第100話 俺、戦争の防止に頑張る2

俺は気持ちを切り替えて次の大戦を防止すべく因果を確認していた。


アマテラスはどう説明していいものか、かなり迷った様な言葉で語り始めた。

「次の戦争はねぇ、色々と事態が複雑すぎてどれに手を付ければな感じなんだけど、一番確率が高いのが、このちょび髭のおじさんの暗殺だと思うんだよ。」


アマテラスがバーンという風に両手をモニターに向けると、そこには綺麗な台形に整えた髭を鼻下に生やした男が映っていた。


「え、この人、一人が死ぬと戦争が止まるのか?人一人で戦争が起こったとかどんだけ影響力あるんだ?」

「一人死んで戦争が起こったんだから、一人死んで戦争が起こらなくなることもあるんだよ。」


なるほど、アマテラスにしては納得の一言だが、ちょっと信じられない。

というか暗殺ってどうやるんだ?危険を避けるとか試練を課すみたいのはできたけど、ユニットを死なせるとかできなかった気がするんだが。


「まぁそれで戦争が止まるとしてだ、どうやって殺すんだ?」

「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれました。」

アマテラスが自信あり気な顔で腕組をする。


「実は、イベ書に直接ユニットを殺す様なものはありません!しかぁし!しかしですよ奥さん!!」


誰が奥さんだよ!と俺はツッコミを我慢して続きを待った。


「御覧ください!ここに取り出したるイベ書。これで過酷な試練をどんどんと与える事で死亡率を高め、あるいは心労を増やして引退へと追い込むのですよ!!」

「おおぉ!?」


俺は並べられたイベ書に目を通す。

C『無謀な挑戦』、C『火中の栗』、UC『トラブルな人生』、UC『命を賭した試練』

これらのイベントは基本的に試練を与えて別のイベ書で助けながらパーティーを育てるためのものだが、命の保証は無いので、試練中に死んでしまう事もある。


「そしてそして!いざ危機が訪れたら、C『怖気づき』でとどめだよ!!」

「おお、見事な殺人コンボだ!これが一気に使われたらかなり可能性は高そうだな。」

「でしょでしょ!?じゃ、早速使うね!」


アマテラスがそれらのイベ書を一気に実行するとまだ若いターゲットの身体が光る。


こうして彼のトラブル続きで無謀な命がけの人生が始まったわけなんだが、なんだか様子がおかしい。


「アマテラス、なんか毒ガスで死にかけたのになんか使命感に燃えてるんだが?」

「た、確かに。普通トラウマで引退すると思うんだけど。」


「しかもなんか無謀な任務に率先して取り組んでるからか周りからの信頼が凄い事になってるんだが?」

「・・・普通あんなに戦場走り回ったら弾に当たって死ぬと思うんだけど。」

「なんか、俺たちあのユニットを鍛えただけじゃないのか?結局政治家になっちゃったぞ?」


アマテラスが引きつった顔を俺に向ける。

「ちょっと作戦を変えて、このゲーマン国を孤立させて無謀な戦争をやめさせよう!」

「いや、なんかそれってどうやるんだ?」

「うーん。ユニット一体は比較的効果も読みやすいけど、国になるとちょっと、私にも分からないかなぁ。」


いや、俺も政治とか何すれば他国から孤立させられるのか想像もつかないな。

俺はアマテラスに表示してもらったイベ書を見ていく。

そのうちの一つに目が行く。


SR『圧政からの解放』:圧政の敷かれる国を崩壊させ、新しい国が築かれる。


「おお、これを使えば国が一つ消せるぞ!」

「ホントだ!でもこれって今のタイミングじゃないような。」

「ムム、確かに。」


じゃぁこれならどうだ!?

R『治安向上』、R『賢王の誕生』!


すると、ゲーマン国で不穏な取り締まりが始まり、遂にちょび髭の男がその国の首相になった。この国にとって彼は賢王だったという事なのか?


俺のやる事なす事全てが裏目だった。

「な、なんかさ、ちょっとおかしくない?これなんかの強制イベント?」

「え?そんなことってあるかな?」


そう言うとアマテラスは手元で色々と操作を始める。

なんか操作パネルが以前より増えてる様な・・・いや、今はそれどころじゃない。

きっと今まではそこまで使う必要がなかっただけに違いない。


「分かったよ国之さま!!」

「何か見つかったのか!?」

「うん、大昔に使ったSR『魔王誕生』が今になって発動した見たい。」

「は!?」


俺は一瞬思考が停止した。

つまり何か?以前俺が使って発動できなかったイベが今になって発動したってのか?

そんでそれは発動する対象が発生したからって事か?


そうすると、このちょび髭の男は俺の世界の魔王って事なのか?

魔王だから他のイベ書の効果程度じゃ倒れなかったってのか?


俺がアマテラスに向けた顔は困惑していたに違いない。

「アマテラス、どうすればいい?」


アマテラスも肩をすくめる。

「どうにかして魔王を倒さないと、世界の殆どが占領されて、最後は滅亡だよ。」


そう、このゲーマン国は一党独裁により強大な力を手に入れ、他国を瞬く間に侵攻していったのだが、採取的に大陸のほぼ全てを占領し、大帝国を作り出した。

それから数十年の大陸間での断絶があり、ある種の平和状態が続くのだが、遂にはそれが就園する。


核兵器の開発である。


核を開発したメリカン合衆国は、反乱を起こし続ける帝国下の旧国家解放のために世界解放戦争を仕掛けるのだが、実はゲーマン帝国も核を開発していたために、双方が数万の核の打ち合いとなり、人間はご臨終するのだ。


二人は腕を組んで考える。

「そうだ!発想を変えて周りの国を強くして行こう!」

「さすが国之さま!こうなるとこれは魔王討伐イベントって事だね!!」


早速俺は周りの力のある国3つにR『軍備増強』を使う。

そして戦いの火ぶたは切って落とされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る