第148話 俺、世界統治機構と決着をつける
俺がワールドにSR『神の怒り』を使うという脅しにチェアマンはタジタジだった。
チェアマンは一つ大きく深呼吸するとアマテラスに向き直った。
「君の言う世界が成ったというのが私の推測通りかどうか、証拠を、見せてもらいたい。」
「いいよ。じゃ、C『勝利への確信』を使うよ。」
そう言ってアマテラスはイベ書を一つ取り出して実行した。
チェアマンがモニターで何かを確認している。
機密保護のためかクロートーは目の前を黒く塗りつぶされていあたふたした状態だ。
「少し待ってくれ。」
そう言うとチェアマンは自分のパネルを操作し始めた。
そして何かを確認し終えたのか悔し気に顔を上げる。
「っく、間違いない様だ。」
どうやら世界は成ったらしい。全く意味が解らないけど。
だけど今の感じだとチェアマンとの交渉は上手く行く感じだな。
しかし世界が成ったら一体何が起こるんだ?何せ実世界に影響があるって言ってたし、俺のワールドが進歩しすぎてこっちの世界に攻め込んでくるとか、ヤバい生物送り込んで来るとか、そんな事が起こるのか?
「ア、アマテラス!ちょっとヤバそうだし、とっとと『神の怒り』つかうんだ!ワールドが壊れればチェアマンも取り上げるものが無くなるし、俺たちの勝ちだ!」
「国之さま、それは最後の手段で大丈夫だよ。今はチェアちゃんが結論を出すまで待つ時間だから。」
しばらく俯きながら静止していたチェアマンが顔を上げる。
「分かった、アマテラスよ、協定を結ぼう。」
「オッケーだよ。じゃ、まずはそちらの要望を提示して。」
え、協定?ってことはなんか落としどころが決まったって事なのか?
二人の隣に正にアングリと口を開けたクロートーが立っていた。
俺はこっちを見もしない二人を確認した後、マスターの顔を見てみた。
マスターは安堵した様な困惑したような複雑な顔をしていた。
「これって一段落って事でいいんですかね?」
俺がマスターに質問をすると、マスターも困ったようにこっちを見た。
「多分何らかの落としどころは見つかったんだと思うけど、世界統治機構が折れるなんて、ちょっと後が怖くて仕方ないわ。」
それを聞いて俺も怖くなってきた。
「そ、それって俺が秘密裏に消されちゃうとか!?」
「私にはちょっと否定できないわね。アマテラスちゃんがチェックしてるんだから協定上は大丈夫なはずだけど・・・。」
俺はそれを聞いて今更逆らった事に恐怖が沸いて来た。
背中が変な汗でびっしょりだ。
アマテラスはチェアマンから「認められん」とか「あり得ない」なんて事を怒鳴られながら余裕な態度でこちらの有利な条件を飲ませ続けている様だ。
信じてるぞ~アマテラスゥぅぅ。
そうして、ようやく話がまとまったのかアマテラスが嬉しそうに俺に向き直った
「やったよ国之さま!!問題は全部解決したから。」
「ほ、本当か?元の生活に戻れるのか!?なんか抜けは無いだろうな!?協定外で殺されたりしないだろうな!?変な借金背負わされてたりしないだろうな!?」
アマテラスはさも可笑しそうにコロコロと笑った。
「やだなぁ、大丈夫だよ~。この私がチェックしたんだからね!?」
だからだよ!
と心の中では思ったが、これ以上の面倒は御免だったので心の中でしまっておいた。
何にしたって前の状態に戻れるならアマテラスには感謝しかない。
「ありがとう、アマテラス。」
俺はお礼を言ってアマテラスの頭をなぜると、唐突に涙が出てきた。
その時、俺は心の底からホッとした事に気が付いた。
そんな俺の顔をアマテラスがちょっと照れながら見ていた。
「では、我々は立ち去るが、今回の事は口外しない様に。」
チェアマンはそう言って手を挙げた。
安心感から全く忘れていた存在に声を掛けられて俺はきまり悪い気分で返した。
「とっとと行けよ!ったく。」
それを聞いてチェアマンがちょっと微笑んだ様に見えた。
「チェアマン、状況のご説明を頂きたいのですが!」
クロートーはいつの間にか部外者にされていたからか背を向けるチェアマンに質問をしていた。
うん、それ俺も知りたいわ。
「最優先機密事項だ。」
チェアマンはバッサリと言い放つとモニターの中へと消えていった。
「待ってくださいよー!!」
クロートーもそう言って追いかける様に消えた。
改めて俺は深く息を吐いた。
マスターも安心したのか、ソファに勢いよく沈んで天井を見上げた。
「国之さま、マスター、お疲れさま~!」
いつも通りなんだかあっけらかんとした言い方に俺は脱力した。
まぁ安心感で最早抜け殻みたいな気分なんだけど。
「特に国之さま、あのブラフは最高だったよ!!」
ん?ブラフ?
「なんだブラフって?」
それを聞いてむしろアマテラスが間の抜けた顔をした。
「国之さま~、『神の怒り』は間違えて使わない様に机の引き出しの中に入れてたよね?私の手元には無いよ?」
「なんだってー!!!」
「なんですってー!!!」
そう言えばそんな事言って引出しに仕舞った気がする。
俺はマスターのちょっとどう表現していいのか判らない目線を避ける様にして顔を覆った。
「いや~、ダミーのイベ書すっぽ抜けた時、本物じゃなくて良かった~って思った。さすが国之さまだよ!!」
「おいぃぃ!!」
俺の身体を再度恐怖と震えが襲った。
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