コメディが書けないので日常会話を晒してみた
藤浪保
コメディが書けないので日常会話を晒してみた
「ヤバい。明日の昼までのお題がまだ書けてない」
「いやそれ布団に入ってから言う事じゃなくない?」
「明日早起きすればなんとか」
「だからそれもっと前に言いなよ。今からじゃ早起きできないでしょ」
「じゃあ仕事ちゅ――」
「やめろ」
「とにかくヤバいんだ助けてくれ」
「お題は?」
「お笑い・コメディ」
「諦めな」
「早っ。もう少し考えてくれたって」
「だってあんたお笑い要素皆無じゃん」
「それ俺が何の面白みもない人間みたいに聞こえるからやめて」
「お笑いなんて全く見ないよね、あたしたち。無理だよ。諦めなって」
「それでもやらねばならぬ」
「異世界に絡めるとか」
「異世界に?」
「得意でしょ、異世界」
「絡めるって、どんな風に?」
「なんかこう、異世界でこそウケるネタとか」
「現実でも書けないのに?」
「……」
「何か面白い話してくれ」
「無茶振りがすぎる」
「何でもいいから。あるだろ、一つくらい」
「そういうあんたこそ、さすがにアイディアの一つくらいはあるんじゃないの」
「……布団が吹っ飛んだ」
「あ、あー……面白い。ああ、うん、面白いよ」
「棒読みどうも。もうこれとうんちしか思いつかない」
「小学生かな?」
「じゃあお前何か言えんの?」
「……アルミ缶の上にあるミカン」
「あー……うん」
「ラブコメでもいいだろうか」
「いいだろうけど……」
「何?」
「ラブコメ書けるんだっけ?」
「書ける。書いたことある」
「そうだっけ」
「あるだろ、あの生徒会の――」
「ああ、黒歴史になって消したやつ」
「やめろ俺の古傷を抉るな!」
「あんたが言い出したんじゃん」
「待って、俺らのこの会話ってコメディじゃね?」
「まあ、ジャンル的にはそうかもね」
「ならこれ書けばいいじゃん」
「ああ、まあ、そうだね。書けば」
「じゃあそうするわ」
―― 翌日 ――
「っと待ってマジで書いたのあんた!?」
「書くって言ったじゃん」
「まんま書くとかバッカじゃないの!」
「ちょ、なんで怒るんだよ」
「親戚中にあたしのアルミ缶の上にあるミカンが暴露された……!」
「え、待って。親戚中が読んでんの? え? 俺の? どゆこと? ねえ、ちょっと、何それマジ? 俺身バレしてんの?」
コメディが書けないので日常会話を晒してみた 藤浪保 @fujinami-tamotsu
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