第78話 俺、実際の歴史の勉強を始める

次の日の朝、俺は意気揚々と起き上がり学校へと向かった。

何せ昨日は13戦やて全勝だったのだ。


通常魔法の発達したワールドでは広域魔法が発達しているため数を揃えてもそれほど戦いに寄与しない。それもあってほとんどの国では限られた精鋭だけで軍が編成されている。何せまずは相手の魔法を無効化できる程の防御魔法を持つ事が必須なのだ。


戦場では矢と魔法が飛び交い、それらを防ぎながら敵陣に突き進む必要がある。

物理防御の魔法もあるが、できるだけマナは効率的に使いたい。なので矢を無効化するために自然重装備になり、マナは魔法防御とそれを崩す為の武器への付与魔法に使うという事みたいだ。


因みに城攻めなんかは重装備の兵士が前線を維持し、その後ろで城門を破壊する様な大魔法を準備して城を攻め落とすという事になる。防御側は城や街を守る為に防衛結界を張ったり、相手の魔導士団を探し出して攻撃をする。


という事で魔法の使える世界に一般的な人間はいらないのである。


しかし俺のワールドは魔法が一切使えない。他のワールドの人間がどれほど優秀でも物理のみで戦う必要があり、更に防御力も鎧分しか出ないのだ。数で押せば耐えられない。そんなわけで俺の相手は全員数の力に耐えられずに陥落したのだった。


よし、今日も稼ぐぜ!

そして魔法世界でも勝てる手段を何か手に入れなければ。

等と考えながら俺はいつも通り増田の隣の席についた。


「国立、お前廊下で告白してたって噂になってるぞ。」

俺のすがすがしい気持ちは一瞬で叩き落とされた。

「んな!?は?は?いや、そんな事してないぞ!?」


増田は眼鏡をスチャッと上げて続けた。


「廊下で天野さんに大声で付き合ってくれって言ったんだろ?

「いや!それ違うから!ただちょっと話があって言っただけだから!!」

その時ようやく俺は昨日の天野さんと渦目さんの反応の理由を理解した。

俺は顔を覆って机に蹲った。


「俺に言われてもな。まぁ根も葉もないわけじゃないしいいじゃないか。」

「いいわけあるか!!」

「うん、言い訳も無しか。なら仕方ないな。」

「言い訳はあっただろ!というか紛らわしい捏ね方やめろ!」


なにやら上手い事言って満足気な増田を恨みがましくにらむと渦目さんと一緒に教室に入って来た天野さんと目があった。


一瞬緊張のあまり俺の全身の毛が逆立つ様な感覚に襲われながら俺はフリーズした。

天野さんはフッと目を逸らし、そのまま渦目さんと楽しそうにおしゃべりをしながら前の方の席に座った。


俺、やっぱ終わってるよね?

ただでさえヤバい状態だったのに、どこの誰だか知らないけど変な噂立てられて、あれきっと怒ってるやつだよね?


俺が泣きそうな顔で助けを求めて増田を見ると、増田はグッと右手の親指を上げてから肩を叩いた。


え?いや何?わかんねーよ!

もしかしてそれで励ましてくれたつもり?できれば言葉で言って欲しいんだけど。

それとも楽しかったぜ、って事?マジで心が死ぬぞおい!!


それから休み時間、俺は隠れる様にライブラリーに向かう。

なんか歩いてるだけで周りのみんなが告白した話してる気がして辛い。


俺はライブラリーに到着すると空いているポッドに入る。

ポッドは斜めに置かれた卵型の外郭で上部が空く様になっており、そこにリクライニングした椅子が置いてある。その装置はAIのガイドに要望を伝えて色々な情報を得る事ができるもので、ライブラリーと呼ばれていた。


「ようこそ、国立さん。本日はどの様な情報をお探しでしょうか?」

俺が中に入り、蓋が締まると早速ガイドが話しかけてくる。

「えっと、なんか人間の歴史が一通り知りたいんだけど。」

「承知しました、本日のお時間は何時ごろまでお使いになりますか?」


この案内が出るという事はかなり長いという事だ。

「放課後までだから16時までかな?」

俺は今日使える最長の時間をガイドに伝えた。


「承知しました。人類史の単位申請はなさいますか?」

単位申請をすると学校での一般教養単位として加算されるが、その代わりテストを受ける必要が出てくる。

「いや、趣味なんで。」


俺が単位申請を却下するとガイドは「承知しました」と言ってポッドの中を暗くし、俺の頭に複数本の外接触ワイヤーを接続する。

このワイヤーは直接脳に情報を流す、とかの便利アイテムではなく、外部から電気刺激を与える事で記憶力と集中力を刺激して通常より約5倍の速度で動画学習を行える様になるという代物だ。


日常から使う事もできるのだが、通常の授業では学校という雰囲気を楽しむ部分もあり、教室で使っている人はいない。実際にテストが近くなり本気で点数を伸ばしたい人はライブラリーでこの装置を使って復習をするらしい。


まぁそう言った人はAI開発等に携わりたい一部だけだが。


そうこうするうちに人類史の学習が始まる。

猿から人に進化し、そして文明を築いていくところまでを学習した。


歴史の情報は化学式の様に、事象の原因とその後の事象への影響という風に式化されている。更にそれらの事象の発生自体を一般化されており、歴史の所々でパターンナンバーという形で表示されていた。


歴史は非常に淡々としていて、人が環境と突発的事象に反応して物事が動いている様な、そんな印象を受けるものだった。


俺はポッドから出ながら、何かもう一つ気になる事がある様な気がした。

歴史の情報を見ている時にふと思ったのだが、強制的に集中させられて忘れてしまった様だ。


俺は何か晴れないモヤモヤを感じながらバイトへと向かった。



※題名つけ忘れてました・・・申し訳ないです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る