第147話 俺、とっときの最終兵器をちらつかせてみる

アマテラスの言葉に俺が強い決心を固めた時、更に混迷する自体が起こった。


「わわ!また来た!?」

アマテラスが驚いた様な声を出すとモニターに背広を着た初老の男が現れた。

「探したぞクロートー。」


正直モニター付近は詰め詰めでなんともきつそうだ。


「助かりました、チェアマン。」

「「「チェアマン!?」」」


この初老の男がチェアマン!?ていうか世界統治機構のAIが来ただけでビックリなのにチェアマンが来るってどういうことだよ!?


「どうやら危ない所だった様だな。見事なルート隠蔽で私でなければ探しきれなかったぞ。」

「クロちゃん閉じ込めながらネットワーク情報をどんどん書き換えてたのに!なんでわかっちゃったの!?」

アマテラスが悔しそうにチェアマンを睨みつける。


「親し気に呼ぶんじゃないわよ!」と抗議をするクロートーを放置してチェアマンが嬉しそうにい説明する。

「クロートーの消えたあたりから追跡していたからな。探したというより追いついた、と言った方が正しいな。」


「それなら同じ様にインプリズンすればいいだけ!」

アマテラスはそう言うが早いかパネルを操作し始めた。


「ふっ、流石に私は単身で乗り込む程抜けていないぞ。」

その言葉に全員がクロートーを見る。


「っち、違うわよ!ちゃんと別の人が来られる様に足跡つけて来たけど消されただけだから!!」


一瞬の沈黙はあったが話は続けられた。

「まぁ落ち着きたまえ。君がこのワールドの創造神、という事でいいかね?」

「ええ、まぁ。」


流石のボスの前で俺のさっきの決心は消し炭の様に消えかかっていた。

次に何を言われるのかとびくびくしているとチェアマンは続けた。


「申し訳ないが、君のワールドはこの実世界に影響を及ぼす可能性がある。そのためこのワールドは接収させてもらう事となった。もちろん一方的に接収するので補償が与えられる。新しい世界創造ワールドクリエイトとイベ書を好きなだけ使える手配、それと一生生活できるスコアが提供される。」


チェアマンはこれでもかという好条件を俺に提示してきた。

一体これだけの好条件が提示されるとかどういう事なんだ?

正直言えばアマテラスさえ新しいワールドに移せるなら答えはイエスだ。


以前それはできないと言われていたがトップオブトップのAIならそれくらいできるんじゃないのか?試しに俺は聞いてみる事にした。


「新しいワールドにアマテラスも移れるなら喜んで飲むんだけど。」

「済まないがそれはできない。ある意味エージェントの一部はワールドによって構成されているので不可分なのだよ。」

俺の返答にチェアマンは作った様な申し訳ない顔で詫びた。


そうなら俺の答えは決まっていた。

「じゃ、無理だ。どれだけ積まれたって家族や親友、恋人を差し出す人なんていないだろ?」

「なるほど、まぁそれなら仕方ない。お互いに納得の上で取引できるのが一番なんだが、世界統治法第4章8条32項に沿った接収を実行させてもらうまでだ。」


なんだか実力行使を感じさせる言葉を並べてチェアマンが言い放った。

それを聞いてマスターが怒りを露わにしてかみついた。

「ちょっと、そんな一方的な接収認められないわよ!統治機構は人民の安全と人権を尊重するための中央機関でしょ!財産の一方的な接収なんて憲章違反だわ!」

「そうだそうだ!!」

俺も微力ながら加勢する。


「それが脅かされる事態という事だ。とにかくそのワールドは危険なのだよ!!」

「だからその危険ってなんなのよ!?ワールドの発展パターンによって譲り受けをする事はあっても強制的接収なんて初めて聞くわよ?」

「それは口外できない!私達の想像のはるか上を行く出来事が起きているのだよ!」


なんだか内容に進展の無い会話に俺はだんだんイラついて来ていた。

理由も説明できない、エージェントも移せない、ただただ危険危険と言われてハイそうですかと納得できる奴がいるはずもない。


「アマテラス!もういい、俺のワールドが危険だってんならワールドを終わらせればいいだけだ!SR『神の怒り』を使ってくれ!!」

「お、おい、やめろ!それはやめてくれ!!」

「このワールドが危険でアマテラスも移せないってんだろ?だったらこのワールドが一度サラに戻ってアマテラスと作り直せば文句ないだろうがよ!!」


「さすが国之さま!!さぁチェアちゃん、どうするの!?」

アマテラスがイベ書を取り出してあたかも人質の様に構える。

「まてまて!!早まるな!」


おお、思った以上の効果だ。

俺が思わぬ威力にむしろ毒気を抜かれているとアマテラスが続けた。


「因みにたった今世界は成ったよ!」

「な!?本当だったのか!?そ、それならなおさら後には引けないという事だ!」


「あなたが私をクラックするスピードと私が『神の怒り』を使うスピード、どちらが速いかな~。」

と言ってアマテラスがイベ書持つ手を振り上げた瞬間にすっぽ抜けた。


「ふぎゃーあああぁぁぁ!!!!」

一体どこからそんな高い声が出るのかというほどの高い声をチェアマンが絶叫した。


「なーんて、本物はこっちでした。」

落ちたイベ書が実行されたが、アマテラスはそれとは反対の手からもう一冊のイベ書を取り出した。


おお、なんかチェアマンの精神HPが削れるのが目に見える様だ。

なんかわけが解らんが凄いぞアマテラス!未だかつてないくらい冴えわたってるぞ!


「チェアちゃん、考えはまとまった?」

「まとまるか!!」

「チェ、チェアマン!?一体!?」


どうやらクロートーにも理解できない領域らしい。

俺とマスターも最早傍観者だった。

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