第113話 魔導騎士団の突撃
メリカン合衆国ジンガー駐屯地の兵士たちの一斉砲撃が開始された。
それは無数の流れ星が空を覆う様に闇を光の線で覆いつくす。
防御結界に着弾した弾は爆発し、街をイルミネーションの様に照らしていた。
住民は怯えた様に空を見上げ、身を寄せ合う。
王城都市シェマーンの城内では緊急招集がかけられ、主要メンバーが顔をそろえて対応策の検討をしていた。
「あの激しい攻撃が続く様なら防衛結界が朝まで保つかどうか。」
「あの攻撃の中、騎士団を出す事はできません。出ていく先で順番に殺されます。」
防衛結界は基本的に入る事も出る事もできない。
しかし、特殊な魔術印を持つ者は出る事ができるのだが、実際に出るためには3秒程の時間がかかる。
つまり、一気に魔導騎士団を出す事はできず、出た端から狙われたら、ただ殺されるだけの的になってしまうのだ。
しかし、このままでは防衛結界は破られる。
「魔導士長、大規模魔法はどうなっているんです。」
将軍は無理を承知で宮廷魔導士に確認をする。
「状況は変わりません。どうにか明後日に使う事ができるという程度です。」
「くそっ、やはりあそこで使ったのは間違いだったのか?」
今使った所で砲撃が止むかは分からないし、減らせる敵の数はほんの一部だ。
しかも、あの騎士団の敵である箱を巻き込めるかも不明。
そうであれば、あの時使った事自体は良い選択だった。
頭の中では解っているが、打開策が見当たらない。
「とにかく今は防衛結界が破られた時の対策を考えるんだ!」
「仰る通りです、陛下。」
彼らは考え込む様に押し黙る。
「しかし、あれだけの攻撃です、そんなに長く続くものでしょうか?」
「確かに、我々の魔導士部隊でも半日も攻撃魔法を打ち続けるなんて事はできません。つまり彼らの攻撃が止む瞬間が生まれるという事!」
「なるほど!その疲れ切った時に我が魔導騎士団を突撃させるのだな!?」
そして彼らは待った。敵の魔法が尽き、静寂の訪れる瞬間を。
しかし、遂にその時は来なかった。
物資の充実していたジンガー駐屯地はピストン輸送で弾薬を補給し続けていたからだ。彼らは必死であった。今相手を落とせなければ最早打つ手が無いと考えていた。
それも当然で防衛結界を破れないのであれば攻撃手段は無いし、戦車の数もかなり少ないので、あの大魔法で潰され続けたら歩兵での対応はかなり無理がある。
なのでこの一斉攻撃で防衛結界を破る事に全てを賭けたのだ。
それから更に8時間が経った。砲撃の強弱はあれど、その勢いは一向にやむことは無く、シェマーンには焦りが出ていた。
最早防衛結界は崩壊寸前であり、魔導騎士団が街を守る事はできない。
また、数の少ない魔導士が防御魔法を使っても焼け石に水である。
「最早街の防衛を放棄し、討って出るしかない!」
「まさかここまでの攻撃持久性があるとは、無念です。」
彼らは街の住民を城近くまで避難させ、魔導騎士団を正面と左右の門に配置する。
騎士団は決死隊であった。
城壁からの攻撃は距離が遠くて叶わないため魔導士団は城の道近くで攻め込んで来た敵を討つために待機する事となった。
そして全ての準備が終わり、城から突撃の合図が鳴り響く。
その音を受けて街中の教会の鐘が健闘を祈って鳴らされた。
城門が開き、防衛結界が解除される。
左側の門を担当した副団長のアーバッキはそれに合わせて号令を掛ける。
「全軍突撃!最早我が国の運命は我々に掛かっている!!我ら騎士団の名誉にかけて、命尽きるまで敵に剣を振りつづけろ!!」
「「「うおおおぉぉぉ!!!」」」
城門を壊さんと打ち込まれる砲撃を受けながら魔導騎士団が飛びだして行く。
彼らの目には国を守らんとする決意が籠っていた。
しかし、そんな彼らの決心を打ち砕く様に砲撃が雨あられと彼らに降り注ぐ。
そんな中を彼らは敵陣目指して突撃する。
後続はできるだけ前衛の陰になる様に走り、前が倒されれば自分が後ろの盾となり、敵の攻撃を受け続けた。
アーバッキの前にも常に部下が守る様に走っていた。
一人、また一人と彼らは力尽き、落馬する。
「副団、頼みましたよ!」
「どうか、我々に勝利を!」
「副団!!僕らの仇を!!」
彼らはアーバッキに全てを託し、声を掛けながら死んでいく。
アーバッキをいつもサポートしてくれたドードス、真面目で融通の利かないガーデル、入って3年の弟の様な存在のルミル。
倒れ行く仲間の名前を刻みつけながらアーバッキは走った。
魔法の射程まで来たとき、ようやく反撃に入り、彼らは魔法で敵兵士を次々と倒していった。
鉄条網のバリゲート前まで来たとき、800いた味方は既に300に減っていた。
そして遂にアーバッキが先頭となり、バリゲートを飛び越えた。
しかし、鉄条網は思いのほか高く、馬が転げ、アーバッキも落馬しながら着地する。
彼は、防御を高めにしながら周りの敵兵を魔法で倒すと、すぐに姿勢を戻し、戦車へ向かって走りだした。
戦車もそれに気づいて砲塔を彼に向けた。
その戦車の砲撃音はアーバッキに良く聞こえた。
彼は避けられないと悟り、盾に向けてより強く防御魔法を張った。
迫りくる弾丸は彼の盾に吸い込まれる様に直撃した。
激しい衝撃が彼を襲い、防御魔法が瞬時に割られ、盾ごと彼の左腕を吹き飛ばした。
しかし、彼は立っていた。
左手から盾が零れ落ち、右手は剣を構え、痛みに耐えながら、一歩一歩戦車へと近づいていく。
戦車と一緒に配置されていた迫撃砲の担当兵士たちが彼に向かってアサルトライフルで攻撃をしてくる。
最早彼に反撃する力すら残っていなかった。
防御魔法も殆ど展開できておらず、何発もの弾が彼の四肢を貫く。
何もできないと解っても彼は止まる事ができなかった。
死んでいった部下たちが彼の歩みを後押しするのだ。
しかし、それも防御魔法が切れるまでだった。
遂に無数の弾丸が彼の体を貫き、彼の歩みを身体的に不可能にした。
彼が前のめりに突っ伏すと同時に彼もこと切れた。
その最後まで、彼は戦車を睨みつけていた。
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どうにか更新できました。
いや、荷造りは終わってないんですが。
なぜか見てくれる人が増えていてここで負けてはいかんと思いました。
明日は・・・頑張れるか?
後日コメント関係は削除します。
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