コルメシア商会の鑑定士マーチェさん~封印迷宮都市シルメイズ物語~
荒木シオン
求:笑い壺を笑わせられる人
「これは、また
迷宮からは
――今、目の前に置かれた品は中々に
ここはコルメシア商会。封印迷宮都市でも五指に入る
「
彼女の名はユフィー。頭の左右で結った髪を、
こんな見た目でもとある探索者パーティの
「噂は入ってきてますよ。おかげで当商会も最近は連日大忙しです……」
「でしょ~? だから、ほら! お得意様だし~、少しだけ色を付けて欲しいなぁ~?」
小首を
さておき、ここ数日、各商会には
理由はとある事情でここ
そして、ユフィーたちのパーティも探索を再開し、今回の品物を迷宮から手に入れてきたわけだが……。
「なんでよりによって『
目の前に置かれた人の顔を
「これしか見つけられなかったんだよぉ~! お願い、マーチェ! 買い取って! それかこの壺、笑わせて! でなきゃ、赤字なんだよぉ~!」
ユフィーが両手を合わせて必死に頼み込んでくる……。
まぁ、気持ちは分かる。
そこで手にした品が売れないのは探索者として
とはいえ『
この時折持ち込まれる
「知ってるでしょう、ユフィー?『
――この壺は名前に反して
仮に笑ったとしても、
そのため「笑い壺はジャックポット」などと
見たところ持ち込まれた壺は、眼や口元などどこも
「うぅ……けど、これは特別笑いやすい壺かもだしぃ~!」
確かに壺にいわゆる個体差があることは事実だ……。
過去には使い古されたギャグやジョークで大笑いし、持ち主に巨万の富を授けた壺もあるにはある。しかし、
「そう思うのなら、ユフィーが笑わせるといいのでは? 成功すれば、ここで売るより大金が手に入りますよ?」
つまり、そういう結論になる。まぁ、彼女の言い分通り簡単に笑う壺ならばだが……。
「ぐっ……それは、ほら! いつもお世話になっている商会に少しばかり
「はいはい……。どうやら今回の探索では余程の赤字が出たようですね……」
なぜか強がるユフィーに
「これが当商会で出せる最大金額です。恐らく他の商会でも似たり寄ったりでしょう」
「た、たった十シルド?! え……せめて百シルドぐらいには?」
「なりませんね……。どうします? 私なら自分で使いますけど? 一シルドも十シルドも
「うぅ……そんな……」
壺が微笑めば最低でも銅貨一枚、一シルドは手に入るのだ。十シルドで売るぐらいなら、試しに使用してみた方がまだマシである。
「わ、分かった……一発ギャグ言います! せーの!『問題が解けたぞ! どんなもんだい!』」
「…………」
『――――』
意を決してギャグを口にし、
いや、これは予想以上に
と、思いきや、次の瞬間――、
『はっ…………』
――壺が小馬鹿にしたように鼻で笑うと、響く小さな金属音。
二人で
ユフィーは震える手でそれを摘まみ上げると、今にも泣きそうな表情を浮かべながら、無言で商会をあとにした……。
いや、うん……いくらなんでもアレはない。
というか、銅貨一枚以下とかあったんだねぇ……。
後日、今回の話を探索者協会へ持ち込んだところ、「
ここは封印迷宮都市シルメイズ、商会には今日も探索者たちが妙な品々を持ち込んでいる……。
……to be continued?
コルメシア商会の鑑定士マーチェさん~封印迷宮都市シルメイズ物語~ 荒木シオン @SionSumire
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