22×4

彩京みゆき

第1話

 大学4年生、梅の花が咲く、卒業を控えた季節。

 これは、22歳である、俺達4人の話。


 俺達のアイドルのような存在の白川遥しらかわはるかに異変が起きていた。

 何やら遥は最近誰かに付け回されているらしいという。

 俺、杉山通すぎやまとおると、小野田祐希おのだゆうき志田省吾しだしょうごは、彼女を守るべく、普段から近くにいて、こうやって学内から彼女を家まで送り届けて行くのが日課になっていた。


「遥、今日は大丈夫か?」

 と、男性アイドルのような可愛いルックスの祐希。

「何かあったら必ず言うんだぞ」

 と、長身でモデルのような省吾も。2人とも心配そうに遥の顔を覗き込んだ。

「大丈夫だよ…」

 と、遥は笑顔を見せた。


 俺だってもちろん彼女の事が心配で、ずっと気にかけて側にいるんだ。少し口数は少ないけれど。

 俺は、彼女の事がずっと好きだった。

 多分、それは祐希や省吾も同じなんだろう。

 俺は、祐希や省吾みたいにルックスが際立っていいという訳でも無いけれど。

 でもずっと高校時代から遥を見て来ていて、彼女の事を誰よりも理解してるという自負もある。

 彼女を守るという名目ではあるが、遥の周りにいつも男が3人もいるなんて、やはり妙な状況だ。

 遥には、俺一人で充分なのに…。

 そんな、嫉妬心。

 …いやいや、そんなよこしまな気持ちはさておき、彼女を守る事が俺達の使命だ…。


「いつもありがとうね、祐希、省吾…」

 そして、遥は俺の事を見つめて、

 目を逸らした。

 最近よくこういう事がある。

 照れているのか?

 俺の事を特別に意識しているのかな?

 うん、分かるよ。

 二人だけの特別な気持ちだよな…。

 きっと、祐希や省吾にも気付かれたく無いはずだ…。


 遥は祐希と省吾を代わる代わるに見つめて、最後に、

 俺の事を真っ直ぐに指差した。


「この人よ。

 最近、ずっとこの人が私の事を付け回しているの…」


 祐希が俺を睨み付けるように、

「お前かっ!?」

 と言い、省吾が俺に駆け寄って腕を掴み、

「あ、警備員さん!

 この人、部外者です!

 ストーカーです!!」

 と、校門にいた警備員を呼び止めた。


 俺は、何か誤解を受けているようだった。

 落ち着け、落ち着け。

 きっと、話せば分かる事だ。


「何言ってるんだよ、俺は、遥をずっと見守っているんだよ。

 ねえ、分かってるんだろう?

 遥…」

 そう言うと、俺の愛しい遥は、


「あんた、誰よ…」

 と、俺に言った。


「気づいてるよね、

 俺は、遥の、運命の相手だよ…」


 警備員が俺に駆け寄り、

「君、学生証は!?」

 と、次々と尋問した。



 遥は、祐希と省吾に促されて、俺から遠ざかって行こうとしている。

 俺は、

「遥、何かの誤解だよ!

 君も気づいてるよね…」

 と、彼女の背に言った。



***



 俺と遥の最初の会話は、そんな誤解だらけだった。


 でも彼女だって気づいているはずなんだ。

 どんなに誤解があっても、反発し合っても、運命の相手だからね。


 最後には、必ず結ばれるって事を…。

 

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