第143話 俺、リアルで逃走する事になる
アマテラスにお任せしてから今日が二日目だった。
俺は学校に居るのにワールドがどんな発展をしてるのか凄い楽しみで授業の殆どを聞いていなかった。
授業の内容は空間パリティに対する歪み操作の基礎についてだった。
「あー、この様に、空間パリティの非対称性が存在している事は宇宙に対する構造的歪みが存在しているという事であり、その歪みに対する操作を行う事で我々は宇宙外空間に対して―」
その時、俺の端末からアマテラスの声が響いた。
『国之さま~!!早く、早く帰ってきて!!』
っちょ!?え?なんで端末から?
しかも今授業中だぞ!!!
教室に居る全員が俺の方を向いている。
俺は慌てて端末を取り出して音声をオフにした。
が、全く効果が無かった。いや、消したつもりだった分余計心臓に悪かった。
『国之さま~!!大変なんだってば!!急いで急いで!!』
なんでだー!!
俺は最早待ったなしと席を立って走って教室を出た。
「おい、何があった!?授業中だぞ?」
俺が端末に話しかけてみると、どうやらアマテラスの方でも聞こえるらしい。
「それどころじゃないよ!!このままだと世界が無くなっちゃう!」
「な、なんだそれは!?アマテラス、お前を信じて任せたんだぞ!!」
「それとは別問題なんだよ~!とにかく早く帰ってきて!!」
今まで苦労して作って来たワールドが無くなるなんて冗談じゃないぞ!?
俺は走って家に向かった。
そして息を切らせて俺が部屋に入るとそこにはアマテラスとなぜかもう一人エージェントっぽい何かが向かい合ってパネルを操作していた。
お互いの顔は真剣そのもので、互いににらみ合いながら黙々とパネルに対してなにかを打ち込んでいる様だった。
「あの~、どちらさま?」
俺が声をかけるとアマテラスがこちらも見ずに叫んだ。
「国之さま!!急いでエナジーラインから
全く状況が飲み込めない俺は何を言われているのか判らず棒立ちのままだった。
「早く!!世界が無くなっちゃう!」
無くなっちゃうの言葉に俺は我に返って急いで
それを受けてか向いに居た見知らぬエージェントが悔し気に呻く。
「っく、逃がさないわよ!」
そんなことを言いながら必死にパネルを操作していたが、徐々にその姿は薄くなっていき、遂には消えてしまった。
「あ、アマテラス、一体何が?」
相手が消えて大きく息を吐いて座り込むアマテラスに俺はとにかく状況を確認しようと声を掛けた。
その瞬間アマテラスはすくっと立ち上がった。
「こうしちゃいられないよ、国之さま!!急いで
「はあ?てか一体どういう事態なんだよ!?」
「だからそんな時間ないんだってば!事情は移動してから話すからとにかく準備!!」
俺の頭の中は混乱と疑問でかなり緩慢な動きで準備をし、どうにか家から出た。
「そしたらまずは左の方に向かって!次の十字路を更に左に!」
なぜか目的地も知らされず端末から方向だけ指示されて走る俺。
それから30分程急ぎ足であっちだこっちだと移動させられ、気づいたら喫茶『想像してごらんなさい』の前に立っていた。いやなんで歩いても20分の距離を30分も走らされたんだ?
店は営業日にも関わらず何故か『Closed』の札が掛けられている。
アマテラスに言われるままに俺が店の中に入ると、マスターが待ち構えていたかの様にドアの裏に立っていた。入るのを躊躇している俺をマスターはひっ摑まえる様に薄暗い店に引っ張り込んでドアを閉めた。
なんかいつもと違うと思ったらドアのベルが外されてたのか、なんてことを考えていると、俺はマスターに引っ張られて控室に入っていた。
俺とマスターは向かい合って控室のソファに座ると俺はようやく人心地ついた。
いやー、こんなに長時間走ったのとか久しぶりだわ。
昔は少し運動してたけど、ホント数年やらないだけで体力って落ちるんだな。今度ちょっとまた運動始めようかな?
「で、どういう状況なの?」
いつにないマスターの真剣な声色に俺は自分の状況を思い出した。
いや、俺は今の異常な状況の原因をなんにも知らなかった事を思い出した。
「そ、そうだ!アマテラス!!一体どういう状況なんだ!?」
俺は端末に向かって叫びかけて、抑えながら問いただす。
「あ、まずエナジーラインにつないでもらっていいかな?あと2時間前後で処理が終わりそうだから。それが終わったら無事に帰れるはずだから!」
その声にマスターが頷いてエナジーラインの場所を指さす。
流石の俺も勤めは長いのでエナジーラインの場所くらいしってるんだけど、多分これはマスターの黙って繋げという促しなんだろうな、と俺は察した。
俺は箱から
アマテラスが出てくると、俺とマスターはアマテラスが話し始めるのを待った。
アマテラスは動作チェックかなんかをしてるのかパネルを操作して、しばらくしてからこっちに顔を向けた。
「うーん、どっから話せばいいのか・・・」
そんなことを言いながらアマテラスはぽつりぽつりと話を始めた。
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