第132話 俺、問題を矮小化する

俺は新しく出たアマテラスの指すブツについて少し探りを入れる事にした。


「あー、アマテラスさんや、その資料とか仕様とかいうのはなにかね?」

「うん、それはね、つい先日ようやくゲットできたやつなんだよね!これ探し出すのに分散コンピューティング活用したり軍施設の「あー!!」」


俺は慌ててアマテラスに言わせない様に言葉を重ねた。

やばいやばいやばいやばい!これ絶対やばいやつじゃん。

てかなに、掘ったら掘っただけやばい単語が出てくる気しかしないんだけど?


話題!話題変えないと!!

アマテラスは何事かと怪訝な顔でこちらを見ている。


「いや、大事な事を思い出したわ!!そうだったそうだった。いやー、あっぶね。」

俺は自分の頭をペシペシと叩いてアマテラスに話をつづけた。


「実はさ、天野さんと渦目さんにも俺のワールドのユニット送る事になったんだよね!それで悪いんだけど、これからのトレードに2人を追加してもらえるかな。」


俺の言葉にアマテラスは手を打って応えた。

「あ~、その件ね。それなら大丈夫だよ!!ちゃんと二人にはイケメン送っといたから!!」

「え?何を送ったって?」

「うん、イケメンなユニットを選んで送っておいたよ!あ、安心して!しかりと天音ちゃんの好みのムービーとかチェックしてチョイスしたから!!」

「ちょっちょっちょ!なんでそんなの送ったの?」


膝を折る俺にアマテラスは不思議そうに首を傾げた。

「え?だって国之さま私に言っておくって言ってたよね?」


その言葉を聞いて俺は少し背筋が寒くなった。

え?マスターからの情報?確かにそういう話しそうだけど、俺がそう言ってたとか言うかな?いや、言う可能性はゼロではない。ゼロではないけど、なんだろう、このぬぐえない違和感。


「ア、アマテラス。その情報は一体どこから?」

「あ!え~と、マスター・・・かな?」


どう見てもアマテラスの目は泳いでいた。いや、AIなのにそこまで感情作る必要ある?ってくらい判りやすく泳いでた。こっちとしては判りやすくてありがたいけど、製作者はなんかもっと作り込む必要がある箇所が一杯あったと思うわ。


「嘘は良くないぞアマテラス?」

明らかにギクゥッ!?って擬音が似合いそうな反応をみせたアマテラスに半眼の視線を向け続けると遂にアマテラスが屈した。


「じ、実は見てました。」

「いやどうやって!?」


詰め気味に問うとアマテラスがおずおずと話始める。


「ネットワークからシモンくんのカメラとマイク情報共有して、あと店内のカメラとかも使って。あ、学校とかも結構カメラがあるんだよ!あそこはマイク機能が殆ど無いのがネックなんだよね~。あと街中のカメラとか~、お店にあるのなんかもネットワークに―」

「っちょ!ちょっと待て!!」


もうこれ以上聞きたくないと俺はアマテラスを制止した。


うわー!問い詰めたいのに怖いもんボロボロ出てくるから問い詰められね~!!

てかこれ本当にどこにも漏れてないんだろうな?こいつができる事を他のエージェントとか管理者ができないとかあるのか?こちとらこんなにすぐボロ出す様なエージェントなんだぞ?


しかもこいつ話し始めたらなんか段々自慢気にボロボロ余罪告白してない?

聞いていないよ、俺、そんなとこまで聞いてないから!!


なんか運動もしてないのに息あがて来たわ。

ちょっと落ち着こう。こういう時は深呼吸って聞くもんな。

吸って~、吐いて~、吸って~、吐いて~。


俺は深呼吸を終えるとアマテラスを注意する為に口を開いた。

「アマテラス!他の人のカメラに入っちゃいけません!」

「え~ダメなの?」

「ダメです!もし万が一見つかったらどうするんだ!お前は処分で、俺だって捕まっちゃうかもしれないんだぞ?」


俺の言葉にちょっと考えるしぐさをするアマテラス。

あと一息か?


「ていうかお前シモンにばれないのかよ?あいつとお前は同じスペックのエージェントだろ?」

「それなら大丈夫だよ、国之さま。」


「いや、どう大丈夫なんだよ?」

「普通エージェントはセキュリティ機能を持ってないから、抜けられたら全く無防備なんだよ。だからシモン君がそんなことされてるなんて露程も知らないよ。」

アマテラスは楽しそうに口を押さえている。


「ってそれむしろダメな話じゃん!お前もセキュリティ雑魚って事じゃん!めっちゃ危ない話じゃん!!お前誰かに覗かれてないだろうな!?なんかこの部屋で聞かれたりしてないよな!?」


なんなんだこの無邪気な無鉄砲さんは!?

シモンがセキュリティ雑魚ならお前も雑魚じゃん!なんなのこの自信!?


「もう!国之さま、私がそんなとこに手抜かりがあるわけないでしょ!?」

いや、お前は手抜かりばっかだぞ?俺にすら隠し事できないし。


「いや、あるだろ。お前おっちょこちょいだし!ていうか不安しかない!」

「大丈夫だよ~、バッチリ疑似スタンドアローン化して通信全部監視してるし、ネットワークルートも隠蔽して足跡消してるし、断片的マルチルート通信で何やってるか判らない様にしてるし!もうね、これ以上ないくらい隠蔽されてるよ!」


「言ってる意味の9割が意味解らないが、っていうか違うわ。そんな話じゃないわ。俺を覗き見るんじゃない!!」


そうだった。話はシンプルだった。

どこかで日々のぞき見されてるとかエージェントでも落ち着かないわ!


「は~い。」

なんかアマテラスから反省の感じ無い返事をもらってこの話は幕を閉じた。


この日、俺は言うべきことを盛大に間違えていたと思う。

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