第128話 俺、戦争の結末に凹む

会議は困惑に満ちていた。


「そんなことがあるのか?たった一人で艦隊を壊滅させるなんて映画でだって見た事がないぞ?」

「その通りだ。核兵器があったならまだ解る。それなら我々もそれに対するプロトコルを実行するだけだ。だが、それがもし一人の人だったとしたら?」


「こんなことが今世間に漏れて見ろ!議会でつるし上げられて我々の政治生命は終わりだ。」

「そんな事はいい!!そんなの早いか遅いかの違いでしかない。もし政治的理由で今回のミッションが中断したらどうなる?現地の彼らは立ち往生して全滅だぞ!?」


「そんな生き物が本土に上陸してみろ!ビルはへし折られ、住民は炭にされ早晩国ごと滅ぼされるぞ!?」

「今の状態でいったいどんな対抗策が取れるというんだ?そんなものを倒す手段は核しかない!しかし、核だって当たらなければ単なる鉄の塊だ。それだけのスピードで動く目標を倒すなんてできるかも分からない!」


その言葉に場は静まり返った。

誰もが出そうか躊躇した言葉。誰かが出してくれるのを待っていた言葉。

以前に軽く口にした者を非人道的と非難してしまった軍職の彼らの待ち望んでいた言葉だった。


「そうか、核だ!核はどうだ!?」

さも気づかされたかの様に言葉を選んで問う。


「そうだ!あれだけの被害がたった一体の生物で成せるはずもない。奴らは核に相当する何らかの魔法兵器を使ったんだ!我々はプロトコルを発動すべきだ!」


彼らの中で結論は出ていた。しかし民主主義においてプロセスと合意形成は大切な手続きなのだ。


それぞれが同意の言質を取られ、それらは議事録にまとめられて後世に公開されることになる。彼らには卑劣な敵に対して報復する必要性を残す必要があった。


彼らはその核兵器に匹敵する魔法兵器の『あるであろう』都市を複数ピックアップし、そして核の発射プロトコルが実行された。


僅か数分で処理は最終段階に進み、大統領が意を決した顔で認証コードを電話で伝える。彼が電話を置くと、全員が大統領の顔を見て黙っていた。


今頃4隻の潜水艦からそれぞれ4本の核とダミーのミサイル12発が王都を含む3つの都市に発射されているはずだった。


約10分後、核は王都の防衛結界を一瞬で引き剥がし、続けざまに投げ込まれた核で街を破壊し、城を吹き飛ばし、人々を塵へと返した。

その威力は大戦で使われた原爆の実に15倍、それが6発立て続けという情け容赦のない攻撃であった。


各都市に立ち上がる4本の火柱は王国タクトクルト・ガーランドのほぼ全土で見る事ができた。その映像はホワイトガーデンにも送られてきていた。


「私は国民へ説明をしてくる。」

レガーネ大統領はそう言って立ち上がると部屋を出て行った。

その顔は勝利宣言をしに行く者の顔ではなかった。


————————————————————


俺とアマテラスは度々遭遇する不吉なキノコ雲を黙ってみていた。

それから少しして画面にWINの文字が浮き上がる。

画面には国民に向けて演説する大統領の顔があおり角度で映っていた。


「な、なあ、アマテラス。ちょっとやりすぎじゃない?」

「う、うん。でもそう言われても私たちじゃどうにもできないし。」


まぁどう考えても勇者が出てきたら対応手段が核しかない気になるのは解る。

というか一人しか居ないとは言え、一人で艦隊潰すとかぶっ壊れもいい所でしょ!?


これで更に俺のワールド生まれの勇者だったりしたら一体全体どんな事になるんだ?

しかも一人ならまだ数で押せそうな気もするがそれが10人とかいたら・・・。

俺のワールド生まれだとあり得るんだよなぁ。


だがそうは言ってもあのキノコ雲はなんか色々と思い出させて気分が沈むのでやめて頂きたい。というかなんかメッセージ鳴りまくってるし。どう考えてもラッキータッキーからのクレームとしか思えん。別にズルしてないのに責められてしまう双方の納得感の無さよ。


「あ~、アマテラス、彼からのメッセージは全部シャットアウトで頼む。」

「は~い。」


漸く静かになったので落ち着いて話ができる。


「なぁ、核使わないでも俺のワールド勝ててたか?」

「うん、だって勇者もう意気消沈していなくなってたからね。あの流れなら倒せてたよ。」


「じゃ、戦場からいなくならなかったら?」

「うーん、一人しかいなかったしね。やっぱり数で押せたはずだけど。」

「なんか自信なさげだな。」

「私もあのレベルが居ると思ってなかったから。あのレベルが戦う気で来たら作戦次第では負ける可能性もあるのかもだよ。」


「だよなぁ。艦隊が一瞬だぜ?あれこそチートだわ。」

「まぁ素早く航空部隊で王都を爆撃して超短期で戦争を終わらせるのが一番かな?」

「ああ、俺もそう思うわ。次からその作戦で伝えてくれ。」

「らじゃ!!」


アマテラスはビシリと敬礼して応えた。


「でも今日はもうやめとくわ。なんかエライ胸やけ展開だったし。」

「りょうか~い。私もあのキノコ雲はできれば見たくないかも。」


俺はワールドに隕石を落とした時のアマテラスの顔を思い出した。

うーむ、アマテラスにもなんか嫌な思い出的な感情があるんだな。


そんな事を考えながら俺は今使えるイベ書が無いか探し始めた。

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