88歳の真実

希見 誠

第1話

「所長、驚愕の事実が判明しました!」

 ここは世界地質学研究所。

 研究員が何やら慌てた様子で入ってきた。

「なんだね、騒々しい」

「地球の年齢が、実は約46億歳ではなく、88歳だったことが判明しました!」

「何、それは本当かね?」

「はい、我々が例のF星人と交信していたら、本当のことを漏らしました」

 F星人とは、数ヶ月前から地球人と交信している宇宙人である。

「奴らに騙されていたんです。人類の記憶を操作して、地球に46億年の歴史があるように思い込まされていたんです」

「なんということだ。それでは恐竜の化石は」

「でっち上げです。牛の骨です」

「アンモナイトは」

「ただの貝です」

「89歳以上の人がいるぞ?」

「戸籍を改ざんされていました」

「江戸時代の話はどうなる?徳川家康は?」

「作り話でした」

「光圀も?」

「そうです」

「越前も?」

「はい」

「八代将軍も?」

「はい」

「平次も?」

「間違いありません」

「じゃああれは?桃太郎が鬼ヶ島に行ったというのは」

「あれも作り話です」

「浦島太郎は?」

「実在していません」

「タイガーマスクも?」

「あれは実在しています。まだ88歳になっていませんから」

「僕が東大に入れなかったというのも嘘だろうか」

「事実です。受け入れてください。ちなみに私は東大卒です」

「驚いた。たった88年前といえば、1934年だぞ。日比谷映画劇場が開場した年だ」

「そうなんです。それが発端なんです。それまであったとされる出来事は、全て映画の中の出来事だったんです。映画を見させられて、本当に起きたと錯覚するように、F星人に仕組まれていたようです」

「しかし、奴ら一体、なんだってそんなことをバラしたんだ?」

「88周年のお祝いだそうです」

「驚いた。衝撃の事実だ。だが、これをどうやって全世界の人に信じさせればいいんだろう?我々は科学者だから信じるけど、一般の人たちはそうはいかないぞ」

「そうなんです、そこがミソなんです。この話を信じる人なんて誰もいません。ですから、これからも公式には地球は約46億歳のままなんです」

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88歳の真実 希見 誠 @warabizenzai

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