第119話 俺、一瞬で結末を得る

キングダム戦は丸々一つの国がコピーされ、相手の首都や王都、要は国の本陣を占拠することで勝負が着くというものだ。そこに至るまでにはいくつかの都市や拠点があり、それらの拠点を順次潰しながら本陣に至る必要があるわけだが、それがどこにあるのか、どの道が一番楽なのかは分からない。それらはその国が探索しながら決定していく事になる。


ただ、その首都のある方向だけは指示され、そこに向かえば敵の本陣がある事だけは確実だ。そしてそれ以外の国の周りは限り無い海となりどこにも行きつく事ができない。国の地形はそのままコピーされるので大きな国が広さ故に有利になる事もある。


期間は3年。

本陣を落とせなければどれだけ相手に攻め込めたかが判定基準になる。


そしてフィールドが表示された。

それは圧倒的に広大なマップだった。


何せメリカン合衆国はその広さが約1000万㎢もあるのだ。

そして相手の領土はかなり小さく25万㎢程度だ。

どう考えても相手が俺の本陣に届くことは無いだろう。

何せ今回、相手は魔法が使えないからだ。


そして遂に戦争が始まった。

が・・・。


それは圧倒的なワンサイドゲームだった。

正直ここまで酷い事になるとは思っていなかったので俺は唖然としてモニターを見ていた。多分俺のワールドで戦ってくれる人はあっという間に居なくなるな。


まず圧倒的だったのは海戦だ。


そもそも敵は魔法ばかりで砲撃が無い。

砲台代わりの魔法使いが使えないので単なる帆船だ。

走り回るだけの帆船がタービン載せて魚雷打ち出す巡洋艦に勝てるわけがない。

なので相手は成す術もなく次々と砲撃で撃沈されていった。


それは、ちょっと攻撃してるこっちが罪悪感を感じる程の攻撃で、相手の船はことごとくキールを折られて沈没したのに、こちらの船は一隻たりとも攻撃を受けなかった。沈まなかったんじゃなくて、攻撃を受けなかった。


その後の上陸作戦も相手の反撃らしい反撃を受けずに成功し、そこから港湾都市を占拠。空母の飛行機で偵察を繰り返しながら、その都市を拠点化し、滑走路を構築した。


滑走路ができれば最早なんの躊躇もなく攻め込んでいく事ができる。

何せ次々と大型貨物機で兵隊と物資を運びこんで来るのだ。

圧倒的物量の前に成す術のない戦争はなんのロマンも無くただただ惨いだけだった。


そして、次々と落とされる城塞都市に遂に相手が溜まらず降参してきた。

その後、対戦相手のラッキータッキーから不満たらたらのメッセージを受け取ったのはある意味お約束だ。きっと次会う時はアンラッキータッキーになってるに違いない。


「アマテラス、今のは俺もちょっと見てらんなかったけどもう少し強い相手と俺のワールドでやったらどうなるんだ?」

「うーん、国之さまのワールドでやったら基本殆ど変わらないと思うよ。というかいつも国之さまのワールドでできるならランキング1位も簡単に取れるよ。」


マジか、俺はキングダム戦世界ランキング1位を目指せるまでになってたのか。

いや、俺のワールド限定だけど。


「だって、魔法文明って魔法で殆どの事済ませるでしょ?それなのに魔法が使えなくなるんだよ?国之さまだけ火薬が使えなくなったらどこの魔法国にも勝てないのと同じだよね?」

「うん、凄い納得した。」


正直1位になるのは凄い魅力的だけど、この俺だけチートした罪悪感みたいのはなんだ?いや、別にチートしてるわけじゃないんだけどなんかやっちゃいけない事してるみたいな感覚がぬぐえないぞ?


いや、でも本当にチートしてるわけじゃないしなぁ。

うん、チートしてるわけじゃないんだし許されるよな?

よし、許される気がしてきた!いや、許す!俺が許すぞ!!


だが冷静になろう俺。その前に確認する事がある。

それは今のレベルで魔法世界で戦った時にどれくらい勝てるか、という事だ。

ここで勝てなければ無駄にランクを上げてもその後魔法世界でしかデュエルを受けてもらえなくなったら負け続ける事必至だ。


「よし、アマテラス。今のと同じレベルで魔法世界での対戦を組んでくれ。今の状態でどれだけやれるのか知りたい。」

「りょうか~い。このレベルなら特に問題無いと思うよ。」


そう言って映し出されたのは同じ対戦相手のラッキータッキーだった。


「って、同じ人はちょっとだぞ!?」

「でも、折角相手も希望してるみたいだし、別にいいんじゃないかなぁ?」

「すっげぇ気まずいんだが・・・でもまぁどうせ顔も知らん人だし、行くか!」

「お~!!」


そうして第二戦が始まった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

プレイヤー名:ラッキータッキー

プレイヤーランク:224,184

戦績:62%

国名:タクトクルト・ガーランド

規模:L

推定戦力:9,450,060

参加都市数:8

開拓レベル:30

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

国名:メリカン合衆国

規模:LL

推定戦力:9,907,320

参加都市数:16

軍隊規模:1280000

軍事力:1,032

開拓レベル:28

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


————————————————————


アマテラスがワールドアナウンスでメリカン合衆国全土に話をする。


「やっほ~、アマテラスだよ!みんなには魔法の世界の敵を倒してもらうよ。勝利条件は簡単!相手の王都を陥落させたら勝ち!これでまた元の世界に帰れるよ。」


なんだか状況の割には間抜けな言葉遣いでメリカン合衆国全土に戦いの説明が続けられる。

これによってメリカン合衆国の全国民は相手を倒さなければいけないという意識を持ち、何も考えずに戦争へと突入するのだった。


アマテラスが消えるとメリカン合衆国はすぐに戦争に向けて動き出した。

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