鋼の宿

@ryogahi

第1話

彼は今、刑務所にいる。それはなぜか。

答えは簡単、いや、知らない方がおかしいと思うが。

殺人さ。

それに加え強盗や窃盗なども積み重なって、死刑だと。なぜ彼がああなったか?それは知らない。

…少し話してあげようか。


ー26年前の夏ー

彼はその時高校生だった。いや、中退していたかもしれない。だが、どちらであろうがクズであったことには変わらないな。その時からいわゆる「オヤジ狩り」や窃盗を繰り返しお縄になっていた。ただ当時は青年ではなくすぐに釈放される。それでは反省はしないようだ。久太はあるグループに所属していた。「醐禹華」だ。それはそれはもう、あれに荒れていて、犯罪を繰り返すクソ集団だった。時には大人しそうな人を見つけ、リンチする。全く反吐が出る。だが、それが原因で、久太の人生は大きく変わるのだ。


伊上駿介。彼はごく普通の一般人だ。だが、久太と同じクラスだ。だが、彼は体がとても小さく、相手にされないようだった。あの日までは。

ある夏、駿介は久太に捕まった。「金ちょうだいヨォ」というふざけたセリフと。久太は大人ほどに体が大きく、駿介は体が小さい。格好の的だ。だが、駿介は拒否した。彼は自我はあったのだ。ガンをつけても拒否する駿介に久太は激怒し、仲間を呼び、リンチを行った。それは凄惨だった。金属バットで肋骨を折り、四肢を曲げる。頭蓋骨が割れるのでは、という力で頭を殴る。助けを求めても、人通りのない裏路地、それもクズ人間が集まった醐禹華が用意した廃工場である。

数十時間のリンチの上、やっと解放された。久太は駿介の頭を掴みこう言った。

「警察には言うな」


一週間後

久太は少し遠くに出ていた。多くのメンバーと共に。それは醐禹華と相手グループとの対決であった。それに勝ったのだ。だが、こちら側も相当痛手を食らい、不機嫌なまま元の町に戻っていった。

その時だった。

久太は見たのだ。

警察署から出てくる駿介を。

久太は憤慨した。今にも飛びかかりそうに。

だが、一つおかしなことが目に入った。駿介の胸に何かバッチが貼ってあるのだ。

ここからはよく見えないが、どうせ学校のものだろうと。

久太は警察署から離れて裏路地に入っていく駿介を待った。

今だ、と言わんばかりに仲間総出で飛びかかった。

だが、その時驚くべきものを見た。

駿介の獅子のような目を。


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