第129話 俺はいったい何をみせられているのか
俺が何か使えるイベ書が無いか探してるといきなりアマテラスが慌てたような声を出した。
「国之さま!!すぐ!すぐに『偶然の出会い』使わせて!!」
「ああ、それくらいなら使っていいぞ。」
「ありがとう!!」
慌てた様子でアマテラスがイベ書を発動させる。
モニターには一軒の家が移っていた。そこの玄関からパンを咥えた女の子が駆け出して来た。
『んも~!転校初日から遅刻とか!なんで起こしてくれないのよ~!!』
なんかパン咥えた女の子の器用な独り言が聞こえる。
イヤな予感しかしない俺はついモニターを凝視する。
そして彼女が角に差し掛かると、案の定人とぶつかった。
いや、なんかアッパー喰らったみたいに跳ね飛んでるわ。
一体どんな勢いで当たられたんだ!?
『キャッ!』
いや、「キャッ!」で済む飛び方じゃないぞ?
って違った、声出したの相手の女の子だわ。
てっきり古典的展開かと思ったら普通の衝突事故かよ!!
「あれ~?」
アマテラスが何か怪訝そうに唸っている。
うん、まぁその気持ちは俺も解る。
『ご、ごめんなさい!!』
『うん、私もごめんね!』
『あ、ちょっと待って!パン、落としたわよ。』
え?拾うのかよ!?地面に落ちたパン拾うのかよ?
いや、確かに捨てたままはダメかもしれない。けど親切っぽく拾うものじゃないぞ?
『あ、ありがとう。』
いや、お前も嬉しそうに受け取るのかよ!?
『よかった!バターが上だった!』
いや、砂払ってまた食べるつもりかよ!未開拓世界たくましいな!!
あ、また懲りずに駆け出した。
しかもなんか女の子が光ってる・・・。
「アマテラス!イベ書使ったか!?」
「てへ、バレちゃった。」
「いや、バレちゃったじゃねぇよ!コモンとは言え勝手に『っおぅ!!』」
モニターから再度強暴な音がして、不意を突かれた様な声が俺のセリフに被さった。
見ると跳ね飛ぶ女の子が一瞬スローモーションの様に見えた。
なに?なんなの?あのイベ書って全部衝突して出会うとかなの?こっわ!
「あ~、良かったぁ。」
なんかアマテラスが満足気に嘆息していた。
いや、あまりよくないだろ・・・原因知ったら健康被害で訴えられるぞ?
『っちょ!これで完全に遅刻じゃない!!』
『ご、ごめ』そこまで言いかけて男の子が顔をそむけた。
俺の角度からは確認できないがどうやら見えちゃってる様子だ。
『なっ!』
『ごごご、ごめん!!わざとじゃないんだ!!』
慌てて隠す女の子に男の子が拝むように謝る。
しかし握りこぶしを握っていた女の子はハッとした様に置きあがると走り始めた。
『あなた覚えてなさい!いつか代償を払わせてやるんだから!!』
いや、なんか違う。それ三下が逃げる時の捨て台詞だよな!?
いやいや、そこじゃないわ。肝心な事を忘れるとこだった。
「アマテラス、いったいどういう事だ?」
「あ~、えっと国之さまこれはね、すっごい大切な事なんだよ!」
「いや、大切って意味がわからんぞ?なんか人類滅亡に関わるとかなのか?」
「この子はね・・・えーっと、そう、両想いなの!すっごく両想いだからくっつけてあげないといけないんだよ!!」
は?両想い?俺が片思いで苦労してるのに両想いだと!?
しかもイベ書でスムーズに恋愛ラブッとかぜっっっったいに許せんだろ!!
世の中には
「アマテラス!俺はそんなこと『東京から引っ越して来た
っく、また俺のセリフに被せて来やがって!
俺がモニターを睨みつけると秋音が席に向かってる途中でガラリとドアが開き、さっきの男の子が入って来た。
『あー!!あんたは!!』
『き、きみは!?』
言うが早いか秋音が男の子の襟首を捕まえてゆすっている。
『ここであったが百年目よ!』
『ひ、ひぃぃ~。』
そんな二人を先生がなだめて授業が始まった。
そこから先は正直見てられなかった。いや見てたんだけど。
男の子の名前は
名前が剛なのに悲しいくらい秋音に弱かった。あの一回の事故でゆすられ続ける事になるなんて剛も思いもしなかっただろう。
しかも俺と同じ苗字なので俺は俺で心がゆすられた。
最初の頃は苗字呼びだったから呼ばれる度に凄くイラっとしたが、途中から名前呼びになったらなったでイラっとしたのは何故だろうか。
それから紆余曲折あったわけだが、その度にアマテラスがハッスルしてイベ書を使うのを俺は止められなかった。
というかこいつの情熱はなんなんだ。今まで見たことが・・・いや、確か俺のワールドにドラゴンしかいなかった時も似たような事あった気がするわ。
まぁそんな大層なイベ書は使わないからいいんだが。いいんだが許せねぇ。
とは言えここまで来たら俺も事の顛末を見守るしかなかった。
「さあ来い!!来い!!来い!!」
いや、アマテラスさん?食いつきすぎですよ?俺が良く見えないから。
『あ、あんたみたいな男、本当は誰とも付き合えるはずないんだからね!!この私が面倒みてあげるんだから感謝してしっかり養いなさい!!』
『お、おう。俺も好きだよ、秋音。』
『す、すきだなんて言ってないんだからぁ~!!』
「キタ~~~!!!見事なまでのツンデレアタック!!」
「あ、ああ。」
アマテラスの喜びあふれる盛大なガッツポーズに俺は若干引いていた。
「いや~、みました国之さまぁ。まるで一本のメロドラマを見た様な満足感!」
「いや、見たよ!たった今まで見せられてたよ!!」
くっそ~結局最後まで見てしまった!
アイツらイベ書なんかでくっついて、創造神の俺は自力とかずる過ぎだろ!?
気付けば夜は更けていた。
あ、因みに最初に衝突した子は親友枠でした。
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