第79話 俺、渦目さんの助けを得る
俺は学校から出ると喫茶『創造してごらんなさい』に到着した。
カランカラン
扉を開けると鐘の音が響き店内に人が来たことを知らせる。
カウンターから顔を上げた木花さんが俺を見つけて挨拶をしてくる。
「あ、国立さんお疲れで~す。」
「おう、木花さんお疲れ~。」
俺が片手を上げて挨拶すると、木花さんが手招きをする。
俺が近づいていくと木花さんが手で隠す様に話しかけてきた。
「国立さん、廊下で告ったって本当ですか?」
その言葉を聞いて俺は思わず木花さんから距離を取った。
「な、なんでそれを!?」
木花さんはイヤらしい目つきで、きっしっし、とわざとらしい笑い声をあげる。
「いや、違う!違うから!それ勘違いだから!!」
「え~?増田さんから言い訳もないって言ってたって聞きましたよ。」
それを聞いて俺が奥のテーブルに目をやると、案の定増田が何事もないかの様に鎮座していた。
「マースーダーァ!!」
俺が声を荒げて増田に近づいていくと、そのテーブルから「おっす!」という声が聞こえる。その声に俺が恐る恐る顔を向けるとそこには渦目さんが座っていた。
「う、渦目さん、どうしてここに?」
「うむ、俺が呼んでおいてあげたんだ。感謝しろよ。」
は?なんで呼んだんだ?何を感謝すればいいんだ?
ちょっと良く解らない。
俺がポカンとした顔をしていると渦目さんが腕組みをして言った。
「国立、話は聞かせてもらった!私があんたに協力してあげるわ!」
俺は目を見開いて渦目さんを見る。
え?協力って?いや、この場合の協力と言えば天野さんの事だろ!
「マジっすか?」
俺は敬語になっていた。
「っふ、大船に乗った気でいな!」
おお、渦目さんマジ女神!
俺は秒でメニューを取り出すと渦目さんの前に置いた。
「今日は奢らせて頂きます!」
「おお、じゃ、おススメナポリタンにしようかな。あとコーラね!」
「俺はサンドイッチで頼む。」
「増田、お前はダメだ。」
「おいおい、渦目さんに声を掛けたのは何を隠そうこの俺だぞ?」
「ぐっ。いや、でもお前木花さんにも話しただろ!?」
「いや、木花さんはなぜかテーブルの近くに立って聞いてただけだ。」
俺が木花さんに振り向くと一瞬で目線をかわしてわざとらしく頭の後ろに手を組んで天井を見ていた。
「というわけだ。こっちの高い方な。」
「ぐぬぬぅ。」
なんか納得いかねぇ!
いや、助け舟が来たのは確実なんだが素直になれねぇ!!
俺はカウンターに入ると釈然としない気持ちで注文の品を作り始めた。
そんなことをしていると、扉の鐘が鳴りマスターが入って来た。
「お疲れでーす。」
「あ、マスターお帰り~。」
俺と木花さんが挨拶すると、マスターも挨拶を返し、店の中を見渡した。
増田と渦目さんも手を挙げて挨拶をしている。
俺が注文の品を増田達に持って行ってテーブルに着く。
なぜかマスターも隣に座る。
「あの~、これから少し話をしたいので席を外して欲しいんですが?忙しくなったらバイト入りますんで。」
俺の言葉にマスターは気にした風も無く言った。
「廊下で告白まがいの事した後始末の話でしょ?その手の話は私に任せなさい!」
「ってなんでそれ知ってるんですか!!」
俺が勢いよく立ち上がると椅子が倒れた。
マスターが増田の顔を見ると増田が俺に親指を立てた。
いや、なんもいい仕事してねぇよ!!
親指立てれば都合よく解釈してくれると思うなよ!?
折角渦目さん呼んでくれた恩は全部チャラだからな!!
「増田ぁ、なぜわざわざマスターにまで?」
俺が青筋を浮き上がらせて増田に問う。
「いや、木花さんと一緒に立ってた。」
俺は黙って椅子を戻すと座り直した。
「まあまあ国立、助けてくれる人が多くていい事じゃん。」
渦目さんがなんかそれっぽい慰めをくれた。
いや、この手の話でそんなに手助けいらないわぁ。
というかむしろ学校の外にまで知られて泣きたい。
そんな俺を放っておいて、勝手に打ち合わせが行われている。
というか三分で終わった。
「よし、じゃぁ今度ここに連れて来てやるから、しっかり頑張れよ!」
どうやら天野さんを『想像してごらんなさい』に呼んできてくれるから、しっかり話をせいと。ていうかなんか口添えしてくれるんだよね?呼んできてくれるだけじゃないよね?なんかこれぞ解決策って感じしないけどきっと大丈夫だよね!?
その後は俺以外のみんなは
ナポリタンを食べ終わって渦目さんは、予定が決まったらまた連絡する、と言って帰っていった。
それからお客さんも増えて来たので俺はバイト服に着替えてカウンターに入り、マスターはいつも通りやって来た常連さんと話を始めた。
そして増田は端末で何かを見ながら他の常連さんと話をしていた。
てか増田、お前そんなコミュ力あったのか!?
そして落ち着いて来てからふと思った。
そう言えば俺、今日はここでなんかあったんじゃなかったっけ?
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