第142話 俺、アマテラスに未来を託す

アマテラスがSR『予知』を使うといつも通り未来が次々と映し出される。

その途中で俺は少し気になる事があった。


「なあ、アマテラス。なんか戦争の場面が減ってない?」

場面がモニターに次々と映し出されているのだが、戦争のシーンが現れる割合が徐々に減っている様に思えた。

「あ、うん。そうだね~。今の状態だと滅亡シナリオにならないみたいだよ。」


こんな平和な未来を見たのは初めてかもしれない。

俺は逆に気になってアマテラスに質問した。

「一体どんな未来になったんだ?」

「うーん、どんなって聞かれると難しいけど、AIが発達してかなり科学が発展するみたいだよ。それで戦争がかなり減ってるみたいだね~。」


「ん?戦争が少なくなったら俺のワールド弱くならない?」

俺はふと疑問に思った事を質問した。世界が平和なのはいい事だが、俺のワールドが弱くなったら本末転倒もいい所だ。


「その心配はないよ!」

アマテラスは自信ありげに胸を叩いた。


「むしろ、今の状態より全然強いくらいだよ。」

「え?何それ。核を超える兵器が出てくるとか?」


俺は恐る恐る聞いてみた。

核ですらかなりの威力なのにそれを超えた兵器とかワールドが滅亡しそうだ。

いや核だって使いまくって普通に滅亡してたんだけど。


「あ、核を超える威力の兵器が出てくるわけじゃないんだけど、エネルギーがより効果的に使われる様になって兵器全体の威力が上がるとか、AIによる兵器運用で効率性が上がるとか。ん~、私じゃちょっと説明は難しいかな?」


うーむ、つまりいつでもクリティカルが出るとかそんな感じなのか?


「あとねぇ、無人のAI兵器が増える事でパーティー戦に30体のマシンアームズが参加できてかなり強いと思うよ。」


なんだそのいかにも戦いますみたいな名前?

しかもパーティー戦に復帰できるとかナイスすぎるな!


「よし、アマテラス!どんどん時代を進めよう!!」

「さっすが国之さま!どんどん進めちゃうね!!」


「しかし、なんかやけに未来の兵器に詳しいな?」

「え?うん、まあね!えっへっへ~。」


アマテラスは得意気に鼻の下をこすりながら、そう言うとパネルを操作して時代を進めにかかる。

「うーん、この感じだと終わるのにあと2日位かかるかなぁ。」


終わるってそう言えばどこまで進めるかとか話してないよな?


「終わりって、そう言えばどれくらい進めるつもりなんだ?」

「え?あ、うん、まかせてまかせて!!」

「お、おう。」


よくわらんがアマテラスがいい感じで止めておいてくれるって事なんだろう。

なんかいつもと違ってなんかブツブツ言いながらパネルいじってる気がしないでもないんだが。


「あ、国之さま。あとね、ちょっとだけイベ書を使わせてもらいたいんだけどいいかな?」

「へ?イベ書を?それだと未来が変わっちゃわないか?」

「うん、でもワールドを微調整したらもう少し良くなりそうだから。」


俺はアマテラスと未来を変えるのに色々と四苦八苦した過去を思い出していた。

あまり成功したという記憶がない・・・。


俺は疑わし気にアマテラスを見た。

アマテラスは不思議そうに首をかしげながら見返して来た。


「なんか、不安しかないんだけど?」

「え~、やだなぁ国之さま。今までだって上手く行たでしょ?」

「ああ、結果的には、な。」


それを聞いて突然アマテラスは泣き出した。

「ひ、ひどい、国之さま!今までだって一生懸命やってきたのに。」


え?ちょっ?なに?

俺は今までにない反応にかなり動揺した。

正直女の子の泣いてる現場に居合わせるとか初めてすぎて頭の中は真っ白だった。


「いやいや、確かにお前は良くやってる!うんうん、お前はすっごく頑張ってるよ!だから泣くのやめてくれぇ!」

「じゃあイベ書使ってもいい?」


手の甲で涙をぬぐうのを止めてちょっと上目遣いで俺の顔を伺うアマテラス。

というかこれウソ泣きじゃないのか?

「そ、それはちょっと。」


俺の返事でさらに激しく泣き始めた。

「うわ~ん!国之さまが私を信じてくれない~!!変な設定のワールドで頑張って来たのに!普通じゃないワールドでデュエルだって頑張って来たのに!滅亡しか無いワールドをどうにか変えて来たのにぃ~!」


何とかなだめようとしていたが、なんか色々と俺の方に突き刺さるものがあり、俺は遂に降参した。

「分かった、イベ書使っていいから!好きなだけ使っていいから!!」


その言葉を待ってましたとばかりにアマテラスは顔を上げた。

「うん、約束ね!!」


分かってた。このパターンだって思ってた。

もうね、『予知』なんて使うまでもなく見えてる未来だったよね。


「国之さまのためにがんばるよ!!」

さっきのウソ泣きが本当にウソ泣きだったんだなって確信する笑顔で親指を立ててくるアマテラスに俺も力なく親指を立てた。


そして時間も時間なので寝る事にしたのだった。

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