6人の出会い  パワードスーツ ガイファント外伝 〜パーティー結成は、お腹の音と共に訪れた。〜 KAC20224

逢明日いずな

第1話 初めての出会いは、お腹の音と共に、笑いを誘う


 ギルドに所属する冒険者の育成を行う機関であるギルドの高等学校は、南の王国の王都にあった。


 この南の王国は、ギルドの発祥の地で、南の王国とも友好的な関係を結んでおり、王都にはギルドの高等学校が設立されていた。


 ただ、学校とはいうが、実技に重きを置くので、座学は、魔法学や世界史といった、冒険者として各国に赴いた時に苦労しないようにと配慮されている。


 そして、簡単な日常生活に必要な言語能力程度の会話が求められる。


 しかし、毎年、入学してくる学生は、最低年齢が12歳とされているのだが、中には、学費を稼ぐために、時間が掛かってしまい、12歳では入ることができず、10年20年掛かって学費を稼いで入ってくる学生もいる。


 そのため、新入生といっても、教師より高齢の新入生も入ってくる。




 その年は、始まりの村から、2人の特待生と、その2人と一緒に一般入試で入った亜人が、最年少グループだった。


 ただ、女子の魔法職は、話し方の問題なのだろうが、目的の言葉だけを並べるような喋り方なので、慣れない人には聞き取りにくいようだ。


 そして、もう1人の男子は、身長こそ高いが、筋肉がついてない、第二次成長期が終わった頃の男子の体格だった。


 また、その2人と一緒にいる亜人は、ヒョウの亜人で、こちらも、最低年齢にやっと達した程度にしか見えてなかった。




 ギルドの高等学校では、実技の為のパーティー編成がある。


 新入生の中では、その始まりの村から来た特待生に、期待したようだったのだが、体格を見て、全員が、諦めていた。


 男子は、前衛として剣を扱うのだが、当人達を見て、誰もが、大型の魔物と対峙したら、直ぐに吹っ飛ばされてしまい、盾役として機能しないだろうと、見た目で判断してしまっていたのだ。


 魔法職の女子だけでもと思った新入生もいたようだが、常に3人一緒だったことで、話しかけられずにいた。


 だが、辛うじて、声をかけられた新入生もいたのだが、お互いに同じ南の国の言葉なのだが、うまく通じないので、結果的に、その魔法職の女子だけの勧誘も不発に終わっていた。




 しかし、パーティー編成の条件に6人以上12人以下のパーティーにすることとあり、盾役の男子、魔法職の女子、ヒョウの亜人の男子の3人では、人数が足りない為、最低でも、残り3人を探す必要があった。


 そんな中、エルフの男女2人がパーティーに参加できずに困っていた。


 長命なエルフ故の事なのだが、実年齢は40歳を過ぎていたが、見た目は、人属の15歳程度で、2人とも、体の線が細いので、もっと低く見られていた。


 また、どちらも弓が主力で魔法は使えないことも原因だった。




 結局、あぶれた者達だけで、パーティーを組むしかないのだが、エルフ達は、女子の方が、言うことを聞いてくれないのだ。


「アンジュ。 流石に諦めようよ。 オイラ達じゃ、他の人属から比べたら、子供にしか見えないだろう。 あそこの3人とパーティーを組もうよ」


 アンジュと言われたエルフの女子、アンジュリーンは、ジロリともう一方のエルフの男子を見る。


 2人は、顔形がよく似ていることから兄妹だろうと思える。


「カミューは、直ぐ妥協する。 私達は、エルフなのよ。 他は人属と亜人ばかりなのだから、私達がここでは一番年上になるの。 あそこの3人は、本当に若いから、周りからも断られているのに、こっちから、声を掛ける訳にいかないでしょ」


 カミューと呼ばれていたエルフの男子、カミュルイアンは、困った様子でアンジュリーンを見た。


(もう、プライドばかり高いんだから)


 アンジュリーンとカミュルイアンが、話をしていると、見ていた3人の中から、長身の男子が動き出した。


「ほら、あれ、私達の方に来るわ。 きっと、私達をパーティーに誘うために来るのよ」


 アンジュリーンが、思惑通りのような表情をしていると、その男子は、アンジュリーン達を抜けて、後ろにいたウサギの亜人に声をかけた。


「あのー。 ソロでしたら、私達とパーティーを組みませんか? 」


 それを聞いて、アンジュリーンは、ムッとした表情をすると、それを見たカミュルイアンが、笑いを堪えていた。




 アンジュリーン達の事は気にする事なく、その男子は、後ろに居たウサギの亜人のと話し始めた。


「俺は、ジューネスティーン。 始まりの村の出身で、あそこに居るシュレイノリアと、亜人のレィオーンパードと、3人だけですけど、ソロなら、パーティーを組んでもらえませんか? 」


 そのウサギの亜人は、種族としては、長身の方だろうが、新入生の中では、最低身長の130cmしかなっかった。


 そして、頬はこけて、体も、ガリガリで、冒険者として何が出来るのかと、周りからは思われたのだ。


「私は、この体型ですからぁ、戦力外に見られているぅのですぅ」


「ふーん。 そうなの。 でも、冒険者は、力が全てじゃないでしょ。 人には得手不得手というものがあるから、得意な分野で勝負することを、考えればいい。 きっと、何かあると思うよ」


 ウサギの亜人は、後ろに下げていた耳をピンと上げた。


「あのー。 本当によろしいのですか? 」


「ええ、問題ありません。 うちは、まだ、全員10代なので、歳も近いですから、気が合うと思いますよ」


 ウサギの亜人は、表情を硬らせた。


 ジューネスティーンとしたら、身長130cmで、体の線も細かったので、自分より年下だと思ったのだろう。


「あのー、どうかしましたか? 」


「すみません。 私は、入学の為に学費を稼いでいたので、20歳を過ぎてます。 同じとは言い難いのですけど」


 ウサギの亜人は、恥ずかしそうに答えた。


「ああ、そうでしたか、パッと見、歳下と思いました」


 女子は若く見られたいと思うだろうと考えて、気を使ったのだが、それが、気に食わなかったようだ。


「それは、私の背が低いからですか? それとも、この子供のような体型からですか? すみませんね。 年齢にしては、胸も無くて。 私は、早く入学したくて、毎日、食べる物も、ギリギリに止めて、お金を貯めたんです。 私だって、もう少し食べていたら、こんな子供体型にはなってないはずです」


 ジューネスティーンは、困った表情をする。


「ああ、決して、そんなつもりじゃないです。 でも、それなら、パーティーを組んでもらえませんか? 人数が増えた分、相乗効果で稼ぎも増えると思います」


「稼ぎが増える? だったら、私も人並みの食事が取れるの? 」


 ジューネスティーンは、ちょっと違うのではないかといった顔をする。


「はい。 なんとかしましょう。 一応、ギルドには冒険者登録はしてありますから、休みの日には、狩をして稼げると思います」


「だったら、私の食事代、足りなかったら、あなたが補償して、それなら、あなたのパーティーに入るわ」


(この人の体型だと、シュレよりも食べないだろう。 だったら、大した金額じゃないな)


「あ、はい」


 ジューネスティーンは、ウサギの亜人の条件を、あっさりと、引き受けてしまった。


「決まりね。 私は、アリアリーシャ。 アリーシャと呼んで。 ちゃんと食べたら、きっと、セクシーボディーに変わるから」


 ジューネスティーンには、どうでもいい事なのだが、そのアリアリーシャの勢いに負けたような表情をする。


「はい。 アリーシャ、姉さん。 じゃあ、俺は、ジュネスで」


「ん? なんで、姉さんが着くのよ? 」


「だって、さっき、10代じゃないって」


 それを聞いて、先程の事を思い出した。


「ああ、……。 そうだったわね。 うん、じゃあ、それでもいい、か」


 そんな、ジューネスティーンの後ろに、怒りに震えたエルフの少女の顔を見た。


「ちょっと、あんた。 そんなにセクシーボディーが好きなの? 私は、40代だから、セクシーな体型になるには、後20年はかかるから、パーティーには誘わなかったって事なの」


 アンジュリーンは、ジューネスティーンに聞く。


 その声に、後ろを振り返ると、そこには、般若のような表情の女子がいた。


「いえ、決して。 ただ、睨まれていたので、声がかけずらかったから、最初に、こちらの、アリーシャ姉さんに、声を、かけさせて、もらい、ました」


 すると、アンジュリーンの後ろから、カミュルイアンが、入ってくる。


「ごめん。 アンジュは、ちょっと、体型にコンプレックスを持っているから、子供体型とか言われると、キレることがあるんだ」


 ジューネスティーンに言い訳する。


「カミュー、それ、どういうことなのよ。 私が怒っているって言いたいわけ! 」


(((いや、怒っていたでしょ)))


 周りは、ツッコミを入れたそうだったが、誰も言葉にできずにいる。


「ぎゅーーーーう」


 大きなお腹の音が鳴った。


 お互いを確認すると、アリアリーシャが、恥ずかしそうにしていた。


「ごめん。 学費とか全て支払ったら、お金が無くて、夜一食分しか無いの」


 それで、昨日の夜を最後に食べてないと分かった。


「ぎゅーーーう」


 また、お腹の音が鳴った。


「ごめん。 オイラも同じなんだ」


「もう、カミューったら、仕方がないわね」


 そう言うと、また、お腹の音が鳴り、アンジュリーンが、恥ずかしそうな表情をした。


 3人とも、昨日の夜が最後の食事だったのだ。


 すると、アリアリーシャが、プッと吹いたような笑いをする。


 それにつられて、ジューネスティーンとカミュルイアンが、笑い出した。


 先に3人に笑われてしまって、アンジュリーンは、自分だけが恥ずかしそうにしている。


「仕方がないでしょ。 食べてないんだから。 それに、みんなも、お腹鳴らしてたじゃないの」


 3人は、ギルドの高等学校に入るため、学費を貯めていたので、お互いに食事は切り詰めていたのだ。


「じゃあ、パーティー設立記念で、何か食べよう。 奢るよ」


 ジューネスティーンの提案を聞いて3人は喜んだ。


 そして、シュレイノリアとレィオーンパードを呼んで、6人で学食へ行く。


 しかし、アリアリーシャの食欲には、ジューネスティーンは驚いたのだった。

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