4/15 保健室勤務?え?企画モノですか?
仁美の趣味は行きつけの近所の立ち飲み家に来ていた。
―――20時。
今日は愛する旦那様が在宅勤務ではなく、出勤の日。
つまり、24時までは帰宅しない。
「マスター!生一丁」
暖簾をくぐり、引き戸を引くと中にいる中年男性に声をかける。
「はいよ!2か月ぶりだね」
「飲みたい気分なのに。今日は主人が在宅勤務じゃなくて、出勤しててね。一人で飲むのも寂しいし、ここに来たら誰かは話してくれるじゃない」
公務員である仁美の提示は17時と一般的な民間企業と比べると始業が早い分、就業も少し早い。
「友達とご飯の帰り?それとも、仕事の帰り?」
「仕事帰り。発熱した子供の親の迎えを待ってたら、遅くなったわ」
仕事をこなすスピードの速い仁美は滅多に残業をしないのだが。
稀に子供が怪我をして病院に引率したり、お熱の子供を保健室で寝て親が迎えに来るのを待っていたりすると残業になることがある。
「まぁ、残業代は公務員の教師だから出ないけど。たまの残業はウェルカムだね」
「その子供の熱は高かったの?」
「38.2度。発熱の考え方としては、37度以下は平熱。37~37.5度はほぼ平熱。37.5~38.5度が微熱。38.5~39度が軽い発熱。39度からが発熱って考え方だから。医学的、医療的には微熱。ただ、私の生まれ育ってきた感覚から言えば発熱。高熱だよね」
「へぇー。一つ賢くなるわ。はい。お疲れちゃんの生ビール」
「ありがとうございますー!そして、お腹も減ったし何食べようかなぁ~。疲れた時には、味の濃いものが欲しいんだよね」
メニューを見ると、お腹が空いている今は全てが美味しそうに見えてしまう。
メニューを見て決められない時は、周囲を失礼にならない程度に見て。
さっとインスピレーションを感じたものを頼むのも良い。
「あれ、何?」
2人分、距離をあけてご飯を食べている男性が目に入る。
「俺の考案した新メニュー。ハンバーグonオムレツ。ハンバーグの上にチーズタブっぷりのオムレツをのせてる絶品」
「美味しい?」
「美味い!絶品と言ってるだろ」
そんな会話に男性は仁美を見る。
「美味しいよ」
「じゃあ、それで」
ビールにはお刺身でも、お肉でも。
どんなおつまみでもあう。
「お医者さんや看護師さんでは無さそうだけど、保育士さん?」
「全部外れです。小学校の保健室の先生です」
「え!あ、そうなんだ。こんなに若くて可愛い保健室のって世の中に存在したたんだ。僕の子供の頃はおばちゃんやった」
「失礼な。そのおばちゃん保健室の先生にも、娘時代がありました。そして、私も、後10年もすれば立派なおばちゃんになります」
「いやー。企画ものだと思ったたよ。若くて綺麗な保健室の先生」
「何の企画でしょうね?Aとか、Bとか、Vとかですか?」
「はははっ。何の企画でしょうね」
どこに行っても、若い保健室の先生は持てる傾向がある。
優しい天使のイメージが付いているからだ。
私もそのイメージを次世代の保健室の先生が優しくされるように崩さないようにしなければと思いながら、ハンバーグを片手にビールを飲みだした。
田代仁美の保健室へようこそ。 林檎の木 @ringonoki4111
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。田代仁美の保健室へようこそ。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます