ごちそうさま

『餃子』

 あたしたちの声は見事に重なり合った。

「ニンニクにニラにキャベツに挽き肉。パスタも小麦だから要素としては完璧に餃子なんだよね」

 嬉しそうに優は口にした。

「確かにボロネーゼも餃子も挽き肉だけど、組み合わせたかぁ。それにこれ、丸麺のスパゲッティじゃなくて平打ち麺のパスタを茹でた後に少し焼いてあるよね」

 餃子の皮の焦げた感じを出そうという狙いだろう。

「ねぇボロネーゼって、どうやってつくるの?」

 料理に関しては、元バーマンの優には敵わないので質問した。

「玉ねぎやセロリなんかの香味野菜を炒める。挽き肉を炒めて、ワイン、ホールトマト、炒めておいた香味野菜を加えて煮込む。塩コショウで味をととのえてソースは完成。パスタとからめて出来上がり。お好みで粉チーズを振りかけるってとこかな」

「茶色っぽいのはワインとホールトマトの色なのかな」

「考えたことないけど、まぁ、そうかもね」

「ホールトマトは入っていないよね。中華スープかな?」

 優は腕組みする。

「わからないなぁ。でも、なにかで煮込んでるね。赤ワインじゃなくて紹興酒っぽいし、オリーブオイルじゃなくてゴマ油だし、なにか中華料理っぽいやつの気はするけどなぁ」

「これ、食べるラー油みたいなのかけて混ぜたら、もっと見た目ボロネーゼっぽくなるよね」

「カロリー高くなるけどね。でも、なんだろうな、ホールトマトの代わりって。気になるなぁ」

「次、お店に行ったら聞いてきなよ。“武蔵野うどんナポリタン”と“餃子ボロネーゼ”のレシピ」

「うまいこというね。そうか、ナポリタンと武蔵野うどん、ボロネーゼと餃子、あの店にはたくさんの出会いがあるわけだ」

 あたしたちも、あの店で出会った。二人でカウンターに並ぶことができる日は、いつになるだろうか。


                            (了)

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