貴方が誘ったんじゃない?」
②へ 「何、そういう
①女 「そ。さぁ、先の不幸も知らず―浮かれ、騒ぎ、消えゆく、人々をご覧なさい」
②へ 「うっわ、あそこでおっさんお
①女 「戦後の
②へ 「社会派か!!」 ト調子を戻しツッコミ
①女 「社会よ、ココは」 ト真面目な調子崩さず
②へ 「調子狂うわ…」
①女 「さあ、踊りましょう、四の五の言っても始まらない―」 ト②の手を取り踊りだす
ガヤ女①「あれ、小野のお嬢様よ、美しいわねえ」
ガヤ男①「小野のご
ガヤ女②「小野のお嬢様、
ガヤ男②「あんな男より、僕のような役人と―」
②へ 「周りから
①女 「私が言っていた事、分かったかしら?」
②へ 「分かったから帰してくれ…しんどいわ」
②女 「まあまあ…もう少し付き合って下さらない?」
②へ 「なんでぇや…アンタは美人、認めるから」 ト少し強めに言う
①女 「今日…
②へ 「さっき言ってたアンタに惚れた男かい?」
①女 「そう。私に言い寄ってきた陸軍の
②へ 「アンタとソイツは結ばれ―なかったのか…」
①女 「そう。私と結婚したければ―百回私を訪ねなさい、そんな約束の百回目…」
②へ 「
①女 「たまたま私が
②へ 「アンタ、大概性格悪いな?」
①女 「でしょうね。でも美貌にあぐらをかいた私は―孤独な老女と成り果てる」
②へ 「で。俺に迷惑をかける、まったく」
〈急(結・オチ)〉
(状況5)
引き続きダンスホール
ガヤ男 「陸軍の深草、小野のご令嬢に『お
ガヤ女 「そうなの?でも、深草さん、今度、ロシアに行くみたい」
ガヤ男 「あの―ソビエトが
ガヤ女 「
ガヤ男 「とは言え、思いを
ガヤ女 「喜ばしいやら
ガヤ男 「その時は僕もお付き合いしよう」
ガヤ女 「まあ、嫌らしい」
ガヤ男 「ははは…」
②へ 「おい、聞こえたか?」 ト①に呼びかける。
①女 「知ってる」 ト被せ気味に返事
②へ 「アンタ―彼の事、見捨てたのかい?」 ト少し真面目に
①女 「いけず、というヤツね」
②へ 「京都の女のアレか」
①女 「童貞の
②へ 「俺は確かに童貞だが―」
①女 「何よ?」
②へ 「なあ、アンタ、良いM
①女 「知らないわよ」
②へ 「S、即ち女王を気
①女 「へぇ、気持ち悪い」
②へ 「案外、アンタは―深草少将の手の上じゃないのかい?」
①女 「私が?」
②へ 「ああ―『お
①女 「そんな訳―」
②へ 「なんで、あしらわなかった?」
②女 「それは―」
②へ 「彼は―やがて、遠いシベリアだかどっかで死んじまう。その
①女 「私は―」ト頭を抱え、うずくまる
②へ 「おい?」ト慌てた様子
(状況6)
ダンスホールだが、演者2人にクローズアップ
①女に深草少将の霊が
① 深 「さぁ―そこの君、小野のご令嬢の
②へ 「何言ってんだ、ババア?」 トツッコミ、②はまだ気づかず
①深 「僕は―近々ロシアへ行くんだ、今日、思いを
②へ 「あんたは…死ぬ」トここで
①深 「ああ。僕は―戦場でもなんでも無い
②へ 「あんた―霊だって言うのかい?」トツッコミ
①深 「ああ、そうさ、小野のご令嬢の許に99度も通った
② へ 「あんたさ…今どんな格好してんだい?」 ト優しい口調で
①深 「ん?軍服はダンスホールに
②へ 「
①深 「コレは―もしや…」 ト
②へ 「お前の
①深 「これは―
②へ 「俺に謝るな!!」
①深 「で?どうしたら良い?」
②へ 「俺に聞くぅ?」
①深 「ああ。小野のご令嬢の体、
②へ 「はよ、そこから出ぇや」 ト
①深 「そしたら僕の想いは―」
②へ 「叶わんね」
①深 「ああ、やっとの想いで来たのに…」
②へ 「知らん。ついでに今の小野さんはババァだよ、
①深 「ふん…」 ト考え込む
②へ 「諦めろ、そして俺を元の時代に帰せよ」
①深 「…」 ト更に
②へ 「今日は給料入るんだ…早く仕事終わらして、行きたいんだよ、あの店によ」
①深 「良いことを思いついた―」 ト少し
②へ 「へ?」
①深 「君の体を
②へ 「そも、ここ、ババァの思い出の中じゃねーのか?」 ト少し
①深 「そうだろうが―関係ないね」
②へ 「それで
①深 「構わん」
②へ 「まさかのホラー展開!!」
(状況7)
依然としてダンスホール
①と②もみ合いになる
①、②の胸ぐらを掴む
②へ 「堪忍してぇや」
①深 「さあ、思いを
②へ 「いや、おっさんに
①深 「君の
②へ 「見た目美女の中身おっさんに唇奪われるゥ!!」
①深 「大人しくせぃ!!」
②へ 「初めてのキスが―中身おっさんは性癖
①深 「うぉぉぉ…」 ト②の顔に迫る―
【ココで場面転換、元の老人ホームに戻る。①と②は姿が見えない、部屋の前に②の同僚の女性】
ガヤ女 「②ィ、朝食だけでどんだけ時間食ってんねんな…」
ガヤ女 「フォローすんのしんどいねん…」 ト部屋の扉を開ける
【ここで①老女と②ヘルパーの姿が見える、調度キス寸前】
ガヤ女 「②ィー何してんねん!!」
②へ 「いや、ちゃうねん!!」
①老 「違わないよ!!」 ト老女の声に戻し、
②へ 「いや、お前、分かってるやろ!!」
①老 「犯されるぅ~」
ガヤ女 「イヤぁあぁぁぁ!!」
【終劇】
※今作、『卒都婆小町Remix』を制作するにあたり、以下の文献・サイトを参考にしたことを明記します。
三島由紀夫 「近代能楽集」―「卒塔婆小町」 1968年 新潮社
天野文雄 「能楽名作選 上」―「卒都婆小町」 2018年 株式会社KADOKAWA
the能.com 演目辞典 卒都婆小町
https://www.the-noh.com/jp/plays/data/program_069.html
the能.com 演目STORY PAPER:卒都婆小町
https://www.the-noh.com/download/download.cgi?name=069.pdf
『モボ・モガ』 ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/モボ・モガ
『シベリア出兵』
https://ja.wikipedia.org/wiki/シベリア出兵
コント風劇『卒都婆小町Remix』 小田舵木 @odakajiki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます