第29話


「送っていただいて、ありがとうございました」

 名残惜しくてしかたがないが、とうとう懐かしのわが家へ着いてしまった。

「はい。おやすみなさい。ぼくのひまわり」

「お、おやすみなさい」

「……」

「……」

 挨拶は交わしたものの、互いに離れがたくて、見つめあってしまう。

「あ。その、おばあちゃんち、いつ行きますか」

「ああ。具体的な日程はまだでしたね。では」

 す、と先生がスマホを差し出した。微笑む先生と目が合う。

「連絡先、交換してもいいですか?」

「はい!」

 私と先生の夏は、まだ始まったばかりです。











〈Fin.〉


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ひまわりのミサンガ ゆかり @yukari231086m

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